◇SH0568◇中国:中国発の不祥事防止(2・完)  川合正倫(2016/02/23)

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中国:中国発の不祥事防止(2・完)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 前編のおさらい。2015年は中国現地法人発の不祥事が日本親会社に大きな負の影響を及ぼした事案が頻発した年であり、筆者が、上海の現場において関与した事案においては、その背景に共通する以下の構造があることを紹介した。

中国発の不祥事事案の特徴・原因

 中国発不祥事事案の主要な特徴及び原因として以下の3点が考えられ、本稿では、2及び3の点について紹介する。

1.ブラックボックスの存在

2.イエローフラッグへの対応不足

3.(元)内部者による告発

イエローフラッグへの対応不足

 不祥事が発覚した後に振り返ると、事案発生前に注意を喚起すべきであった事象(イエローフラッグ)が存在した事案が多い。イエローフラッグは、内部通報に限られず、例えば、名目と実質が異なる取引の存在、短期間における特定類型の取引の急増、現場担当者からの報告の遅延、人間関係だけを売りにするコンサルタントの登場、社印等会社の重要備品のずさんな管理等の形態で現れる。これらのイエローフラッグが存在する場合に、当該事実について現地法人のトップが認識し、リスクの重大性を判断した上で、重要性の高い問題を管理部門に報告し、報告を受けた管理部門が対応策を検討し、最終的に現地で対応策を執行することのできる体制を整備する必要がある。また、問題が発覚した場合に、現地の管理部門から日本の親会社管理部門に対してスムーズに報告されるような体制作りも重要である。

(元)内部者による告発

 一般に中国籍従業員は、日本に比較して人材の流動性が高く、組織ではなく人への忠誠心が高い傾向にあるといわれている。退職した従業員等内部関係者による告発が不祥事事案発覚の経緯となるケースが多く、その場合、相当詳しい内部事情が監督機関等に伝わっている。また、コンプライアンスイシューを抱えていない企業においても、改めて情報管理の重要性を強調したい。例えば、従業員が必要のない情報にアクセスできるようになっていないか、従業員が退職する際に情報を持ち出していないか、機密性の高い情報が流出しない管理体制が整備できているかなどの確認は重要である。

まとめ

 中国発の不祥事を防止することは容易ではないが、上記のとおり事案の大型化・手口の巧妙化の傾向があるなかで、不祥事防止体制整備は日本親会社としての喫緊の課題となっている。リスクの高い分野を中心にリソース(内部にリソースが不足する場合には、会計士、弁護士等の外部のリソースも利用しながら)をさいて管理体制を整備し、継続的に改善していくことによって、有効な防止策を築いていただきたい。

以 上

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