◇SH1798◇実学・企業法務(第134回)法務目線の業界探訪〔Ⅱ〕医藥品、化粧品 齋藤憲道(2018/04/26)

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実学・企業法務(第134回)

法務目線の業界探訪〔Ⅱ〕医藥品、化粧品

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅱ〕医薬品、化粧品

〔Ⅱ-1〕医薬品

3. 製薬(製造販売業)

(4) ジェネリック医薬品

 医薬品は、先発医薬品(特許期間が満了する前の新薬)と、後発医薬品(先発医薬品の特許期間満了後に販売)に分けることができる。後発医薬品は「ジェネリック医薬品」と呼ばれ、創薬のための研究開発費等の負担を軽減できることから、一般的に低価格で販売される。

 従来、日本の市場では先発医薬品が多用されてきたが、今日では医療費抑制のために、研究開発費が少なく、薬価を安く設定できるジェネリック医薬品の普及が進められている。

 日本政府は、医療費削減を図るために、2020年度末までの早い時期にジェネリック医薬品の使用率80%以上(数量ベース)を目標として、処方・調剤の改善を促進している。

 近年、厚生労働省と製薬会社側の取組みが奏功して、医療従事者のジェネリック医薬品に対する評価が高まっている。

  1. (注) ジェネリック医薬品の数量使用率(2014年10月~2015年9月)は、米国92%、ドイツ85%、英国75%、フランス66%、イタリア58%、スペイン65%に対して、日本は55%である。(厚生労働省資料より)

 ジェネリック医薬品市場を拡大するために、ジェネリック・メーカーは、品質の信頼性確保、安定供給、情報提供の充実等に努めてきた。一方で、これまでの新薬メーカーの中にも、この市場に参入して両方を手がけるハイブリッド型の企業も現れ、ジェネリック医薬品市場の獲得競争は激化している。

(5) 医薬品の名称

 一つの医薬品には、複数の名前(名称、特性等)が付けられている。医薬品を売買・使用・調査・論文記述等する場合は、その目的に応じて適切な使い方をする必要がある。

  1. 〔さまざまな名称〕
    化学名(一般に複雑で長い。略称名も用いられる。)
    商品名[1](企業が特許庁に出願して商標登録する。学術論文・行政文書には使えない。)
    日本薬局方に収載された名称(日本薬局方の記載は、できるだけ国際一般的名称を用いる。)
    CAS登録番号(米国化学会の情報部門CASに登録された化学物質の識別番号)
    INN(国際一般的名称:WHOの国際一般的名称委員会が定める。)
    JAN(日本における一般的名称[2]。原則として英名を作成して翻訳・字訳する。)

 商品名を付けるときは、類似名称の別の医薬品と取り間違えることがないように注意する。

  1. ・「筋弛緩剤サクシン」を「副腎皮質ホルモン剤サクシゾン」と間違えて投与された患者が死亡した事故を受けて、前者の販売名が「サクシン注射液」から「スキサメトニウム注」に変更された[3]
  2. ・ 厚生労働省は医療事故防止の目的で、後発医薬品に有効成分の一般的名称等を表示するよう通知している[4]。その名称が先発メーカーの商標権である場合は、使い方によっては商標権侵害問題が生じる[5]

 



[1] 同一成分の医薬品について、複数の商標が存在することが多い。

[2] 「医薬品の一般的名称の取扱いについて」平成18年3月31日 厚生労働省医薬食品局長通達。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(通称、PMDA)に申請して命名する。

[3] 2009年7月 アステラス製薬(株)広報

[4] 厚生労働省通知(平成11年4月8日、平成12年9月19日、平成17年9月22日、平成24 年1月25日)

[5] ピタバ商標権侵害差止請求事件(知財高裁平成27年10月21日)では、薬剤に商標が付されたとして販売差止・廃棄が請求されたが、商標的使用に当たらないこと、公序良俗を害するおそれがあること等が争われ、請求は棄却された。

 

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