ベトナム:労働組合の非常勤役員である労働者との
契約終了を有効とした近時の判例(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 井 上 皓 子
ベトナムでは、長く、労働者を代表する組織として、ベトナム労働総同盟の傘下の労働者団体である「労働組合(công đoàn)」のみが認められてきた。2020年労働法の下では、この意味での「労働組合」以外の労働者団体も認められることとなったが、依然として多くの企業では、上記の意味での「労働組合」のみが設置されていることが多いように思われる。労働組合の要求は、時に企業の利益と厳しく対立することがあり、組合役員の解雇に踏み切ったことを契機とする紛争も見られる。
こうした状況で、労働者が労働組合の非常勤役員として在職している間に、使用者が労働者との労働契約を終了した(更新を拒絶した)場合に、その終了を有効とした裁判例が、労働者・労働組合と使用者との間の平等について判断した先例となるものとして、判例に認定された(判例70/2023/AL号)。使用者が労働組合幹部である労働者との契約終了を正面から有効と認めた数少ない事例であり、かつ、判例として選定された裁判例の中では、労働組合幹部である労働者との労働紛争に関する初めてのものでもある。その内容をご紹介する。
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(いのうえ・あきこ)
2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本にお
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