◇SH2276◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(131)日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス③ 岩倉秀雄(2019/01/15)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(131)

―日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス③―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、合併会社のマネジメントの困難性と市乳統合会社設立の組織決定について述べた。

 合併会社は、それぞれの会社の組織文化の違いからくるコンフリクトの発生・顕在化の可能性が一定の歴史を持つ単一の会社よりも高いことから、マネジメントの困難性(コンプライアンス違反の発生可能性)が高い。

 日本ミルクコミュニティ(株)の当時の3人の経営者は、全員が企業文化の融和に気を配っていた。

 雪印乳業(株)は、2002年3月14日、全農・全酪連と共同して事業統合を視野に入れた市乳事業の構造改革を発表していたが、全酪連は2002年6月1日開催の理事会とその後のジャパンミルクネット(株)の取締役会で、市乳統合に関する基本合意書を締結することを決議し、全農は2002年5月23日の理事会で、雪印乳業への出資と市乳統合会社への出資を了承、全国農協直販㈱を分割し市乳統合会社に参加させることを決定した。(全農の出資は、同年7月25日の総代会で機関決定された。)

 各組織の決定を踏まえ、2002年6月5日、全農、全酪連、雪印乳業(株)、全国農協直販(株)、ジャパンミルクネット(株)、農林中央金庫の6者が、市乳事業統合に関する調印式を行ない、第1回市乳統合会社設立準備委員会を開催、その後、合同記者会見を開き市乳統合会社設立基本合意書の締結を発表した。

 今回は、市乳統合会社設立準備委員会の体制と統合のスキームについて考察する。

 

【日本ミルクコミュニィティ(株)のコンプライアンス③:市乳統合会社設立準備委員会の体制と統合のスキーム】

 市乳統合会社設立準備委員会は、市乳統合に係る基本合意書に基づき、必要事項を審議決定し統合を円滑に図ることを目的として設立された。

 

1. 設立準備委員会の体制

 設立準備委員会の委員には各組織の代表者が就任、第1回の委員会では、設立準備委員会運営規約を決定し、委員長に全農代表理事副会長を選任するとともに、幹事長に全農代表理事専務(後に全農代表理事理事長に交代)を任命した。

 そして、各団体・各社の実務の取りまとめ責任者が事務局長・事務局次長(全酪連は筆者)に、各団体・各社の業務に精通している者が各部会の長と部会員に任命された。

 また、会議体は、設立準備委員会のほかに、同幹事会、部長・事務局責任者合同会議、事務局会議、部会ごとの会議が多段階に設けられ頻繁に開催されたほか、短期間に集中的に課題整理と意思決定を行なう必要がある場合には、それらの合同会議も開催された。

 6月10日(月)、第1回設立準備幹事会が開かれ、設立準備委員会運営規約に基づき幹事長に全農代表理事専務、幹事長代理に前全農常務理事、事務局長に前農林中央金庫農業部長を任命するとともに、事務局次長に全農、全酪連、雪印乳業から各1名を任命した。

 7月1日開催の第2回設立準備委員会では、12の部会(経営企画部会、総務・広報部会、人事部会、財務・経理部会、情報システム部会、営業部会、品質保証部会、CS(顧客サービス・相談)部会、生産(技術)部会、ロジスティクス部会、酪農資材部会、研究開発部会)長を含む105名の合同事務局体制が報告され了承された。

 

2. 統合のスキーム

 6月10日の第1回設立準備幹事会で分割計画書を作成し各社の株主総会で承認を得ることを確認した。

 市乳統合会社は、平成15(2003)年1月1日を分割日とする共同新設分割により設立することとし、雪印乳業(株)とジャパンミルクネット(株)は分社型、全国農協直販(株)は分割型(全部分割)で、資本金150億円の資本構成は、全農40%、雪印乳業(株)30%、全酪連20%、農林中央金庫10%とした。

 

3. 企業理念、社名、コーポレートブランド

(1) 企業理念体系

 日本ミルクコミュニティ(株)の企業理念は「自然からお客様までのミルクコミュニティを育み明るく健やかなくらしに貢献します。」とし、さらに「私たちが考えるミルクコミュニティとは、お客様からお取引先・販売店・生産者・株主・社員に加え、牛や大地とも共生し、自然で健康的な価値を生み出す有機的ネットワークです。」の文言を加えた。

(2) 社名

 社名「日本ミルクコミュニティ株式会社」とした。

(3) コーポレートブランド

 コーポレートブランドは、MEGMILKメグミルクとし、Mの下に点を配置し「ミルクの滴」を表現した。ブランドメッセージは、「いのちのよろこびに、自然の恵みを」として、お客様一人ひとりに「自然の恵み」を届けたい、暮らしの中に「いのちのよろこび」を育みたいという会社の活動姿勢を表した。

 

4.基本的戦略と組織機構の考え方

 赤字基調の市乳事業を集めた市乳統合会社が黒字化し持続的発展を図るために、社会的信頼の獲得とコストダウンを基本戦略とし、組織機構をその戦略を実現するための仕組みとして検討した。

 社会的信頼の獲得を得るために、理念と行動規範・行動指針を整備したほか、社外取締役の導入、社外有識者による経営全般に対する助言・提言機関であるミルクコミュニティ委員会の設置、代表取締役直轄のコーポレートスタッフ部門として経営企画、コンプライアンス、内部監査、品質保証、広報、お客様センター機能を整備することとした。

 また、コストダウン戦略は、①老朽化し効率性に問題のある工場を統廃合すること、②現行の営業拠点と営業要員を効率的に再配置すること、③管理部門を一本化し要員を削減すること、④物流拠点と配送ルートを見直し物流効率を高めること、⑤3社統合により一定以上の生産物量を確保し、1社では不可能な原材料・資材購入費用の削減を実現することマーケティング費用割合を低減すること等、であった。

 なお、商品開発と研究開発については、日本ミルクコミュニティは商品開発に特化し基礎的研究は雪印乳業(株)に委託することにより、研究開発施設の利用効率を高めコスト低減を図ることとした。

 次回は、事業戦略等について考察する。

 

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