消費者庁、景表法における課徴金制度導入に関する意見募集を開始
岩田合同法律事務所
弁護士 佐 藤 喬 城
1. 課徴金制度導入の経緯
消費者庁は、平成26年8月26日付で、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)における課徴金制度導入に関する意見募集を開始した(以下「本意見募集」という。)。
景品表示法に課徴金制度を導入することについては、平成25年秋にホテル等における食品表示等の不正事案が続出したことを端緒とした政府の諮問を受け、消費者委員会が設置した「景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会」(以下「専門調査会」という。)において検討がなされてきた。専門調査会は、平成26年4月1日付での中間整理の公表を経て、同年6月10日付で、政府に対し、景品表示法に課徴金制度を導入する必要性が高い旨の答申を行った(以下「本答申」という。)。消費者庁は、同月6日付で成立した景品表示法の一部改正等に係る法律の規定を受けて、本答申を踏まえ、課徴金制度を導入する法案の国会提出を予定している。本意見募集は、かかる経緯で実施されたものである。
2. 課徴金制度導入の趣旨
本答申によれば、課徴金制度導入の趣旨は、以下のとおりである。
すなわち、現行の景品表示法においては、不当表示を行った事業者に対して課徴金は課されていない。しかし、消費者被害の実態として、不当な表示・広告による消費者被害は、全国の消費生活センター等に寄せられる生活相談の件数だけでも年間約5万件にも上るとされ、消費生活相談全体に対する比率が高まっているという実態がある。また、不当表示による被害事案では、表示と損害発生の因果関係の立証や、個々の消費者が被った被害額の算定が困難であり、その特性上、民事訴訟になじまず、消費者が被害を事後的に回復することの困難なケースも多い。
かかる現状に対し、現行景品表示法上、不当な表示・広告に対処するために用意されている手段は措置命令である。措置命令は、将来に向けて違反行為者の不当表示を中止させ、被害の拡大と再発を防止するものではあるが、違反行為者の不当な利得を剥奪する効果を有するものではない。そのため、個々の消費者が被害を事後的に回復することの困難なケースでは、違反行為者の不当な利得は剥奪されないこととなり、いわゆる「やり得」を許すこととなっている。そのため、現行法下の措置命令は、経済的な観点からは違反行為の抑止機能を実効的に果たしているとはいえない。
そこで、不当表示を事前に抑止するための方策として、現行の措置命令に加え、違反行為者に経済的不利益を賦課し、違反行為に対するインセンティブを削ぐ課徴金制度の導入の必要性が高いと考えられたものである。
3. 課徴金制度の骨子
本意見募集にあたっては、課徴金制度の骨子が示されている。その一部の概要は、以下のとおりである。
課徴金額 |
<算定率> 課徴金額は対象商品又は役務の売上額に3%を乗じる。 <対象期間> 違反行為により一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められなくなる日から遡って3年間を上限とする。 <減算措置> 違反行為について事業者が自主申告した場合、課徴金額の2分の1を減額する。 |
規模基準 |
課徴金額が150万円未満となる場合には課徴金を賦課しない。 |
除斥期間 |
違反行為がなくなった日から5年を経過したときには、課徴金の納付を命じることができない。 |
また、本答申において、不当表示事案において被害回復が困難であることから、消費者の被害回復を促進する仕組みを導入すべきであるとされているところ、法案骨子においても、以下の図に示した仕組みが用意されている(表紙ページのe-GOVウェブサイトより引用)。
(さとう・たかき)
岩田合同法律事務所弁護士。2009年東京大学法科大学院卒業。論考に、『各業務における反社勢力対応のポイント』(共著 銀行実務658号)『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会)等がある。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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