◇SH0303◇ベトナム:新投資法の施行に関する政令の草案 澤山啓伍(2015/04/30)

未分類

ベトナム:新投資法の施行に関する政令の草案

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 ベトナムにおいては新投資法・新企業法が昨年12月の国会において成立し、2015年7月1日から施行される予定となっている。日本同様、ベトナムでも法律が制定された後にその施行細則を定める政令・通達が公布、施行されるのが通例であるが、ベトナムにおいては、法律において不明確な部分が多く、政府当局においても政令・通達がないと運用をどうしていいか分からないので法律自体の運用を行わないといった態度を取ることすらあるため、政令・通達の果たす役割は大きい。

 新投資法、新企業法については、それぞれ4つの政令等が作成される予定となっている。すなわち、新投資法については、①新投資法の施行に関する政令、②対外投資に関する政令、③対内間接投資に関する政令、及び④(投資優遇の対象となる)ハイテク分野の対象に関する首相決定の4つ、新企業法については、①新投資法の施行に関する政令、②企業登録に関する政令、③情報開示に関する政令、及び④国防、安全保障分野における企業に関する政令、の4つである。これらは、いずれも2015年7月1日の法律の施行までに公布され、7月1日から施行されることを目指しているとのことであるが、これまでの経験からすると多少の遅れが発生することは想定される。

 今般、計画投資省から、投資法の施行に関する政令の草案(以下「政令案」という。)が各国商工会等に対して開示され、意見徴収が行われた。そこで本稿では、その内容について、注目される点を2点ほど紹介したい。なお、以下で検討対象としているのと同一であるかは不明であるが、政令案のベトナム語版はこちらで公表されている。また、新投資法は、JICA法・司法制度改革支援プロジェクト(フェーズ2)作成の仮和訳がこちらで公表されている。

1.  外資に対する規制リスト

 新投資法では、投資活動を行うために一定の条件を満たす必要がある条件付投資分野を限定列挙している(別表4)。政令案では、これとは別に、外国投資家に対してのみ適用される外資規制を一覧にしたリストを添付している。このリストは一覧性があって便利に見えるが、草案策定担当者の説明によれば、このリストは法的効力を持つものではなく、実際に外資規制を規定している法律の規定が優先するし、その内容に改訂があればその改訂が当然優先することになるとのことである。そうであれば、結局このリストに完全な依拠はできないものと考えられる。

2.  「登録」手続の詳細

 新投資法では、外国投資家が既存のベトナム企業の持分を取得する場合(いわゆるM&Aの場合)であって、対象のベトナム企業が条件付投資分野で事業を行っている場合か、対象企業の定款資本の51%以上を保有することになる場合のいずれにも該当しない場合には、外国投資家が直接投資を行う場合に通常必要となる投資登録証明書の取得をする必要がなく、持分取得の登録手続をすればよいということになっている。

 政令案においては、この登録手続についての詳細を定めているが、申請の必要書類は新投資法の第26条第2項に定められた書類のみであること、及び必要書類が提出され、法律に定められた条件が満たされていれば、当局がその登録を受理すべきことが規定されている。

 また、投資登録証明書の発行手続についても、現行法での投資証明書の発行の際に必要となる場合がある申請受理当局から関係省庁への照会手続が不要となり、必要書類が揃い、法律上の条件を満たしていれば、投資登録証明書を発行すべきこととなっている。

 これらの規定からは、政令案の起草者が、これらの手続が「登録」であって「許認可」ではない(したがって当局が可否の判断の裁量を持たない)という意図を有していることを垣間見ることができるが、実際の運用において当局がその手続においてどこまでその意図に即して動くかは定かではない。

 

タイトルとURLをコピーしました