◇SH3535◇「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定・国会提出――設計から販売・提供、排出・リサイクルまで、 製造事業者から小売・サービス事業者、排出事業者まで包括的な循環強化へ (2021/03/17)

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「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定・国会提出

――設計から販売・提供、排出・リサイクルまで、
製造事業者から小売・サービス事業者、排出事業者まで包括的な循環強化へ――

 

 政府は3月9日、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」を閣議決定し、国会(衆議院)に提出した。

 環境省の同日の発表によると、本法案は今年1月29日付の環境大臣に対する意見具申「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」(中央環境審議会)に則って「多様な物品に使用されているプラスチックに関し包括的に資源循環体制を強化し、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進するための措置を講じようとするもの」である。意見具申は「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会」(委員長・酒井伸一京都大学環境安全保健機構附属環境科学センター教授)および「産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ」(座長・細田衛士中部大学経営情報学部教授)の合同会議が2020年5月に開始した審議結果を取りまとめたもの。政府が2019年5月31日に策定・公表した「プラスチック資源循環戦略」を具体化している。なお、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals. SDGs)には「つくる責任 つかう責任」をキャッチコピーとして目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」が掲げられるところである。

 新法となる法案は本則全9章・66か条。基本方針等(第2章)、プラスチック使用製品設計指針(第3章)などとともに、製造事業者等による自主回収及び再資源化(第6章)、排出事業者による排出の抑制及び再資源化等(第7章)などを定めるほか、罰則(第9章)も置く。

 法案によれば、国は「基本方針」として「プラスチック使用製品廃棄物及びプラスチック副産物の排出の抑制並びに回収及び再資源化等の促進(以下「プラスチックに係る資源循環の促進等」という。)を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定める」ものとされる(法案3条1項。以下同様)。「プラスチック使用製品廃棄物」とは「使用済プラスチック使用製品(編注・2条2項参照)が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)第2条第1項に規定する廃棄物(以下「廃棄物」という。)となったもの」であり(2条3項)、「プラスチック副産物」とは「製品の製造、加工、修理又は販売その他の事業活動に伴い副次的に得られるプラスチックであって、放射性物質によって汚染されていないもの」をいう(同条4項)。「基本方針」には「プラスチックに係る資源循環の促進等の基本的方向」「プラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類の工夫によるプラスチックに係る資源循環の促進等のための方策に関する事項」「プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項」などが盛り込まれ(3条2項1号8号)、策定されることになる。

 このような基本方針について規定する第3条に続いては、事業者及び消費者の責務(4条)、国の責務(5条)、地方公共団体の責務(6条)と、あらゆる主体の責務を規定。うち「事業者」に係る責務をみると、「事業者は、プラスチック使用製品廃棄物及びプラスチック副産物を分別して排出するとともに、その再資源化等を行うよう努めなければならない」(4条1項)、「事業者及び消費者は、プラスチック使用製品をなるべく長期間使用すること、プラスチック使用製品の過剰な使用を抑制すること等のプラスチック使用製品の使用の合理化により、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するとともに、使用済プラスチック使用製品等の再資源化等により得られた物又はこれを使用した物を使用するよう努めなければならない」(同条3項)となっている。

 法案第3章のプラスチック使用製品設計指針とは、国が定める「プラスチック使用製品の製造を業として行う者(その設計を行う者に限る。)及び専らプラスチック使用製品の設計を業として行う者(以下「プラスチック使用製品製造事業者等」という。)が設計するプラスチック使用製品についてプラスチックに係る資源循環の促進等を円滑に実施するためにプラスチック使用製品製造事業者等が講ずべき措置に関する指針」であり(7条1項)、「プラスチックの使用量の削減、プラスチックに代替する素材の活用その他のプラスチックに係る資源循環の促進等を円滑に実施するためのプラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類についての工夫に関してプラスチック使用製品製造事業者等が取り組むべき事項」(同条2項1号)と「その他プラスチック使用製品製造事業者等がプラスチックに係る資源循環の促進等の円滑な実施について配慮すべき事項」(同項2号)が定められることとされている。

 本指針が定められた場合、プラスチック使用製品製造事業者等は「これに即してプラスチック使用製品を設計するよう努めなければなら」ず(7条5項)、また、設計するプラスチック使用製品の設計について指針に適合しているかを認定する仕組みが創設される(8条)。もって、当該設計に基づき製造されたプラスチック使用製品の調達や使用の促進を図るものである(10条)。

 プラスチックの販売・提供の観点からは、いわゆる使い捨てプラスチック、ワンウェイプラスチック(商品販売やサービスの提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品)を「特定プラスチック使用製品」としたうえで、「特定プラスチック使用製品提供事業者」が特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置に関して「当該特定プラスチック使用製品提供事業者の判断の基準となるべき事項」を定めることとした(28条1項)。判断基準は「基本方針に即し、かつ、特定プラスチック使用製品の使用の合理化の状況、特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する技術水準その他の事情を勘案して定め」られる(同条2項)。

 国は特定プラスチック使用製品提供事業者に対し、(1)プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するため必要があると認めるときは「前条第1項(編注・上記28条1項)に規定する判断の基準となるべき事項を勘案して、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制について必要な指導及び助言をすることができる」ものとするほか(29条)、(2)①特定プラスチック使用製品の量が政令で定める要件に該当し、排出の抑制の状況が「第28条第1項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるとき」には、判断の根拠を示して「排出の抑制に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる」とともに(30条1項)、②その勧告に事業者が従わなかったときには「その旨を公表することができる」こととし(同条3項)、さらに、③当該公表後「なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合」かつ「プラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を著しく害すると認めるとき」には、審議会等の意見を聴いたうえで「その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる」としている(同条4項)。

 プラスチックの排出・回収・リサイクルの観点から設けられるのが、製造事業者等による自主回収及び再資源化(第6章)、排出事業者による排出の抑制及び再資源化等(第7章)に係る規定となる。(ア)第6章では、製造・販売事業者等による自主回収の促進のため、製造・販売事業者等がプラスチック製品等を自主回収・再資源化する計画を作成し、主務大臣が認定した場合には認定事業者の廃棄物処理法の業許可を不要とするほか(39条40条41条)、(イ)第7章では、①排出事業者が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定したうえで(44条)、②国による指導・助言(45条)、プラスチック使用製品産業廃棄物等を多く排出する事業者への勧告・公表・命令(46条)を措置し、一方で、③排出事業者等が再資源化計画を作成し、主務大臣が認定した場合には認定事業者の廃棄物処理法の業許可を不要とする(48条49条51条等)。関係事業者にあっては適宜、仔細について関係条文を参照されたい。

 法案附則1項に定められた施行期日は、規定による例外なく、公布日から1年内の政令指定日とされており、基本方針・指針・判断基準等の早期具体化が望まれるところである。

 

 

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