「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」(国会審議中)
――デジタル空間におけるデザインの保護強化等――
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 隈 大 希
1 はじめに
2023年3月10日、「不正競争防止法等[1]の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」という。)が閣議決定され、現在開会中の第211回通常国会に提出された[2]。知的財産分野におけるデジタル化・国際化の急速な進行に対応すべく、産業構造審議会知的財産文科会不正競争防止委員会による不正競争防止法(以下「不競法」という。)のあり方の検討など、各種委員会で知的財産制度の見直しが進められてきた。そこでは、スタートアップ・中小企業等による知的財産を活用した新規事業展開の後押しなどを念頭に見直しが進められ、①デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化、②コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備、③国際的な事業展開に関する制度整備の3つが柱に据えられた。本稿では、特に①に関して、本改正案の内容を概観する。
2 デジタル空間にかかわるデザイン等の保護強化に関する本改正案
近年、メタバース等のデジタル空間における多様なサービスの誕生(メタバース空間内にショップを集めたECモール等)に伴い、デジタル化されたグッズ・アイテム(たとえば、アバターに装着させるファッションアイテム等)の取引も活発化している。本改正案では、こうしたデジタル空間における新たな態様のサービスやグッズ等にかかる知的財産の保護強化を目的として、以下のような内容を規定している。
この記事はプレミアム会員向けの有料記事です
ログインしてご覧ください
(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(くま・たいき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2020年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用