ベトナム:新投資法及び企業法の成立
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
10月20日から開催されていたベトナムの国会は、12月2日に閉幕した。今回の国会では、18件の法律が制定に至った。この中には、国会組織法、裁判所組織法など国家組織に関するものの他、投資法、企業法、税法の改正法、住宅法、不動産事業(経営)法、社会保険法など外資企業のベトナムでのビジネス活動にとって重要な法律も多く含まれている。そのうち特に影響の大きい投資法、企業法については、現行法からの変更点のうち、以下のような点が特に注目される。なお、この2つの新法はいずれも2015年7月1日から施行される。
1. 投資法(法律67/2014/QH13)
新投資法の策定過程においては、外国投資家による対内直接投資について、一定の条件付投資分野以外についてはこれまで要求されていた投資証明書の取得手続を不要とし、国内投資家と同様に自由に事業を行うことができるようにするという内容が議論されていたこともあった。
しかし、今回成立した法律を見ると、外国投資家が会社を設立するには、事前に投資プロジェクトを特定し、投資登録証を取得しなければならないとされている(22条1項)。また、外国投資家が持分・株式の51%以上を保有しているベトナム企業が投資プロジェクトを実施する場合等にも、投資登録証の取得が必要となる(36条1項、23条1項)。投資登録証は原則として十分な書類が提出されてから15日以内に発行される(37条2項)ということになっているが、実際の手続が現状の投資証明書の発行手続からどのように変更されるかは、今後の施行細則等の定めや実務の対応次第である。
なお、条件付投資分野に該当する業種は、現行の386種類から267種類に減っている。
2. 企業法(法律68/2014/QH13)
新企業法の目玉は、企業登録証に事業目的の記載を不要とした(29条)ことにあり、これにより、企業は条件付投資分野以外の事業については自由に事業展開ができるようになったとされている。しかし、外資系企業については、上記のように投資法で投資登録証の取得が必要であり、そこに投資プロジェクトの目的が記載される(投資法39条)ため、これによるメリットは限定的であるように思われる。この点も、今後の施行細則等の定めや実務の対応に注意する必要がある。
また、新企業法では、複数社員有限会社についても企業登録証の発行から90日以内に引き受けた持分の出資を行わなければならないとされている(48条2項)。これは、現行法では3年以内とされているものを大幅に短縮しているもので、増資を行う際の投資登録証の変更手続きが、現行の投資証明書の変更手続きと同様に時間がかかる場合には、実務上障害となることが懸念される。