◇SH2176◇法務担当者のための『働き方改革』の解説(14) 大皷利枝(2018/11/05)

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法務担当者のための『働き方改革』の解説(14)

職務等に関連する手当の均衡・均衡待遇の確保

TMI総合法律事務所

弁護士 大 皷 利 枝

 

Ⅴ 職務等に関連する手当の均衡・均衡待遇の確保

 本稿では、前稿に引き続き、勤務に関連する手当のうち、時間外労働手当、深夜労働手当及び休日労働手当について述べる。

 

5 時間外労働手当の割増率等

 <ガイドラインたたき台の基本的な考え方>

通常の労働者の所定労働時間を超えて、通常の労働者と同一の時間外労働を行った短時間・有期雇用労働者には、同一の割増率等で、時間外労働手当を支給しなければならない。

 

 まず、同一の割増率等は「通常の労働者の所定労働時間を超えた部分」に適用する必要があるとされているため、短時間労働者にとっては所定時間外労働であっても、通常の労働者にとっては所定時間外労働ではない時間については、本規制が適用されない(通常の労働者の所定労働時間が1日8時間の場合、所定労働時間が1日4時間の短時間労働者の4時間超8時間以下の所定時間外労働には、同一の割増率等を適用する必要はない。)。

 第2章Ⅳでも述べたとおり、メトロコマース事件では、正社員と契約社員で早出残業手当の割増率が異なっていたが、裁判所は、割増賃金の支払いが法令で義務づけられている趣旨は、使用者に経済的負担を課して、時間外労働等を抑制することであり、その趣旨は、正社員と契約社員のいずれにも妥当するとして、そのような異なる割増率を違法と判断した。

 

6 深夜労働手当及び休日労働手当の割増率等

 <ガイドラインたたき台の基本的な考え方>

通常の労働者と同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間・有期雇用労働者には、同一の割増率等で、深夜労働手当又は休日労働手当を支給しなければならない。

 

 <ガイドラインたたき台が示している具体的な事例>

[ 問題とならない例 ]

通常の労働者と同一の時間数及び職務の内容の深夜労働又は休日労働を行った短時間労働者に、同一の深夜労働手当又は休日労働手当を支給している。

[ 問題となる例 ]

通常の労働者と同一の時間数及び職務の内容の深夜労働又は休日労働を行った短時間労働者に、深夜労働又は休日労働以外の勤務時間が短いことを理由に、低い単価で深夜労働手当又は休日労働手当を支給している。

 

 前稿及び前々稿でも紹介した日本郵便事件では、正社員に対してのみ支給される年末年始勤務手当について、正社員の待遇を手厚くすることで、有為な人材の長期的確保を図るということには合理性があることを踏まえても、年末年始が年賀状の業務のために最繁忙期であること、また、年末年始が多くの人にとっては休日であることなどは、契約社員であっても異ならないことから、契約社員に年末年始勤務手当を一切支給しないことは違法と判断している。

 

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