SH4413 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第26回 公益通報への対応(1) 金山貴昭(2023/04/17)
意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~
第26回 公益通報への対応(1)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 金 山 貴 昭
Q 公益通報に対応する際の留意点
当社の内部通報受付窓口に通報がありましたが、一連の通報対応を行う上でどのような点に留意して行えばよいでしょうか。
A 【ポイント】
内部公益通報受付窓口に対して公益通報が行われた場合、事業者や当該公益通報に関する調査等の対応を行う担当者は、公益通報者保護法及び法定指針(令和3年内閣府告示第118号)の規定を遵守しながら公益通報に対応しなければなりません。同法や法定指針には、調査の内容や方法に関する詳細な規定は設けられていませんが、公益通報の対応過程において公益通報者を保護するための規定や、適切に公益通報への対応をおこなうための規定が設けられているので、これらを遵守しなければなりません。
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【解説】
1 法定指針の概要
内部公益通報受付窓口に対して行われた公益通報に対する対応に関しては、公益通報者保護法及び「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)」(「法定指針」)の定めを踏まえて対応することが必要になります。具体的には、以下の規定等を遵守することが必要になります。
- ■ 公益通報対応業務従事者に関する規定
- 「事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通 報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。」(法定指針第3の1)
- ■ 公益通報対応業務の実施に関する措置
- 「内部公益通報受付窓口において内部公益通報を受け付け、正当な理由がある場合を除いて、必要な調査を実施する。そして、当該調査の結果、通報対象事実に係る法令違反行為が明らかになった場合には、速やかに是正に必要な措置をとる。また、是正に必要な措置をとった後、当該措置が適切に機能しているかを確認し、適切に機能していない場合には、改めて是正に必要な措置をとる。」(法定指針第4の1(3))
- ■ 利益相反の排除
- 「内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関し行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる。」(法定指針第4の1(4))
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以下、これらの規定に関して、公益通報対応業務を実施する上での留意点を説明します。
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(かなやま・たかあき)
弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。