◇SH3237◇GPIF、「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を改定――コードの再改訂に対象資産の拡大とESG考慮の明確化などで対応 (2020/07/15)

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GPIF、「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を改定

――コードの再改訂に対象資産の拡大とESG考慮の明確化などで対応――

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月1日、「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を6月29日に改定したと発表した。

 「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(令和元年度)」(座長・神作裕之東京大学大学院教授)の検討を経て確定された再改訂版となる日本版スチュワードシップ・コード(◇SH3083◇スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会が「コード再改訂版」を確定・公表 ――上場株式以外の資産への適用拡大に意見多数も賛成大半で記載は維持 (2020/04/01)既報)の「趣旨に賛同し、……更新」したとするもので、今般の改定の特徴として(ア)対象資産を株式から全資産に拡大したこと、(イ)ESGの考慮をより明確化したことを挙げている。

 GPIFでは2014年5月30日、日本版スチュワードシップ・コードの受入れを表明(同日付・GPIF「日本版スチュワードシップ・コードの受入れについて」参照。その後、2017年8月1日に一部改定)。コードにおける原則への対応を具体的に示しているのが「スチュワードシップ責任を果たすための方針」である。「1.基本方針」および「2.コードの各原則への対応」により構成され、「1.基本方針」はさらに(1)スチュワードシップ責任に対する考え方、(2)GPIFが自ら実施する取組に関する方針、(3)運用受託機関の取組に関する方針の3つのパートからなる。「2.コードの各原則への対応」では、日本版スチュワードシップ・コードにおける機関投資家向けの原則である「原則1」から「原則7」までの各原則に即して、GPIFとしての対応方法や対処方針を説明する形が採られている。

 GPIFは、上記(1)において述べられるように、一部の資産を除いては運用受託機関を通じて運用や株式の議決権行使を行っているため、いわゆるアセットオーナーとして、GPIF自らが実施可能な取組については自らの取組方針を定めるとともに、運用受託機関が実施する取組については、その実施状況を把握して適切にモニタリングし、また運用受託機関と積極的に対話(エンゲージメント)し、各年度の活動状況の概要を公表することでGPIFとしてのスチュワードシップ責任を果たすことになる。運用受託機関との関係では、GPIFは別途「スチュワードシップ活動原則」(2017年6月1日当初制定、2020年2月6日一部改定)と「議決権行使原則」(2017年6月1日当初制定、2020年2月6日一部改定)を表明しているところであり、適宜参考とされたい。

 「スチュワードシップ責任を果たすための方針」における改定状況をみると、「1.基本方針」では、①2019年11月18日に改定された以前の方針において「(エンゲージメントによって)中長期的な企業価値が向上し……」「(被保険者のために)中長期的な投資リターンの拡大を図り(編注・または「図る」)……」としていた記載からはすべて「中」が削除された結果、「長期的な企業価値が向上し……」「長期的な投資リターンの拡大を図り(編注・または「図る」)……」となっており、GPIFの超長期投資家としての視点が強調された恰好である。加えて、②運用受託機関につき「株式」という語をもって限定する記載はみられなくなり、上述の(ア)の特徴(対象資産を株式から全資産に拡大したこと)が確認できる。

 さらに、③上記(2)に係るGPIF自身の取組方針として、改定前の方針では「被保険者のために中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的とした様々な活動(長期的な資本生産性向上を意識したベンチマークの選定等の調査・研究等)について、 受託者責任の観点から検討します」としていた括弧内の表現に関しては、ESGを前面に出し「被保険者のために長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的とした様々な活動(ESGを考慮した投資やそれらに関する調査・研究等)について、受託者責任の観点から検討します」と、ESGを明記するものとなった(上述の特徴(イ)に対応)。

 ESGに関する明確化は「2.コードの各原則への対応」においてもみられる大きな改定点となっており、①コードの原則1に関して説明する第2項として「GPIF は、『投資原則』で、ESGを考慮した投資及びスチュワードシップ責任を果たすための活動について定めています」とする記載が新設されるとともに、②当該原則1に関する従前の第2項(改定後、第3項。スチュワードシップ活動原則・議決権行使原則の制定・公表などについて言及)の末尾には、「いずれの原則においても、運用受託機関に対して、ESGの考慮を求めています」と付記。③コード自体に機関投資家に求める要素として「運用戦略に応じたサステナビリティの考慮」を付加した原則7を巡っても、GPIFが運用受託機関と積極的に対話・エンゲージメントを行うものとする従前の第2項の記載の末尾に「その際は、ESGについても考慮します」との一文を添えるものとなった。

 コードの原則5については、その指針5−3において「議決権の行使結果の公表の際、一定の議案については賛否を問わず、その理由を公表すべき」旨が追記されたところであるが、GPIFでは、④原則5に関する従前の第2項中に「重要性又は必要に応じて議決権行使の判断理由を公表することも求めます」と加筆することで対応している。

 

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