◇SH3287◇「企業の実課題・データ提供ガイドライン(仮)」の策定に向けて経産省検討会が始動――8月20日初会合、11月ころまで月1回・計4回程度の討議を経て取りまとめへ (2020/09/01)

未分類

「企業の実課題・データ提供ガイドライン(仮)」の
策定に向けて経産省検討会が始動

――8月20日初会合、11月ころまで月1回・計4回程度の討議を経て取りまとめへ――

 

 経済産業省は8月20日、「企業のデータ提供促進に向けた検討会」が第1回会合を開催したことを発表するとともに、事務局説明資料など関連資料一式を公表した。

 経産省では、事業者間の垣根を超えたデータ連携による付加価値の創出や社会課題の解決が期待されている一方で、データやAI技術を巡っては契約実務の蓄積が乏しい、当事者間の認識・理解のギャップがあることから契約の締結が進まないとし、当初2017年5月に「データの利用権限に関する契約ガイドラインVer1.0」を策定した。その後、データの利用に関する契約類型の整理、ユースケースの充実などを図るとともに、AI開発・利用に関する権利関係・責任関係等の考え方を新たに追加した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を2018年6月に公表(2019年12月、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版」としてアップデート)。ガイドラインは「データ利活用やAI技術開発に関する契約作成の手引きとして、国内でのビジネスや研究開発の実務において、広く参照」されてきたとされる。

 またAIの導入・社会実装を進めるため、経産省として「AI Quest(課題解決型AI人材育成事業)」に取り組んできたところ、(A)「企業に実際にAIを導入させることのできる人材を育成するためには、実際の企業の課題・データを用いた教材の活用が重要であ」り、(B)「企業から円滑に課題・データを提供してもらう環境を整えるためには、AI・データの利用に関する契約ガイドラインも参考にしつつ、実務において課題となる論点を整理し解決の方向性を示していくことが有効と考えられる」として、今般「企業のデータ提供促進に向けた検討会」において、教材作成のための企業の実課題・データ提供に向けて実務上の指標となる項目を検討することとした。

 委員は東京大学教授、東京都内の弁護士および弁理士、大阪市内の弁護士の計4名。事務局は(a)東京都内の他事務所の弁護士、(b)経産省商務情報政策局情報経済課、(c)同局情報技術利用促進課、(d)中小企業庁経営支援部技術・経営革新課(イノベーション課)および(e)マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパンが務め、オブザーバーとして経産省経済産業政策局知的財産政策室ほか、個人情報保護委員会、文部科学省、特許庁などが関与する。会議は基本的にオンライン開催とし、会議後に議事要旨を公開する方針である。

 具体的な検討範囲としては、(1)教材作成のための企業のデータ提供における課題、(2)教材作成のための企業のデータ提供における法的・ビジネス的論点、(3)上記法的・ビジネス的論点に対する解の方向性の3点が示された。論点・解の方向性は「企業の規模問わず適応が可能なものを目指す」とされているほか、「中小企業の課題に紐づいたユースケースを取り上げ、中小企業にとっても実務で使いやすい内容としてまとめていく」としている。今後、月に1回の開催を予定しており、10月下旬の第3回会合、予備日として織り込んだ11月中旬の第4回会合を経て、討議の成果を「企業の実課題・データ提供ガイドライン(仮)」というかたちで公表する。

 第1回会合で配付された事務局説明資料によると、企業のデータ提供に関する具体的な課題として挙げられているのは、①「ノウハウ」の定義の曖昧さ、②個人情報を含むデータの取扱いの曖昧さ、③実務レベルでの理解不足。たとえば②は、「何が個人情報となるかの理解も曖昧」「どのようなデータはどこまで出せるのか判断がつかない」「『匿名化』の意味の誤解」など、データがどのような形に加工されていくのかの理解が不十分であるという問題意識を課題として抽出したもの。

 取りまとめ予定のガイドラインでは、このような課題に対応するように(i)データ提供にあたって想定され得る論点、(ii)データ提供にあたって想定され得る論点に対する解の方向性、(iii)実務で活用可能なモデル契約書を示しつつ、より具体的に、個別ユースケースとしての事例紹介、当該事例において想定し得る論点と解の方向性を明らかにしていくことが見込まれている。

 

タイトルとURLをコピーしました