SH4621 消費者庁、「機能性表示食品」制度に関する公表 加納さやか/横田瑛弓(2023/09/08)

取引法務消費者法

消費者庁、「機能性表示食品」制度に関する公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 加 納 さやか

弁護士 横 田 瑛 弓

1 はじめに

 「機能性表示食品」制度はご存じだろうか。多くの人が、「機能性表示食品」を口にし、目に、あるいは少なくとも耳にしたことはあるだろう。それもそのはずで、現在わが国において、「機能性表示食品」として販売中の食品は3000件(届出は7000件)[1]を超え、薬局だけでなくスーパーやコンビニ等でも容易に手に入る。また、新型コロナウイルスの流行もあり、健康意識の高まりとともに、いわゆる健康食品[2]に対する注目度は高まってきているのではないだろうか。このようにわれわれにとって身近な「機能性表示食品」につき、消費者庁から本年6月と7月に注目すべき下記公表(以下「本公表」という。)があった[3]

2023年6月30日 2つの商品につき、機能性表示にかかる合理的根拠がないことを理由に、当該表示の取りやめ等を内容とする措置命令を行った旨を公表
2023年7月7日 上記措置命令の対象となった2つの商品と同一成分であって、科学的根拠が同一であるという他の商品88件についても、表示に対する合理的根拠の回答を要請する旨を公表

 

 表示の裏付けとなる科学的根拠の不存在を理由とする措置命令は、食品表示法に基づく「機能性表示食品制度」施行後の初の事例であるところ、本稿においては、「機能性表示食品制度」の概要につき説明の上、本公表が同制度に与える影響について考えたい。

 

2 「機能性表示食品」制度の概要

⑴ 機能表示ができる3種類の食品

 「機能性表示食品」制度は、食品表示法施行に伴い、2015年4月よりスタートした。従来、機能性を表示できる食品は、「特定保健用食品」と「栄養機能食品」の2つのみであったところ、「機能性表示食品」は、事業者の責任において、科学的根拠等を届け出ることを条件に、機能性の表示をすることを認めたものであり[4]、同制度の導入以降、食品における機能性の表示は、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3つに認められることになった。もっとも、これら3つは内容や表示のための手続において異なるところ、その点については曖昧な理解にとどまる方も多いという印象である。

 

 ① 「特定保健用食品」

表示できる事項 食品の摂取により特定の保健の目的が期待できる旨
必要手続 製品毎に、食品の有効性や安全性について審査を受け、表示について国の許可又は承認を受ける必要がある[5]

※赤字は特定保健用食品としての義務表示事項

    出典:「特定保健用食品とは」[6](消費者庁)

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(かのう・さやか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2008年東京大学工学部建築学科卒業。2011年東京大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会)。専門は企業法務、eスポーツ/ゲーム、エネルギー。主な業務として企業の買収・合併・分割等のサポートや、企業の取引・規制等に関する助言を行っている。

 

(よこた・えみ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

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