アドバネクス、「最高裁判所の決定に関するお知らせ」の公表
岩田合同法律事務所
弁護士 伊 藤 広 樹
株式会社アドバネクス(以下「当社」という。)は、2020年10月26日、当社の元代表取締役会長ら(以下「元会長ら」という。)による2019年10月17日付の東京高等裁判所の判決(以下「本件東京高裁判決」という。)に対する上告受理申立てについて、最高裁判所から不受理を決定する旨の通知を受けたことを公表した。
本件は、2018年6月21日開催の当社第70期定時株主総会において会社提案の取締役選任議案に対して株主側から提出された修正動議に関する決議(可決)の効力等を巡る紛争事案であるが、今般の上告受理申立ての不受理決定により、これらの一連の手続は終結を迎えることになった。本件については、これまで広く報道等もされている事案であるため、その詳細な事実関係等に関する説明は割愛するが、本稿では、本件における争点と関連して、本件東京高裁判決において今後の株主総会実務に影響を与え得る判断が示されたため、そのポイントを解説するとともに、上告受理申立制度の概要についても解説することとする。
1 本件東京高裁判決のポイント
本件では、事前に議決権行使書を提出していた法人株主の担当者が傍聴目的で株主総会に出席した場合に、提出済みの議決権行使書による議決権行使が有効であるか否かが問題となった。
具体的には、会社法上、議決権行使書による議決権行使は、「株主総会に出席しない株主」ができることが前提とされている(会社法298条1項3号)ため、傍聴目的とはいえ法人株主の担当者が株主総会に出席した場合には、議決権行使書による議決権行使の前提を欠き、議決権行使書による議決権行使は撤回されたことになるのではないかが問題となった。この点に関して、本件東京高裁判決は、法人株主の担当者が株主総会の議場に入場し、物理的な意味で「出席」しているとしても、当該担当者が会社(法人株主)から議決権行使の権限を授与されていない場合には、法的な意味での「出席」はしていないと評価されると判断した。そして、本件では、上記法人株主の担当者は、実際に会社(法人株主)から議決権行使の権限を授与されておらず、その旨を当社の担当者にも議場で説明しており、当社にとっても上記法人株主が議決権行使書とは異なる内容で議決権を行使する意思を有していないことは明らかであり、法的な意味での「出席」はしていなかったとして、当該法人株主の議決権行使について、提出済みの議決権行使書による議決権行使が有効であると判断した。
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(いとう・ひろき)
岩田合同法律事務所弁護士。2004年早稲田大学法学部卒業。2006年早稲田大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。主にM&A取引、会社法を始めとするコーポレート分野に関するアドバイスを行う。著作には、『会社法実務解説』(共著 有斐閣 2011)、「新商事判例便覧」旬刊商事法務2031号~(共著 商事法務 2014~(連載))等。
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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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