内閣府、規制改革推進会議と4経済団体、「書面、押印、対面」を
原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言を公表
――デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築――
内閣府、規制改革推進会議及び4経済団体(日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所、新経済連盟)は7月8日、「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言~デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~」を公表した。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴うテレワークが広まる中、「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行等の問題が課題の一つとして注目されている。政府では、規制改革推進会議において7月2日、「規制改革推進に関する答申」を取りまとめ、また、内閣府、法務省及び経済産業省は6月19日、押印に関する民事訴訟法上の取扱い、押印の効果及び押印を代替し得る手段等について整理を行い、「押印についてのQ&A」を公表したところである(これらの動きについては後掲の別稿参照)。
これを受けて、内閣府と経済団体等は、今般、「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識を、デジタル技術の積極活用によって社会全体で転換し、時代の要請に即した行政手続・ビジネス様式を速やかに再構築するため、緊密な連携の下、官民一丸となって、取組を推進することを宣言したものである。
それによると、(1)行政手続の見直しについて、①新型コロナウイルスの感染拡大への緊急対応、②制度的対応、③会計手続、④地方公共団体における取組、⑤デジタル・ガバメントの推進、の取組内容を挙げ、さらに、(2)民民間の取引における見直しについてまとめている。
以下、今回の共同宣言のうち、「民民間の取引における見直し」の部分を紹介する。
○民民間の取引における見直しについて
(1) 民間の商慣行等の見直し
「書面、押印、対面」が商慣行・社内手続として定着しているものにつき、取引関係手続については取引先等と協調して、あるいは社内手続については各社で経営者のリーダーシップに基づいて、テレワーク推進等の観点から、押印廃止や書面の電子化を推進する。併せて電子署名等のデジタル技術を活用する必要性を確認したうえで、必要な枠組みの構築を推進する。
「郵送・FAX」の電子メール等による代替、「契約書、見積書、請求書、領収書、稟議書、出退勤管理簿等」について文書の性質や具体的状況に応じて不要とみられる押印廃止や電子化及び電子署名等の電子認証の活用、「商談、送金・振込」におけるオンラインシステムの利用拡大・定着を広く推進する。
(2) 押印についての考え方の整理
押印に関する民事基本法上の規定の意味や押印を廃止した場合の懸念点に応える整理(内閣府・法務省・経済産業省作成の「押印についてのQ&A」)に基づき、押印が必須でない旨を周知し、民間事業者による押印廃止の取組を推進する。
(3) 電子署名等の電子認証の活用の促進
押印が必要な場合においても、書面の電子化のためには電子署名等の電子認証の活用が有意義である。政府がクラウド技術を活用した電子認証サービスの電子署名法における位置づけを明確化したうえで、電子署名等の電子認証の周知、活用が図られるよう取組む。
(4) 特定分野等における規制・見直し
4経済団体から特に要望の多かった①不動産関係(重要事項説明書の書面交付等)、②金融関係(顧客と金融機関間の手続の書面・押印等)、③会社法等一般法関係等については今後も引き続き、課題の洗い出し及び解決に向けた取組を行う。
その他の分野についても、デジタル化を阻害する法令や慣行等の見直しに向け、取組を継続する。
規制改革推進会議、「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の 抜本的見直しに向けた共同宣言~デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~(7月8日)
https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/200708document01.pdf
○経団連
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/061.html
○同友会
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2020/200708_1845.html
○日商
https://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2020/0709153630.html
○新経連
https://jane.or.jp/proposal/comments/11396.html
参考
SH3240 規制改革推進会議、「規制改革推進に関する答申」及び「書面規制、押印、対面規制の見直しについて」公表 角野 秀(2020/07/17)
SH3222 内閣府、法務省、経産省、押印に関する民訴法上の取扱いや、効果及び代替し得る手段等を整理した「押印についてのQ&A」を公表 藤田浩貴(2020/07/03)