◇SH1889◇債権法改正後の民法の未来30 消費貸借における抗弁の接続(1) 石川直基(2018/06/06)

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債権法改正後の民法の未来 25
消費貸借における抗弁の接続(1)

米田総合法律事務所

弁護士 石 川 直 基

 

1 最終の提案内容

(1) 法制審議会民法(債権関係)部会の第1ステージでは、消費貸借に関し、抗弁接続の規定を新設することが提案された。すなわち、消費貸借の規定の見直しに関連して、消費者が物品若しくは権利を購入する契約又は有償で役務の提供を受ける契約を締結する際に、これらの供給者とは異なる事業者との間で消費貸借契約を締結して信用供与を受けた場合に、一定の要件の下で、借主である消費者が供給者に対して生じている事由をもって貸主である事業者に対抗することができる(抗弁の接続)との規定を新設するべきであるとの考え方について、どのように考えるか、が論点として示された(部会資料16-1)。

(2) その後、第2ステージでは、次のとおり、一定の要件を具体的にした甲-1案、甲-2案と消極案の乙案が示された(部会資料44)。

  1. 【甲-1案】 消費者が,物品若しくは権利を購入する契約又は有償で役務の提供を受ける契約(以下「供給契約」という。)を締結する際に,供給契約の相手方である事業者とは異なる事業者との間で金銭消費貸借契約を締結した場合において,①供給契約と金銭消費貸借契約との間に一体性[密接な関連性]が認められ,かつ,②供給者と貸主との間に両契約を一体のものとして締結する旨の合意があったときは,借主は供給者に対して主張することのできる事由をもって貸主に対抗することができる旨の規定を設けるものとする。
  2. 【甲-2案】 与信の態様が消費貸借かどうか,与信を受けた者が消費者かどうかにかかわらず,供給契約の相手方である事業者とは異なる事業者との間で与信に係る契約が締結された場合において,①供給契約と与信に係る契約との間に一体性[密接な関連性]が認められ,かつ,②供給者と与信をした者との間に一体性[密接な関係]が認められるときは,与信を受けた者は供給者に対して主張することのできる事由をもって与信をした者に対抗することができる旨の規定を設けるものとする。
  3. 【乙案】
    規定を設けない。

 

2 提案の背景

 消費者信用には、単に消費者を借主として消費貸借が締結される場合(消費者金融)のほかに消費者が物品もしくは権利を購入する契約または有償で役務の提供を受ける契約を締結する際に、その代金の支払いについて事業者が信用を供与する場合(販売信用)がある(与信の態様は、消費者契約の締結に限られない)。

 そして、販売信用には、物品等の供給者自身が信用を供与する類型のみならず供給者とは異なる事業者が信用を供与する類型(第三者与信型)がある。

 第三者与信型の販売信用においては、消費者は、物品等の引渡し等と代金相当額の決済とで相手方が異なることから、供給者との契約における意思表示の瑕疵、債務不履行などの事情を根拠として、信用を供与した事業者からの支払い請求を拒絶することはできない。このため、消費者保護の観点から、借主である消費者が供給者に対して生じている事由をもって信用を供与した事業者に対抗すること(抗弁の接続)を認める必要性が指摘されている。

 こうした場合について、割賦販売法は、次の場合に抗弁の接続を認めている。

 包括信用購入あっせん[1]においては、一定の適用除外事由がある場合を除き、供給者に対して生じている事由をもって、あっせん業者に対抗することができるとされている(割賦販売法第30条の4、第30条の5)。

 個別信用購入あっせん[2]においても、一定の適用除外事由がある場合を除き、供給者に対して生じている事由をもって、あっせん業者に対抗することができるとされている(割賦販売法第35条の3の19)。

 また、ローン提携販売[3]においても、一定の適用除外事由がある場合を除き、供給者に対して生じている事由をもって、金融機関に対抗することができるとされている(割賦販売法第29条の4第2項、第30条の4、第29条の4第3項、第30条の5)。

 適用除外とのなるものは、翌月1回払いのような態様の与信(マンスリークリア)や少額の取引である。

 この割賦販売法における抗弁接続規定について、最高裁は、創設的な規定と解している(最三小判平成2年2月20日集民159号151頁)が、下級審裁判例の動向などを根拠に、抗弁の接続は今日では私法上の一般原則として理解すべきであるとの意見がある。

 そこで、抗弁の接続に関する一般的な規定を民法に置くことが提案された(部会資料16-2【10頁】)。



[1] 包括信用購入あっせんとは、購入者等(購入者又は役務の提供を受ける者)が供給者から物品等を購入するなどする際に、信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等を提示するなどすることによって、あっせん業者にその代金に相当する額を直接的又は間接的に供給者に支払ってもらい、その後、あっせん業者に対してその額を2か月を超える期間にわたる支払を予定するなどして支払っていくという取引形態である(割賦販売法第2条第3項第1号、第2号)。

[2] 個別信用購入あっせんとは、購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に、信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等を利用することなく、当該物品等の購入等に関して、あっせん業者にその代金に相当する額を直接的又は間接的に供給者に支払ってもらい、その後、あっせん業者に対してその額を2か月を超える期間にわたる支払を予定して支払っていくという取引形態である (割賦販売法第2条第4項)。

[3] ローン提携販売とは、購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に、金融機関から発行されたカード等を提示するなどすることによって、供給者又は供給者から委託を受けた信用保証会社に保証人となってもらって金融機関からその代金に相当する額の融資を受け、その後、金融機関に対してその額を2か月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して支払っていくという取引形態である(割賦販売法第2条第2項第1号、第2号)

 

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