意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~
第12回 内部公益通報受付窓口(1)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 金 山 貴 昭
Q 内部公益通報受付窓口と非内部公益通報受付窓口の区別
当社では、「ハラスメント窓口」や「目安箱」など、いくつかの方法で従業員の声を集めるようにしています。これらは「内部公益通報受付窓口」に該当し、公益通報対応業務従事者を定めるなどの対応が必要ですか。
A 【ポイント】
「内部公益通報受付窓口」に該当するかは、その名称ではなく、部門横断的に内部公益通報を受け付けるという実質の有無により判断されるので、このような性質を有する窓口は内部公益通報受付窓口に該当し、法定指針が定める措置を講じる必要があります。 ただし、内部公益通報を受け付ける窓口が複数ある場合には、その一部を内部公益通報受付窓口とはならない窓口とするとも可能なので、そのような窓口の場合には、「内部公益通報受付窓口」への内部公益通報に関する法定指針の措置(公益通報対応業務従事者の指定等)を講じなくても法定指針違反にはなりません。 |
【解説】
法定指針では、内部公益通報受付窓口について、「内部公益通報を部門横断的に受け付ける窓口」と定義し、事業者に対して「内部公益通報受付窓口を設置」することを義務付けています(法定指針第4の1(1))。法定指針では、内部公益通報受付窓口で受け付けた内部公益通報かその他で受け付けた内部公益通報かにより、法定指針で求められているいくつかの措置(公益通報対応業務従事者の指定の要否等)が異なってくるため、内部公益通報受付窓口に該当するかは重要になります。
ある窓口が内部公益通報受付窓口に該当するかは、「その名称ではなく、部門横断的に内部公益通報を受け付けるという実質の有無により判断され」(指針の解説7頁)ます。また、内部公益通報受付窓口では、公益通報者保護法上の公益通報に当たる通報以外の通報を受け付けたり、公益通報に関する相談を受け付けることも可能です(指針の解説7頁、20頁)。
そのため、たとえば、窓口の名称が「社内通報窓口」であったり、内部公益通報に該当する事実も含め従業員からあらゆる報告を受け付ける「目安箱」を設置する場合であっても、部門横断的に内部公益通報を受け付けるという実質があれば、法定指針上の内部公益通報受付窓口に該当することとなります。
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(かなやま・たかあき)
弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。
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