◇SH3148◇法務省、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象範囲の拡大で関係省令を改正・施行――6か月の時限的な措置として貸借対照表や損益計算書等も対象に(2020/05/19)

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法務省、ウェブ開示によるみなし提供制度の
対象範囲の拡大で関係省令を改正・施行

――6か月の時限的な措置として貸借対照表や損益計算書等も対象に――

 

 法務省は5月12日、同省のサイトに掲載している「定時株主総会の開催について」を更新し、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象範囲を時限的に拡大するために関係省令を改正することを明らかにした。

 法務省によると、今般のコロナウイルス感染症の拡大により、株式会社の決算、監査業務に遅延が生じることが懸念されていることを踏まえ、「緊急的かつ時限的な措置」として、会社法施行規則及び会社計算規則を改正することとしている。具体的には、従来、定時株主総会の招集の通知に際して書面により株主に提供することが求められていた貸借対照表や損益計算書などについても、一定の条件の下、所定の期間、継続してインターネット上のウェブサイトに掲載し、そのURLを株主に通知すれば、株主に提供されたものとみなすこととしている。

 

 そして、法務省は5月15日、「定時株主総会の開催について」を更新し、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(令和2年法務省令第37号)が公布され、同日から施行されたこと等を公表した。なお、今回の省令改正は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、緊急に定める必要があることから、行政手続法39条4項1号の「公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、意見公募手続を実施することが困難であるとき」に該当するため、意見公募手続を実施していない。

 

 以下、法務省が5月15日に公表した「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)について」の概要を紹介する。

 

 

●会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)について(5月15日)

 

1 本省令の概要

 本省令においては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、本省令の施行の日から6か月以内に招集の手続が開始される定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供に限り(4参照)、同制度の対象となる事項の範囲を拡大することとしている(本省令による改正後の会社法施行規則133条の2、会社計算規則133条の2)(注1)。

(注1)改正前の会社法施行規則及び会社計算規則においてもウェブ開示によるみなし提供制度の対象とされていた事項について、ウェブ開示をするための要件等を変更するものではない。

 

2 本省令による改正によりウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項

 本省令による改正により、次に掲げる事項がウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる(注2)(注3)。

  1. ⑴ 株式会社が事業年度の末日に公開会社である場合において事業報告に表示すべき事項のうち「当該事業年度における事業の経過及びその成果」(会社法施行規則120条1項4号)及び「対処すべき課題」(同項8号)
  2. ⑵ 貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項(注4)

(注2)ウェブ開示をする旨の定款の定めが必要であるが、本省令による改正前の会社法施行規則又は会社計算規則に基づきウェブ開示をする旨の定款の定めが既にある場合には、本省令を受けて定款の定めを新たに設けたり、変更したりする必要はない。

(注3)監査役等による監査報告及び会計監査人による会計監査報告も含まれる(会社法施行規則133条1項、会社計算規則133条1項参照)。

(注4)貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項については、会計監査報告に無限定適正意見が付されていることなどの一定の条件を満たす場合にのみ、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる(本省令による改正後の会社計算規則133条の2第1項各号。計算書類について株主総会の承認(会社法438条2項)を要することとなる場合には、貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項は同制度の対象とならない)。

 

3 株主の利益への配慮

 本省令により2の事項についてウェブ開示をする場合には、株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないこととしている。

 どのように株主の利益に配慮するかについては、各社が置かれた個別具体的な事情を踏まえた各社の判断によることとなるが、例えば、次に掲げるような方法をとることが考えられる。

  1. ⑴ 2の事項について、できる限り早期にウェブ開示を開始すること。
  2. ⑵ できる限り株主総会までに2の事項を記載した書面を株主(会社法299条3項の承諾をした株主を除く。以下⑵において同じ)に交付することができるように、ウェブ開示の開始後、準備ができ次第速やかに、2の事項を記載した書面を株主に送付すること。あるいは、株式会社に対して2の事項を記載した書面の送付を希望することができる旨を招集通知に記載して株主に通知し、送付を希望した株主に、準備ができ次第速やかに、2の事項を記載した書面を送付すること。
  3. ⑶ 株主総会の会場に来場した株主に対して2の事項を記載した書面を交付すること。

 

4 施行期日・失効

 公布の日(令和2年5月15日)から施行される(附則1条)。

 本省令による改正に係る会社法施行規則及び会社計算規則の規定は、本省令の施行の日から起算して6か月を経過した日に、その効力を失う(注5)。ただし、同日前に招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供については、なおその効力を有する(附則2条)。

(注5)本省令による改正に係る会社法施行規則及び会社計算規則の規定がその効力を失ったときは、2の事項はウェブ開示によるみなし提供制度の対象ではなくなる。

 

 

 

法務省、定時株主総会の開催について(5月15日更新)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

○会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)について(5月15日)
http://www.moj.go.jp/content/001319873.pdf

○会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)の条文
http://www.moj.go.jp/content/001319803.pdf

 

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