GDPR施行5周年の欧州委員会声明と声明前後の
欧州データ保護の注目トピック
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 中 島 滉 平
1 はじめに
欧州連合(以下「EU」という。)の一般データ保護規則(以下「GDPR」という。)は、2023年5月25日に5周年を迎えた。2018年5月25日の施行以来、GDPRをモデルとするデータ保護法の立法が世界各国で相次いでおり、日本を含む世界の個人データ保護法制に多大な影響を与え続けている。このような状況を背景として、2023年5月24日に、欧州委員会は、GDPRの5周年を記念して声明を発表した。本稿では、欧州委員会の声明とともに声明前後の欧州データ保護の注目トピックを紹介する。
2 GDPR施行から5周年を迎えるに当たっての欧州委員会の声明
欧州委員会は2023年5月24日にGDPR施行から5周年を迎えるに当たっての声明を発表した。欧州委員会のヴェラ・ヨウロヴァ(Věra Jourová)価値観・透明性担当副委員長とディディエ・レンデルス(Didier Reynders)司法担当委員は、GDPRを「EUのデジタル移行を推進するための決定的な一歩」と呼び、「データ保護に対する基本的権利を強化し、調和させた」と述べている。
また、欧州委員会は、声明の中で「GDPRが適用されて以来、GDPR違反に対して25億ユーロ(約3744億円)以上の制裁金がデータ保護当局によって課されている」執行実績に言及し、「GDPRは、EUが現代の課題に立ち向かい、国内外でデータ保護の基準(Gold Standard)を設定するための主要なツールであり、今後もそうあり続けるだろう。」として、GDPRの積極的な執行に強い意欲を示している[1]。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(なかしま・こうへい)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
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