◇SH3270◇中小企業の支払手段の適正化で中企庁検討会が議論を開始、9月に中間とりまとめへ――約束手形のさらなる現金払い化、サイト短縮、割引料負担適正化に加えて新たな決済手段の検討も (2020/08/19)

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中小企業の支払手段の適正化で中企庁検討会が議論を開始、
9月に中間とりまとめへ

――約束手形のさらなる現金払い化、サイト短縮、割引料負担適正化に加えて新たな決済手段の検討も――

 

 中小企業庁が設置した「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」(座長・神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)において、中小企業の支払手段のさらなる適正化を進めるための検討が始まった。第1回会合が7月31日に開催され、今後は今年9月に中間とりまとめ、年内に最終的なとりまとめが予定されている。

 約束手形の現金払い化など、政府として推進してきた中小企業の支払手段の適正化をさらに促進しようとする取組であり、検討会の開催要綱案によると、これまでに「下請企業に対する現金支払いの割合は全体として増加するなど、着実な改善がみられている」一方、「手形サイトの短縮化や、現金化にかかる割引料等のコストの上乗せなどについては、なお課題として残されている」ことから、これまでの取組の進捗を確認するとともに(1)約束手形の「更なる現金化」に向けたアクション、(2)手形サイトの長さ、(3)手形の割引料の負担、(4)新しい決済手段の利便性とコストの4点を具体的な検討事項とした。

 検討会の委員は座長を含む学識経験者2名、中小企業の経営者2名、大企業の購買担当者2名、法律実務家(弁護士)2名の計8名で、オブザーバーとして日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国銀行協会などが参画するほか、関係省庁等として公正取引委員会、金融庁、経済産業省商務・サービスグループも挙げられている。事務局は中小企業庁および三菱UFJリサーチ&コンサルティング、会議の庶務は中小企業庁が執り行う。

 上記(1)の検討事項に関し、第1回会合における事務局配付資料によれば、「手形払いの現金化」は下請中小企業との取引において全体として改善傾向にあり、「下請代金の手形等の使用率」に係る調査結果をみると、「すべて現金払い」の割合は発注側において2017年度:49%、2019年度:57%、受注側において2017年度:26%、2019年度:30%と回答している。一方で、手形の利用状況には業種・企業規模による偏りもみられることから、今後の議論としては「約束手形を現金化していくためには、業界ごとの実態を丁寧に把握しながら、ボトルネックを明らかにすべきではないか」「中小企業の資金繰りを改善するためには、下請法対象か否かに関わらず現金化を進めるべきではないか。そのためには、サプライチェーン全体で取組を進めていくべきではないか」といった方向性が示されている。

 同様に上記(2)の手形サイトに係る調査結果をみると、「60日以内の手形を受けている事業者の割合」は発注側において2017年度:14%、2019年度:18%、受注側において2017年度:10%、2019年度:14%。また(3)の手形割引料については、「下請代金の額に『概ね勘案』されている事業者の割合」が2018年度:19%、2019年度:23%となっており(受注側回答による)、いずれも顕著な改善とは目されていない。このような状況を踏まえた議論の方向性として、(2)については支払サイトの期間設定理由を明らかにしながら短縮のための方策を検討していくこと、(3)については割引料につき振出側の適正な負担を実現するような方策を検討するものとされている。

 上記(4)の検討事項は「手形に代わる決済手段の適正なあり方」を検討しようとするもので、その背景には決済手段・受発注等のシステムのIT化、電子記録債権やファクタリングといった新たな決済手段の普及がある。具体的には、中小企業にとって利便性が高い決済サービスが提供されているかといった観点から、 IT化については手形の代替措置という論点に限らず受発注システムなどを含めた中小企業のIT化全体を見据えて、また、悪質な決済手段に対しては厳正に対処すべきといった姿勢で臨むこととなる。

 検討事項のうち(1)~(3)については9月まで計3回の会合を経て中間とりまとめを行い、(4)について9月~11月の計3回の会合により業種ごとの現状整理、IT化・新たな決済手段の検討を行ったうえで、年内に最終的なとりまとめを行う方針である。

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