金融庁、記述情報の開示に関する原則(案)について意見募集
――形式的なルール対応にとどまらない開示充実に向けたガイダンスとして――
金融庁は12月21日、「記述情報の開示に関する原則(案)」を公表し、2月1日までの意見募集に付した。
金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長・神田秀樹学習院大学大学院教授)が6月28日に取りまとめた「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」(以下「WG報告」という)における提言を踏まえて、財務情報の開示の充実に加え、財務情報をより適切に理解するための記述情報を充実させる観点から、これらを開示していくうえでのプリンシプルベースのガイダンスとなるものと位置付けられる。欧州・米国を始めとする諸外国で記述情報を含む開示の充実に向けた取組みが進められていることも背景にある。
記述情報とは非財務情報のことをいい、一般的には「開示書類において提供される情報のうち、財務情報(金融商品取引法193条の2「財務計算に関する書類」において提供される情報)以外の情報」を指す。WG報告によると「企業の財務状況とその変化、事業の結果を理解するために必要な情報であり、①投資家が経営者の視点から企業を理解するための情報を提供し、②財務情報 全体を分析するための文脈を提供するとともに、③企業収益やキャッシュ・フローの性質やそれらを生み出す基盤についての情報提供を通じ将来の業績の確度を判断する上で重要」なもので、WG報告では(ア)投資判断に必要と考えられる記述情報が有価証券報告書で適切に開示されることが重要であり、(イ)記述情報の充実を通じて企業に対する投資家の理解が深まることで、中長期的な企業価値向上に向けた投資家と企業との対話がより実効的なものとなっていくことが期待されると指摘した。
「記述情報の開示に関する原則(案)」では、「投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる」情報として(1)経営方針・経営戦略、(2)「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」、(3)リスク情報の3点を取り上げ、これらを有価証券報告書において開示する際の考え方等が整理されている。
原則(案)を仔細にみると、「Ⅰ.総論」計5頁と、開示項目を個別に取り上げていく「Ⅱ.各論」計9頁により構成。「Ⅰ.総論」の中核をなす「2.記述情報の開示に共通する事項」では、たとえば筆頭に2-1として【取締役会や経営会議の議論の適切な反映】を掲げ、「記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められる。」ことを説明。続いて「(考え方)」を紹介し、有価証券報告書における記述情報が経営判断と密接に関係していることのほか、上記(1)〜(3)の経営方針・経営戦略、経営者による経営成績等の分析、リスク情報のそれぞれについて大要どのような説明・分析が望ましいかを示している。
加えて「(望ましい開示に向けた取組み)」とし、「① 記述情報に取締役会や経営会議の議論を反映するため、経営者は、開示書類作成の早期から、開示内容の検討に積極的に関与し、開示についての基本方針を示すことが期待される。」と述べるほか、②各部署において一貫した開示を可能とするため「役員が各部署を統括するなどして、関係部署が適切に連携し得る体制を構築することが望ましい。」など、推奨される取組みを具体的に明らかにした。
「Ⅱ.各論」では「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「2.事業等のリスク」「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(Management Discussion and Analysis、いわゆるMD&A)」に大別したうえで、たとえば「1」に関しては【経営方針・経営戦略等】【優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題】【経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等】といった3つの開示項目のそれぞれにつき、まず〔法令上記載が求められている事項〕を明記しつつ、総論におけると同様に「(考え方)」「(望ましい開示に向けた取組み)」を具体化している。