◇SH1969◇法務担当者のための『働き方改革』の解説(2) 近藤圭介/本木啓三郎(2018/07/16)

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法務担当者のための『働き方改革』の解説(2)

働き方改革の経緯、概要

TMI総合法律事務所

弁護士 近 藤 圭 介

弁護士 本 木 啓三郎

 

Ⅳ 働き方改革関連法の概要

1 長時間労働の是正・労働時間規制の見直し

(1) 時間外労働の上限規制の導入

 現行労働基準法では、労働者代表との間で労使協定(いわゆる三六協定)を締結すれば、当該労使協定に定める上限を超えない範囲で法定労働時間を超えて労働させることが認められている。この労使協定に定める上限については、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年12月28日労働省告示)においてその限度時間が定められていたが、当該基準は告示に過ぎないため、法的強制力は有していなかった。

 働き方改革関連法は、当該基準の内容を労働基準法に明記することにより法的強制力をもたせると共に、当該基準を満たす労使協定が締結された場合であっても原則として超過することができない残業時間の上限を新たに定めた。

 

(出典:厚生労働省HP)

 

(2) フレックスタイム制の清算期間の柔軟化

 現行労働基準法では、フレックスタイム制の清算期間の上限は1か月とされていたが(労働基準法32条の3第2号)、働き方改革関連法では、その上限が3か月まで延長された。

(3) 年次有給休暇の付与義務の新設

 現行労働基準法では、使用者は、労働者が請求した場合に年次有給休暇を付与すべきものとされていたが(労働基準法39条)、働き方改革関連法では、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、原則として毎年時季を指定して年次有給休暇を付与しなければならないものとされた。

(4) 高度プロフェッショナル制度の新設

 働き方改革関連法では、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省で定める業務に従事する労働者のうち一定の年収要件を満たす労働者につき、年間104日の休日を取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議及び届出等を要件として、労働時間、休憩、休日及び深夜労働に関する規定を適用除外とする特定高度専門業務・成果型労働制度(高度プロフェッショナル制度)が導入された。

(5) 割増賃金率の中小事業主猶予措置の廃止

 現行労働基準法では、時間外労働時間が60時間を超える場合の割増賃金率は150%以上とされていたが、中小企業主については当分の間はその適用を猶予するものとされていた(労働基準法37条1項ただし書、138条)。働き方改革関連法では、かかる適用猶予措置が廃止された。

 
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