◇SH2210◇法務省、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について」を掲載 飯田浩司(2018/11/27)

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法務省、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について」を掲載

岩田合同法律事務所

弁護士 飯 田 浩 司

 

 法務省は、平成30年11月16日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について」とする告知を法務局のHPに掲載した(以下「本告知」という。)。

 

(1)

 本告知に係る背景は、以下のものである。

 平成29年6月9日公表の閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針」2017年版)は、所有者を特定することが困難な土地について、公共的目的のための利用を可能とする新たな仕組みの構築、長期間相続登記が未了の土地の解消を図るための方策等について、次期通常国会への法案提出を目指す旨、定めていた(同方針3(2)④)。

 これを受けて、国土審議会土地政策分科会に特別部会が設置され、同部会は平成29年12月に中間とりまとめを発表した。

 そして、当該中間とりまとめを受けて、平成30年6月6日、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「本特措法」という。)が成立した。また、同年11月9日、関係政令(施行日政令を含む)・規則等(以下「本政令等」という。)や告示(以下「本告示」という。)等が公布等され、本特措法は、同法附則1条ただし書に定める部分(以下「本未施行部分」という。)を除き、同年11月15日に施行された(本未施行部分については、平成31年6月1日に施行される)。

(2)

 本特措法の概要については、以下の図表1を参照されたい。

 本未施行部分は概ね上記図表1の2.②(一定の所有権の制限)を対象としており、上記図表1の3.⑤(相続登記等に関する不動産登記法の特例)は本年11月15日に施行された。そのため、本特措法の共管官庁であり、不動産登記制度を所管する法務省が、本告知をそのHPに掲載したものと考えられる。

 

(1)

 本告知は、それ自体は、不動産登記法の特例について制度の簡単な紹介を行った上で、各種法令・告示・通達・主管の国交省の解説ページ等へのリンクや免税措置の案内等をしており、共管省庁として関連分野について最低限の情報を提供するものに見える。

 そこで、以下では上記図表1の3.⑤の相続登記等に関する特例(以下「本特例」という。)について概観したい。

(2)

 まず、本特例は(なお、本特例の概要について、図表2ご参照)、(i)登記官が「起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じ、当該事業を実施しようとする区域内の土地につきその所有権の登記名義人に係る死亡の事実の有無を調査した場合」に適用される(同法40条1項)。

 上記の場合、登記官は、(ii)当該土地が「特定登記未了土地」(同法2条4項。大要、相続登記等がされておらず、かつ、公共の利益となる事業の円滑な遂行のため当該土地の所有権の登記名義人となり得るものを探索する必要がある等のものをいう)に該当し、かつ、(iii)登記名義人の死亡後30年(本特措法の施行令10条参照)を超えて相続登記等がされていない場合に、所有権の登記名義人となり得る者を探索する(同法40条1項)。

 その上で、登記官は、長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨等を付記登記することができる(同項及び所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令(以下「本省令」という。)3条2項参照)。また、登記官は、当該所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは、相続登記等の申請を勧告することができる(同法40条2項前段)。さらに、登記官は、それらに必要な限度で第三者に対して情報の提供を求めることができる(同条3項。ただし、求めに応じないことによる制裁の規定はない)。その他、本省令では、例えば登記官による法定相続人情報の作成について定めている(本省令1条)。

(3)

 そのように、本特例の適用範囲は、登記官が「公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求め」があり(上記(2)(i))、それに応じて該当する区域内の土地について所有権の登記名義人の死亡の事実の有無の調査を行った場合に限定され、また、(ii) 公共の利益となる事業の円滑な遂行のため、所有権の登記名義人になり得る者の探索が必要となる土地に限定されているなど(上記(2)(ii))、必ずしも広くはない。また、登記官による探索が義務的なものであるかは明確ではなく、付記登記や勧告も裁量事項である。

(4)

 そうすると、本特例の実務上のインパクトは、運用次第という面があり、現時点ではその大きさは必ずしも予測できないようにも思われる。骨太の方針2017年を受けて、次期通常国会で法案を成立させる政治的な要請の中で、まずは実務上可能な範囲で対応がなされたのかもしれない。

(5)

 所有者が特定できない土地の扱いは社会的課題であり、現在、法務省においても、「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」が設置され、本年6月1日には中間とりまとめが発表されている。今後も、所有者が特定できない土地の扱いその他の土地の適切な利用に関する制度整備の行方が注視される。

 

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