大阪地裁、特許権侵害に関し会社法429条1項に基づく
取締役の責任を認める判決を下す
岩田合同法律事務所
弁護士 工 藤 良 平
大阪地裁民事21部(知的財産専門部・谷有恒裁判長)は、令和3年9月28日、会社による特許権侵害に関し、侵害会社の取締役であった被告らについて、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認める判決を下した。
化粧料や医薬組成物等として使用される物質の特許権者である原告が、メーカーであるN社とその販売店であるC社を含む11社に対し、特許権侵害訴訟(以下「別件訴訟」という)を提起した。別件訴訟では、特許権侵害が認められ、被告であったN社に対し約1億1100万円、C社に対し約1200万円の損害賠償等を命ずる判決が下された(なお、別件訴訟判決に対しては知財高裁へ控訴が行われたものの、控訴棄却により確定している)。本判決での認定事実によれば、N社とC社は、別件訴訟判決に基づく損害賠償債務について任意での賠償を行わず、N社代表取締役であった本件被告1はN社の破産手続開始の申立てを行い、破産手続開始決定を受けた。
本件訴訟では、原告が、N社の代表取締役であった本件被告1と取締役であった本件被告2、C社の代表取締役であった本件被告3と取締役であった本件被告4に対し、特許権侵害行為の主導(本件被告1・2)と侵害行為を中止させず漫然と継続させていた行為(本件被告3・4)等について、取締役としての任務懈怠に悪意又は重過失があるとして、会社法429条1項に基づく取締役の責任を追及した。
これに対し、本件被告1は、特許事務所から非侵害の鑑定書を取得していたこと等を主張し、自らが取締役として求められる調査義務を尽くしており妥当な根拠に基づいた合理的な判断をした旨を主張した。本件被告3は、本件被告1からの特許権侵害には当たらない、非侵害鑑定書も取得している等の説明を受けていたものであり、非侵害の確信をすることは無理からぬことだった等主張した。本件被告2・4は、自らが名目上の取締役にすぎなかったので責任を負わない等と主張した。
裁判所は、まず「会社が第三者の特許権侵害となる行為に及ぶことを主導してはならず、また他の取締役の業務執行を監視して、会社がそのような行為に及ぶことのないよう注意すべき義務を負う」と述べる。
この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください
(くどう・りょうへい)
岩田合同法律事務所パートナー。日本及び米国(NY州)弁護士。
2006年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)修了。20
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)