SH4910 ベトナム:労働組合の非常勤役員である労働者との契約終了を有効とした近時の判例(2) 井上皓子(2024/05/01) 

そのほか労働法

ベトナム:労働組合の非常勤役員である労働者との
契約終了を有効とした近時の判例(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

 

(承前)

3 分析

 本件では、各審級で判断が分かれる結果となった。この判例が発表される前には、類似の事例において、裁判所は労働組合幹部である労働者との契約終了を無効とする傾向にあった。非専従で労働組合活動を行う労働組合幹部については、労働組合活動の満了まで労働契約の期間を延長することが原則であり、その前に企業が解雇を考える場合、法は、組合の執行委員会の合意を得て、又は協議ができない場合には管轄機関に報告して30日を経過後に解除することという手続きを定めている。こうした手続きを取ることなく、単に労働契約の期間満了によるものとして労働契約を終了させることは、法令違反であり、労働者の保護に欠くと考えられたためと考えられる。

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(いのうえ・あきこ)

2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本における人事労務対応、紛争・不祥事対応、ベトナムにおける日本企業の事業進出・人事労務問題等への法的アドバイス、現地における企業活動に関する法務サポートを行っている。

 

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