◇SH1904◇実学・企業法務(第146回)法務目線の業界探訪〔Ⅲ〕自動車 齋藤憲道(2018/06/14)

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実学・企業法務(第146回)

法務目線の業界探訪〔Ⅲ〕自動車

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅲ〕自動車

5. 自動車産業は、大規模ですそ野が広い総合産業

(5) 損害保険、共済

 自動車・バイク(二輪自動車、原動機付自転車)は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約を締結したものでなければ、運行することができない(自動車損害賠償保障法5条)。

  1. (注) 違反者には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金[1]、及び、免許停止処分(違反点数6点)[2]

 車検時に、次回の車検まで有効な自賠責保険・共済に加入する。車検がない250cc以下のバイクについては、満期時に更新することを失念しないようにする。

 保険は金融庁の免許を得た損害保険会社が行い、共済については法定の協同組合が行う[3]

 「損害保険会社」の業務執行状況については、金融庁が定期的に「保険検査マニュアル[4]」に基づいて検査している。

  1. (注) 国内保険市場の縮小が予想され、また、長寿化・IT技術の進展等にも適切に対応する必要があることから、従来の「形式・過去・部分」に焦点を当てる金融行政を、2018年度から「実質・未来・全体」指向に転換する検討が行われている。これに伴って、従来の「保険検査マニュアル」が修正又は廃止される可能性がある。

(6) エネルギー源とその供給体制 

 自動車のエネルギー源に関する法律を遵守する。

 • ガソリン[5] 「揮発油等の品質の確保等に関する法律」「消防法[6]」「ガソリン税[7]

 • 軽油    「揮発油等の品質の確保等に関する法律」「消防法」「地方税法(軽油取引税)」

 • LPガス  「高圧ガス保安法[8]」「液化石油ガス法」「石油ガス税法」

 • 電気  現在、普及開始期であり、本格普及期には電力全体の供給体制の確立が必須である。

 • 水素  現在、市場投入開始期であり、普及には水素ステーション網の構築が不可欠である。

(7) 分解整備・車検を行う認証工場・指定工場(道路運送車両法)

  自動車の分解整備[9]は、地方運輸局長の認証を得た「認証工場」が行う。(78条1項)

 「認証工場」のうち、一定の基準に適合する設備・技術・管理組織のほか、検査設備を有し、かつ、自動車検査員を選任して自動車の点検・整備について検査をさせると認められる(民間車検場を任せるに足りるレベルにある)ものについて、地方運輸局長が指定自動車整備事業の指定をする。この指定を受けた工場を「指定工場[10]」という。

 車検は通常、点検・整備を併せて行う(一般に、分解整備を伴う)ので、「認証工場」又は「指定工場」で行う。

  1. ① 自動車の所有者が「認証工場」に車検を依頼した場合
    「認証工場」は車を分解して点検整備を行うが、車検ラインを持たないので、運輸支局・自動車検査登録事務所等(いわゆる車検場)に点検整備した車両を持ち込んで検査を受ける。もし、不合格箇所があれば、車両を「認証工場」に持ち帰って再整備し、再度、検査を受ける。
  2. ② 自動車の所有者が「指定工場」に車検を依頼した場合
    「指定工場」では、自動車の点検整備を行い、自動車検査員が検査して保安基準の適合性を証明し、保安基準適合証を交付する。この適合証を運輸支局・自動車検査登録事務所等に提出すれば、車両の持ち込みを省略して、新しい車検証が発行される。

(8) 廃車とリサイクル  自動車リサイクル法[11]のルール

〔日本の自動車リサイクルの現状[12]

 毎年、約300万台前後が廃車されている。
 使用済自動車全体のリサイクル率(熱回収を含む)は、2000年頃は83%だったが、2005年に自動車リサイクル法が施行されて以降上昇し、2014年度には約99%にまで高まった。

〔関係者とその役割〕

  1. 1. クルマの所有者
  2.   最初の自動車登録ファイルへの登録時に再資源化預託金(通称、リサイクル料金)を支払う(73条)。
  3.   最終所有者が廃車するときは、登録された引取業者に引き渡す(8条)。
     
  4. 2. 廃車処理を行う事業者
  5. (1) 引取業者(事業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受ける。42条)
  6.   最終所有者から廃車を引き取り、フロン類回収業者(特定エアコンが搭載されていない場合は解体業者)に引き渡す(10条)。
  7. (2) フロン類回収業者(事業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受ける。53条) 
  8.   フロン類を基準に従って回収し、自ら再利用するもの以外を、自動車メーカー・輸入業者[13]に引渡す(13条)。
  9.   フロン類を回収した後の廃車を、解体業者に引き渡す(14条)。
  10. (3) 解体業者(事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける。60条) 
  11.   廃車を基準[14]に従って解体し(有用な部品・材料を分離して再資源化)、回収したエアバッグ類は自 動車メーカー・輸入業者に引渡す[15]ものとし、回収品を再利用・中古販売してはならない(16条)。
  12. (4) 破砕業者(事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける。67条) 
  13.   解体自動車(廃車ガラ)の破砕を基準に従って行い(有用金属の分離、その他の再資源化)、自動車破砕残さを自動車メーカー・輸入業者へ引き渡す。
  14. (5) 自動車メーカー・輸入業者等
  15.   自動車メーカー・輸入業者[16]、及び、指定再資源化機関[17]は、特定再資源化物品を引き取ったときは、遅滞なく再資源化を行う(25条)。
    (注)「特定再資源化物品」とは、自動車破砕残さ(解体自動車を破砕し、金属その他の有用なものを分離・回収した後に残存する物)、及び指定回収物品(エアバッグその他衝突の際の安全装置に使用するガス発生器)をいう(2条4項、5項、6項。施行令3条)
  16.   フロン類回収業者・解体業者・破砕業者から、自らが製造・輸入した自動車に係る特定再資源化等物品の引取りを求められたときは、法定の理由がある場合を除き「指定引取場所」で引き取らなければならない(21条)。
    (注)「特定再資源化物品」とは、「特定再資源化物品」及び「フロン類」をいう。(2条4項)

 上記の(1)~(4)の各業者は、処理実績を公益財団法人自動車リサイクル促進センターに報告する。

〔リサイクル料金の仕組み〕

  1. ① 料金は、自動車のメーカー・車種によって異なり、自動車メーカー・輸入業者が、1台毎にシュレッダーダストの発生量、フロン類の充填量、エアバッグ類の個数・取り外し易さ等を勘案して設定・公表する。
  2. ② 料金は、原則として新車購入時に支払い、資金管理法人(公益財団法人自動車リサイクル促進センター)に預託される。料金を支払うと、リサイクル券・領収書が発行される[18]
  3. ③ 廃車時に、預託金が払い戻されて自動車メーカー・輸入業者に支払われ、その者からフロン類回収料金、エアバッグ類回収料金が、それらの作業を行った業者に支払われる。


[1] 自動車損害賠償保障法5条、86条の3

[2] 道路交通法103条、108条の33

[3] 外国損害保険会社を含む(自動車損害賠償保障法6条1項)。共済責任を負う者は、農業協同組合法・消費生活協同組合法・中小企業等協同組合法に基づく協同組合とされている(同法6条2項)。

[4]「金融検査に関する基本指針(金検第369号 平成17年7月1日)」において保険会社の検査に関する基本的考え方が示されている。

[5] 揮発油等の品質の確保等に関する法律(ガソリンスタンドの開業手続を経済産業省で行う。)

[6] 消防法11条は、ガソリンスタンドの位置・構造・設備等につき市町村長又は都道府県知事の許可を必要とする。

[7] 租税特別措置法第3節、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律44条

[8] 高圧ガスによる災害を防止することを目的とし、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動等の取扱・消費・容器の製造及び取扱を規制する。

[9] 原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置又は連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造で、国土交通省令で定めるものをいう。(道路運送車両法49条2項、同施行規則3条)

[10] 一般に「民間車検場」あるいは「民間車検工場」という。(道路運送車両法94条の2第1項)

[11] 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」の通称。

[12] 自動車工業会「JAMAGIZINE(特集)自動車リサイクル法の10年」3~4頁「自動車リサイクル制度の現状と今後について(経済産業省製造産業局自動車課自動車リサイクル室寄稿)」より。

[13] 自動車の大手メーカー12社と日本自動車輸入組合は「一般社団法人自動車再資源化協力機構(JARP)」を設立して、フロン類・エアバッグ類の引取・再資源化の業務を一元的に行い、適正化・確実化・効率化を図っている。

[14] 解体する際には、バッテリー・タイヤ・廃油・廃液・蛍光灯を取り外す等。

[15] エアバッグの引き渡しは、メーカー等が指定する引取り基準に適合させ、「一般社団法人自動車再資源化協力機構(JARP。大手のメーカー・輸入業者の自動車が対象)」又は「公益財団法人自動車リサイクル促進センター(JARC取扱い以外の自動車が対象)」に対して指定取引場所で行う。

[16] 自動車メーカーと輸入業者は、自社製品から出てくる自動車破砕残さ(シュレッダーダスト)を引取・処分するために、全国各地のリサイクル施設・焼却施設・埋立処分場を指定引取場所に指定している。各社が個別に運用するのは非効率なため、大手企業はTHチーム(トヨタ、本田技研、VWグループ・ジャパン他が豊通リサイクル(株)ASR再資源化事業部に業務委託)とARTチーム(日産、マツダ、メルセデス・ベンツ日本他が一般社団法人自動車再資源化協力機構ART事業部に業務委託)を編成して運用を行っている。両チーム外の企業の自動車は、JARC(自動車リサイクル法のセーフティネット機能を担う)が処理する。

[17] 「公益財団法人自動車リサイクル促進センター(JARC)」が指定されている。

[18] リサイクル料金を支払済みの車を他者に売る者は、次の所有者から、車両部分の価額に加えて、リサイクル料金相当額を受け取る権利がある。

 

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