SH4360 金融庁ほか、官民でトランジション・ファイナンスを推進する上でのファイナンスド・エミッション(投融資先のGHG排出量)に関する課題提起ペーパーの取りまとめ 宮川賢司/藏野舞(2023/03/15)

組織法務サステナビリティ

金融庁ほか、官民でトランジション・ファイナンスを推進する上でのファイナンスド・エミッション(投融資先のGHG排出量)に関する課題提起ペーパーの取りまとめ

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 宮 川 賢 司

  弁護士 藏 野   舞

 

1 はじめに

 日本政府は、パリ協定に基づき2030年度には温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量を2013年度から46%削減し、2050年度にはカーボンニュートラルを実現するという目標(Nationally Determined Contribution、以下「NDC」という。)を宣言している[1][2]。また、GFANZ(Glasgow Financial alliance for net Zero)傘下の金融アライアンスに賛同する投資家・金融機関等は、2050年までに投資先の排出量(ファイナンスド・エミッション)を含めて金融機関自身の排出量をネットゼロにすることが求められている。

 そのため、金融機関が多排出産業への資金供給により一時的にファイナンスド・エミッションが増加してしまうことを懸念し、多排出産業に対する投融資を躊躇せざるを得ないという課題が指摘されている。そこで、トランジション・ファイナンスについての環境整備が重要となる。

 このような問題意識のもと、金融庁、経済産業省および環境省が、グローバルに展開する金融機関等10社とともに、トランジション・ファイナンス環境整備検討会のサブグループとして「官民でトランジション・ファイナンスを推進するためのファイナンスド・エミッションに関するサブワーキング」(以下「サブワーキング」という。)が設置され、ファイナンスド・エミッションに関する課題についての検討が開始された。そして2023年2月21日、トランジション・ファイナンスの重要性やファイナンスド・エミッションにかかる課題を整理し、課題提起ペーパーを取りまとめた。

 本稿では、前提としてトランジション・ファイナンスやファイナンスド・エミッションについて検討した後、課題提起ペーパーの概要を紹介し、今後の展望等について検討する。

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(みやがわ・けんじ)

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LLM)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。

(くらの・まい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年国際基督教大学教養学部卒業。2021年一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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