◇SH3479◇消費者庁、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会「報告書」を公表――新規立法の必要性を指摘、「商品等の販売停止」「売主の身元に関する情報開示請求」など提言 (2021/02/09)

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消費者庁、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における
環境整備等に関する検討会「報告書」を公表

――新規立法の必要性を指摘、「商品等の販売停止」「売主の身元に関する情報開示請求」など提言――

 

 消費者庁は1月25日、「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」(座長=依田高典・京都大学大学院経済学研究科教授)が作成した「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会 報告書」を公表した。

 同日開かれた第12回会合における議論を経て取りまとめたもの。初会合は2019年12月5日、「デジタル市場における消費者利益の確保の観点から、場の提供者としてのデジタル・プラットフォーム企業の役割を踏まえて、消費者被害の実態を把握し、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等について、産業界の自主的な取組や共同規制等も含め、政策面・制度面の観点から検討する」として開催された(SH2936 消費者庁、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会の初会合を開催――デジタル市場における消費者利益の確保の観点から検討(2019/12/17)既報)。その後は関係団体・企業などへのヒアリングをかさね、2020年8月24日(第10回会合開催)には「論点整理」を公表し、同年12月24日(第11回会合開催)から報告書作成に向けた議論を開始。今般、成案となる報告書の作成・公表に至ったものである。

 全7章・19頁建て(表紙・目次を含まず、末尾参考資料2頁を含む)となる本報告書では「消費者が安全で安心してデジタルプラットフォームを利用して取引できる環境整備等のための方策」について、(ア)デジタルプラットフォームは技術革新が激しい分野であり、消費者を取り巻く環境も急速に変化しうること、(イ)新型コロナウイルス感染症の拡大は現在も続いており、 消費生活の面で早急に「新しい生活様式」に対応した環境整備を図るべきことを挙げながら、「一定のコア(中核)となる考え方を早急に確立し、各種の問題に官民を挙げて取り組んでいくための橋頭堡とすることを最優先すべき」と位置付けたうえで、新規立法の整備を含めて緊急に講じることが必要と考えられる措置を中心に提言するものとした(第1章「はじめに」参照)。加えて、当該整備にあたっては「先進的なデジタルプラットフォーム企業による取組が慣行として定着し市場全体に広がっていくことを期待するだけでなく、政策面での思い切ったテコ入れを図っていく必要がある」ことを指摘しつつ、「自主的な取組を行う各デジタルプラットフォーム企業が制約条件にとらわれることなく消費者保護のために真に必要な措置を躊躇なく講じられるように後押しすること」「各デジタルプラットフォーム企業による取組が市場全体において促進されるようにすること」を基本とすべきとする考え方を明記している(第2章「環境整備に当たっての基本的な考え方」参照)。

 続く第3章「デジタルプラットフォーム企業の役割についての考え方」においては(a)対象とすべきデジタルプラットフォームの範囲、(b)各デジタルプラットフォーム企業に共通して期待すべき役割を検討。(a)では、2月1日に施行された新法「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和2年法律第38号)」2条1項を引きつつ、デジタルプラットフォームを「(オンラインモール等のような)取引型」と「(SNS等の)非取引型」とに分類。うち「取引型」のデジタルプラットフォームに関して「すき間のない対応を図っていくためにも……規模や取引の対象(商品、役務、権利の別)によって区別を設けずに対象とすることが適当である」とした。また、上記(b)については「どのような規模・形態であれ」「『場』の提供者として」「少なくとも売主の行政規制違反について対応を求めること」が、本報告書第1章で早急に確立すべきとした「コア(中核)となる考え方」として許容されうると表明。

 そのうえで、必要となる立法上の措置については(α)売主の行政規制違反の防止およびこれによる被害救済のためにデジタルプラットフォーム企業が消費者保護の観点からの措置を講じることが必要となる場合について、(β)デジタルプラットフォーム企業が躊躇なくそのような措置を講じられるよう、売主に対して負うこととなる契約上または法的責任を軽減できるようにしつつ、(γ)あらゆるデジタルプラットフォームにおいてそのような取組が確保されることを促進する――ことを最優先課題として整備すべきであることを指摘しながら、このような立法上の措置が新たな分野の消費者保護に特化するものであることなどを理由に「新規立法として立案されることが望ましい」と述べた(第4章「新規立法の必要性」参照)。

 具体的な規制については、第6章「新規立法の具体的内容等」で展開。ここでは、まず「取引型」デジタルプラットフォームを対象とすべく(1)「取引デジタルプラットフォームの定義」を示したうえで、(2)「取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務」を規律し、同提供者には努力義務とされる各「措置の概要等について開示」させ、また、政府において各「措置の適切かつ有効な実施に資するための指針」を策定する。上記(2)で想定される努力義務とは、「その提供する『場』において行われる通信販売取引の適正の確保及び円滑な紛争の解決の促進のため」に講じられる次の3つの措置に関するものである。①販売業者等と消費者との間の円滑な連絡を確保するための措置を講じること、 ②取引デジタルプラットフォームにおける販売条件等の表示に関し、消費者からの苦情に基づき調査その他の必要と認める措置を講じること、③必要に応じて販売業者等に対し、当該販売業者等の所在地等の確認のための資料の提出等を求めること。

 取引デジタルプラットフォーム提供者に対する具体的な規律としては、さらに、著しい虚偽表示または著しい優良・ 有利誤認表示などが認められる場合、消費者庁が(3)「商品等の販売停止等」を要請したり、当該要請を公表したりする措置の骨格を示した(第6章3参照)。

 また消費者側の権利として、一定の場合における(4)「売主の身元に関する情報の開示の請求」を取引デジタルプラットフォーム提供者に対して認め、当該提供者において「現に保有している情報の開示」を消費者が請求するための制度を設ける。ただし「新規立法は、売主が事業者である場合を対象とするものである」ことから、売主が消費者である場合は本開示請求制度の対象とはならない。さらに、主体の限定なく「何人も、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣(消費者庁)に対し適当な措置をとるべきことを申し出ることができる」ようにするという(5)「申出制度」の創設にも言及。本制度について、消費者団体や権利者団体、地方公共団体等による利用が可能となるようにするためである(以上、第6章4・6参照)。(6)「取引デジタルプラットフォーム官民協議会」の組織化も盛り込んでいる(第6章5参照)。

 本報告書ではこれらのほか、情報通信技術の急速な進展に伴う消費者被害の態様変化を踏まえた法の施行後一定期間後の見直し、新規立法の施行の円滑化および法令・指針の機動的な見直しが可能となるような消費者庁における人材確保その他の組織体制の充実についても敷衍。最終章となる第7章では「今後の検討課題」とし、「デジタルプラットフォームを利用して CtoC 取引が行われる場合」などについて改めて掲げた。継続的な検討のさらなる深化が期待されるところである。

 

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