◇SH3566◇厚労省、良質なテレワークの導入・定着に向けて新ガイドラインを公表――旧テレワークガイドラインを全面的見直し、事業者用・労働者用チェックリスト付き (2021/04/07)

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厚労省、良質なテレワークの導入・定着に向けて新ガイドラインを公表

――旧テレワークガイドラインを全面的見直し、事業者用・労働者用チェックリスト付き――

 

 厚生労働省は3月25日、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」および同ガイドラインの概要を公表した。テレワークにおける労務管理上の留意点を始めとし、労使双方にとって留意すべき点などをまとめたもので、ガイドラインはその冒頭で「本ガイドラインを参考として、労使で十分に話し合いが行われ、良質なテレワークが導入され、定着していくことが期待される」と述べている。

 公表に先立っては、2020年中に「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」(座長・守島基博学習院大学経済学部経営学科教授・一橋大学名誉教授)による審議、その成果を取りまとめた「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」の公表があった(検討会による初会合の開催について、SH3281 厚労省、テレワークの課題選定・対応方針の審議で検討会の初会合を開催――労務管理等に関しては実態調査実施へ、次回会合以降に結果を速報する予定 (2020/08/26)既報)。同報告書では、今後の行政の対応として、報告書を踏まえた「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(2018年2月22日・厚生労働省)の見直しに言及しており、厚労省としても報告書の公表日となる2020年12月25日、「本報告書を踏まえ、今後、『情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン』の改定を行う予定です」と言明していた。

 その後、今年3月4日に開催された労働政策審議会雇用環境・均等分科会において上記ガイドライン(以下「旧ガイドライン」という)の改定が議題とされ、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(案)」が明らかになった。3月16日には労働政策審議会労働条件分科会および同審議会安全衛生分科会の各会合においても改定を議題として報告・審議がなされたものである。

 全体で13ページであった旧ガイドラインは「2 労働基準関係法令の適用及び留意点等」を大きな柱として「3 その他テレワークの制度を適切に導入及び実施するに当たっての注意点」を添えるものであった。最終項には「4 テレワークを行う労働者の自律」を据え、勤務時間帯や自らの健康に十分注意すべきことなどを簡潔に示した。

 今般の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(以下「新ガイドライン」という)は、本体17ページに別紙3ページ(事業者用チェックリスト・労働者用チェックリスト)を合わせて全20ページ建てのものとなっている。旧ガイドラインと同様に「1 趣旨」から始まるが、ここでは「ウィズコロナ・ポストコロナ」に触れつつ「更なる導入・定着を図ることが重要である」と位置付けた。テレワークの特徴については「2 テレワークの形態」と項目として独立させたうえで、いわゆる「ワーケーション」にも敷衍した。

 新ガイドラインから上記2(テレワークの形態)より後の構成をみると、「3 テレワークの導入に際しての留意点」「4 労務管理上の留意点」「5 テレワークのルールの策定と周知」「6 様々な労働時間制度の活用」「7 テレワークにおける労働時間管理の工夫」「8 テレワークにおける安全衛生の確保」「9 テレワークにおける労働災害の補償」「10 テレワークの際のハラスメントへの対応」「11 テレワークの際のセキュリティへの対応」の全11項となっている。

 上記3(導入に際しての留意点)は旧ガイドラインにはみられなかった、導入および実施(推進)のための「総論」と捉えられる項目で、冒頭の「テレワークの推進は、労使双方にとってプラスなものとなるよう……良質なテレワークとすることが求められる」とする記述に新ガイドラインの姿勢が現れているとみることができる。本項は(1)テレワークの推進に当たって、(2)テレワークの対象業務、(3)テレワークの対象者等、(4)導入に当たっての望ましい取組――の計4節からなるが、(1)の最終段落に「テレワークを円滑かつ適切に、制度として導入し、実施するに当たっては、導入目的、対象業務、対象となり得る労働者の範囲、実施場所、テレワーク可能日(労働者の希望、当番制、頻度等)、申請等の手続、費用負担、労働時間管理の方法や中抜け時間の取扱い、通常又は緊急時の連絡方法等について、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要である」との一文が置かれており、労使による十分な話合いとルール作りが円滑・適切な導入・実施に重要なことをまず宣明した恰好となっている。

 また、とりわけこの1年間のテレワーク経験により社会的にも課題・話題となったテーマを積極的に取り込んでおり、丁寧に項目として建てている。上記8(安全衛生の確保)は(1)安全衛生関係法令の適用、(2)自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点、(3)自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意点、(4)事業者が実施すべき管理に関する事項――と拡充された記載となった。オンラインによる人材育成、管理職へのマネジメント研修などを提唱する4(労務管理上の留意点)の(3)テレワーク状況下における人材育成、(4)テレワークを効果的に実施するための人材育成も、円滑・適切な実施に向けて実用的な記載といえる。5(ルールの策定と周知)の関係では「(4) 労働条件の変更」を明確化した。

 一方、上記7(労働時間管理の工夫)における「(4) テレワークに特有の事象の取扱い」中の「エ 時間外・休日労働の労働時間管理」と、同じく(4)節の「オ 長時間労働対策」中の「(ウ) 時間外・休日・所定外深夜労働についての手続」など、旧ガイドラインでは非常に具体的であった記載内容を減ずるようにして、労使の話合いに委ね、または労使双方の現実的な対応を促したと窺われる項目もある。詳細については、旧ガイドラインとの比較において同一の見出しとなっている項目についても必ず一読しておきたい。

 

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