◇SH2144◇公取委、近畿地区に店舗を設置する百貨店業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令 大久保直輝(2018/10/17)

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公取委、近畿地区に店舗を設置する百貨店業者に対する
排除措置命令及び課徴金納付命令

岩田合同法律事務所

弁護士 大久保 直 輝

 

1 はじめに

 公正取引委員会は、平成30年10月3日、近畿地区に店舗を有する百貨店業者(株式会社阪急阪神百貨店、株式会社髙島屋、株式会社近畿百貨店、株式会社京阪百貨店、株式会社そごう・西武、及び株式会社大丸松坂屋百貨店(以下「本件業者」と総称する。なお、以下、「株式会社」の記載を省略する。)が独占禁止法3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行ったとして、大丸松坂屋百貨店を除く5社に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を行い、その旨公表した。

 

2 事案の概要

 本件は、中元又は歳暮用贈答品の送料(優待ギフト送料)に関する、いわゆる価格カルテルの事案である。優待ギフト送料とは、中元期又は歳暮期のみに使用するカタログに掲載して販売する商品の配送料金であって、全国各地への配送が一律の料金であるもの(金券類の配送に係るものを除く。)をいう。なお、本件において対象となった優待ギフト送料は、ウェブサイトにおいて優待ギフトの配送を受託する際に収受するものが除かれている。

 本件業者及び髙島屋サービス[1]は、各社の近畿地区の店舗において顧客から収受する優待ギフト送料の額を300円程度に引き上げることを合意した(以下「本件合意」という。)。本件合意は、運送業者による運送料引上げの要請を背景事情としており、これを優待ギフト送料に転嫁するべく、各社の物流担当者が参加する大阪百貨店物流連絡会と称する会合の場で又は個別に行われた情報交換に基づき、平成27年9月上旬までに行われたものである[2]

 公正取引委員会は、平成29年7月19日、本件について、立入検査を行っており、同日以降、本件業者の近畿地区の店舗において顧客から収受する優待ギフト送料の額の引上げについての情報交換は行われておらず、同日以降、本件合意は事実上消滅したものとされている。

 

3 課徴金納付命令及び排除措置命令の概要

 大丸松坂屋百貨店を除く本件業者に対して、総額1億9397万円の課徴金納付命令が行われ、本件合意の消滅を確認すること等を内容とする取締役会決議を行うことなどを内容とする排除措置命令が行われた。なお、課徴金の金額及び課徴金減免制度適用の詳細は、下記表のとおりである。

事業者名 課徴金額(万円) 課徴金減免制度の適用
阪急阪神百貨店 6,758
髙島屋 5,876 30%
近鉄百貨店 4,485 30%
京阪百貨店 1,637
そごう・西武 641 30%
大丸松坂屋百貨店 免除

 

4 独占禁止法の規定等

 公正取引委員会は、事業者がカルテルをした場合、当該事業者に対して、当該行為の実行としての事業活動を行った日から当該活動がなくなる日までの期間における当該商品の売上額を基準として、課徴金納付命令を行う(独占禁止法7条の2第1項)。ただし、事業者が自ら関与したカルテルについて、その内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合、課徴金額が減免される(同法7条の2第10項ないし13項)。減免の額は、申請の順位に応じており、同委員会による調査開始日前の1番目の申請者は、課徴金納付の免除、調査開始日前の2番目の申請者は課徴金額の50%、3番目以降の申請者は30%の減額、調査開始日以後の申請者は30%の減額を受けられるものとされており、調査開始日前後で最大5社(ただし、調査開始日以後は最大3社)までが課徴金の減免を受けられる。本件においても上記3のとおり、同制度が適用されている。

 課徴金減免申請を行う場合、所定の日以後に「当該違反行為をしていた者」でないことが減免の要件となるところ(同法7条の2第10項2号、第11項4号、第12項2号)、公正取引委員会は、当該要件を満たす例として取締役会等で違反行為を行わない旨の意思決定を行って違反行為従事者に周知することを掲げている(「公正取引委員会規則の原案に対して寄せられた意見と公正取引委員会の考え方」〔平成17年10月6日公正取引委員会公表資料の別紙1〕)。

 

5 終わりに

 本件においては、大丸松坂屋百貨店が課徴金減免制度を利用して、課徴金の免除を受け、3事業者が課徴金の減額を受けている。最近の価格カルテル事件として紹介される平成25年から平成30年までの事案においても、そのほとんどの事例において、同制度が利用されており、同制度に対する企業の関心は高まっているものと思われる。

 同制度は、公正取引委員会による立入検査を受けた後であっても、利用することができるものの、利用ができるのは、最大3社までであるため、違反行為の存在を認めて同制度を利用するか、違反行為を争うか、という点について、早期に決した上、申請についても早急に対応しなければならない。また、上記のとおり、今後違反行為を行わない旨の取締役会決議等も早急に行う必要がある。

 もとより、企業としては、社内教育の徹底等により、違反行為が行われないように留意すべきではあるものの、違反行為が発覚した場合は、専門家の関与の下、早期にかつ的確に対応をすることが必要である。

以上



[1] 髙島屋の子会社であり、平成29年8月末まで、高島屋から、同会社が販売する優待ギフト送料が適用される商品(優待ギフト)の配送に係る役務に関し、同会社が販売する優待ギフトの包装、保管、発送等の物流に関する業務を受託していた。

[2] なお、そごう・西武は、遅くとも平成28年2月上旬までに、同合意に参加した。

 

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