SH4221 経産省、「公正な買収の在り方に関する研究会」を設置 和田義光(2022/12/02)

組織法務M&A・組織再編(買収防衛含む)

経産省、「公正な買収の在り方に関する研究会」を設置

岩田合同法律事務所

弁護士 和 田 義 光

 

1 はじめに

 経済産業省は、公正なM&A市場を整備することを目的に、買収提案に関する当事者の行動の在り方や、買収防衛策の在り方等について検討するため、「公正な買収の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という。)を設置した。

 以下では、本研究会の設置の趣旨、概要等を紹介する。

 

2 本研究会の設置趣旨

 公正なM&A市場を整備することで企業価値を高める買収が生じやすくすることは、ⅰ)買収を経営戦略として活用しようとする企業にとっては、国内での買収による成長に資する面があり、また、ⅱ)買収提案の対象となる会社の経営にとっては、優れた経営戦略を選択する機会の確保や、経営に対する外部からの規律の向上に資する面がある。

 これまで、2005年5月に経産省・法務省「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」が、2019年9月に経産省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(公正M&A指針)がそれぞれ策定されるなど、買収防衛策やMBO等の在り方や、それらのベストプラクティスを整理する指針及び報告書[1]が策定されてきた。

 他方、近年のM&A市場については以下の状況が指摘されている。

  1. ・ 現行の指針では取り上げていない有事導入型の買収防衛策の発動やその差止めを巡る司法判断が相次いでいる。
  2. ・ 当初の買収提案を契機に第三者から新たな選択肢(対抗提案)が提示され、買収の是非を巡って見方が分かれるケースも増加している。
  3. ・ 実績のある海外企業を取り込むことで比較的短期間で成果を上げられる投資手段として、国内への投資よりも海外 M&A 投資が選好される傾向が見られる。
  4. ・ 独立社外取締役の増加等による取締役会の機能強化、株式保有構造の変化等、上場会社を取り巻く社会経済状況にも変化が生じている。

 本研究会では、以上のような動向を踏まえ、買収提案についての評価が買収者と対象会社で分かれるケース(同意なき買収[2]や競合的な買収の場面等)を念頭に、企業価値を高める買収がより生じやすく(そうでないものは生じにくく)なるように、買収に関する当事者の行動の在り方等について検討を行うこととされた。

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(わだ・よしみつ)

岩田合同法律事務所所属。2014年北海道大学法学部卒業。2016年一橋大学法科大学院修了。2018年1月裁判官任官。松山地方裁判所勤務を経て、2021年4月「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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