SH4012 公取委、「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果」を公表――注意喚起文書を昨年同水準となる荷主641名に送付、最多類型は「不当な給付内容の変更・やり直し」 (2022/06/01)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果」を公表――注意喚起文書を昨年同水準となる荷主641名に送付、最多類型は「不当な給付内容の変更・やり直し」――

 

 公正取引委員会は5月25日、2021年10月に開始した荷主と物流事業者との取引に関する調査の結果を取りまとめたとし、公表した。

 公取委によると、荷主の物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から独占禁止法に基づいて指定する「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(平成16年公正取引委員会告示第1号。以下「物流特殊指定」という)を踏まえ、その遵守状況と取引状況を把握するために行われたもの。荷主・物流事業者の取引の公正化に向けて継続的な調査がなされているところ、本件では今年2月に新設された「優越的地位濫用未然防止対策調査室」が担当した。

 令和4年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン(2022年3月30日策定)において「第1 独占禁止法の執行強化」の「3 荷主と物流事業者との取引に関する調査」として織り込み、(ア)2021年10月8日に荷主30,000名に、2022年1月14日に物流事業者40,000名に対して書面調査を開始、情報収集に関する取組みを強化してきたこと、(イ)書面調査の結果については本年6月までに調査結果を取りまとめて公表すること、(ウ)転嫁拒否が疑われる事案については立入調査を行うこと、(エ)関係荷主に対しては具体的な懸念事項を明示した文書を送付することを明らかにしていた(なお、最低賃金の引上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた中小事業者等取引公正化推進アクションプラン(2021年9月8日取りまとめ)第1・1(2)参照)。

 上記(イ)の公表に関しては、内閣官房(新しい資本主義実現本部事務局)・消費者庁・厚労省・経産省・国交省・公取委による「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(2021年12月27日取りまとめ)によっても「2.価格転嫁円滑化に向けた法執行の強化」において言及されるところである。また(エ)の文書送付に関し、公取委の事務総長が今年4月27日の定例会見で「書面調査の結果を踏まえまして、『物流特殊指定』に照らして問題につながるおそれがある事項が見受けられた荷主に対し、違反行為の未然防止の観点から、必要な注意喚起を行う文書の送付を、本日開始いたしました」と表明していた。

 今般公表された調査結果によると、荷主・物流事業者間の物品の運送または保管に係る継続的取引を対象として行われた書面調査の対象事業者は荷主:30,000名、物流事業者:40,000名で、調査対象期間を荷主:2020年9月1日~2021年8月31日、物流事業者:2021年1月1日~12月31日とし(荷主には2021年11月8日を回答期限として10月8日発送、物流事業者には2022年1月31日を回答期限として1月14日発送)、荷主:11,438名(回収率:38.1%)、物流事業者:18,685名(回収率:46.7%)から回答を得た。調査結果を踏まえて(A)「労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否が疑われる事案」につき、荷主19名に対する立入調査が行われた。

 書面調査および当該立入調査の結果を踏まえては(B)「独占禁止法上の問題につながるおそれのあった」荷主641名に対して具体的な懸念事項を明示した文書(以下「注意喚起文書」という)が送付された。注意喚起文書の対象となった荷主の業種は(1)食料品製造業、生産用機械器具製造業、化学工業など「製造業」が280名(43.7%)ともっとも多く、次いで(2)建築材料、鉱物・金属材料等卸売業、機械器具卸売業など「卸売業、 小売業」が220名(34.3%)である。

 調査結果ではこれら荷主の「行為類型別」の内訳を示しており、件数が多い順に次のとおりとなっている(編注・複数の行為類型により注意喚起文書の送付がなされた荷主も存在するとされ、合計件数は送付荷主数:641名を上回る)。①不当な給付内容の変更およびやり直し:351件(①~⑧の合計件数:737件に対し、47.6%。以下同様)、②代金の支払遅延:161件(21.8%)、③代金の減額:92件(12.5%)、④不当な経済上の利益の提供要請:44件(6.0%)、⑤割引困難手形の交付:38件(5.2%)、⑥買いたたき:26件(3.5%)、⑦報復措置:21件(2.8%)、⑧その他:4件(0.5%)。

 今般の公表に当たっては、併せて「問題につながるおそれのある事例」についても発表した。上記①~④および⑥に該当する各2件を簡潔に紹介するものとなっており、①に絡んでは、食料品製造業の事例として「10時間以上の待機をさせたが、待機料金を支払わなかった」ケース、道路貨物運送業の事例として「指定した配送先に誤りがあったことを理由に、別の配送先に配送をさせたが、追加費用を支払わなかった」ケースの掲載がある。

 なお、事務総長の5月25日付定例会見によれば(i)荷主と物流事業者との取引に関する調査は2003年以来継続してなされており、(ii)注意喚起文書の送付数について「昨年も同程度出して」いるという。(iii)本件調査結果の公表について「これまでは、下請法と合わせた全体公表の一部として公表してまいりましたけれども、今年は、公表内容を刷新いたしまして、業種別状況や、事例も含めて独立したプレスリリースとして取りまとめ」たと述べており、「本件の周知徹底ということも、今後、説明会等を行っていきたいと考えて」いるとしている。

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