◇SH0861◇インドネシア:タックス・アムネスティ(租税特赦)法の施行(続) 福井信雄(2016/11/02)

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インドネシア:タックス・アムネスティ(租税特赦)法の施行(続)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

 

 2016年6月28日にインドネシアでタックス・アムネスティ法(以下、「租税特赦法」という。)が制定されたことは既報のとおりであるが、最も大きな恩典が受けられる第1期の期間が9月30日に終了した。現地の報道によれば、9月30日の時点で申告された資産合計額は3,516兆ルピア(約28兆円)、内訳で見ると国内資産が2,444兆ルピア(約20兆円)、海外資産が937兆ルピア(約7兆円)、本国還流資産が135兆ルピア(約1兆円)であり、この申告額に基づき納付された租税特赦金は97.1兆ルピア(約7800億円)であったとのことである。この結果を受けて、インドネシア政府は想定していた以上の成果を上げたと評価し、さらに第2期、第3期に向けて租税特赦プログラムの一層の周知を図るとともに、施行規則等の一層の整備を進めている。本稿ではかかる租税特赦法に関連する法制度のアップデートのうち、SPV(special purpose vehicle)を通して保有する資産の取り扱いに関して新たに制定された財務省令の内容について紹介する。

 

1. SPV保有資産への租税特赦法の適用

 今回の租税特赦法に基づき租税特赦の対象となるのは、インドネシアにおいて納税義務を有する全ての法人・個人であり、租税特赦を受けるための要件は、①自身の資産をインドネシアの税務当局に開示することと、②開示した資産の額に応じた一定の租税特赦金を納付すること、の2つである。そして、「自身の資産」には、自身の名義で保有している資産に加えて、当該個人又は法人が保有するSPVを通して間接的に保有している資産も含まれる。これは、租税特赦プログラムの制度趣旨に鑑みれば当然と言えるが、租税特赦法ではこの点が法文上明確でなかったことから財務省令において明確化されたものである。

 

2. SPV保有資産に対する租税特赦金

 SPVを通して保有している資産については、当初の財務省令では、税務当局に報告をした上で、当該SPVを清算するか当該資産をSPVから自己に移転させることにより自身名義での資産に変更することが義務付けられていたが、その後の財務省令の改正により、当該SPVを通した資産保有を継続することも許容されることとなった。ただし、保有の形態及び当該資産の所在地に応じて以下の租税特赦金の支払が義務付けられた。なお、SPVの保有する資産に対する租税特赦金は、これまで未申告であった資産額に下記の表記に記載する適用料率を乗じて算出されることになり、SPVの持分を複数の法人又は個人で保有している場合には、さらに当該持ち分割合を乗じた金額とされている。

資産の保有形態

資産の所在地

租税特赦金の適用料率

SPVを清算させるか、当該資産を自己保有名義に変更する場合

インドネシア国内に所在する場合

 • 2%(第1期)

 • 3%(第2期)

 • 5%(第3期)

インドネシア国外に所在しインドネシア国内に移転し最低3年間投資される場合

インドネシア国外に所在しインドネシアに移転しない場合

 • 4%(第1期)

 • 6%(第2期)

 • 10%(第3期)

当該資産をSPVに当該資産の保有を継続させる場合

インドネシア国内又は国外に所在する場合

※租税特赦プログラム期間
第1期:2016年7月1日~2016年9月30日
第2期:2016年10月1日~2016年12月31日
第3期:2017年1月1日~2017年3月31日

 

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