経産省、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する
対話研究会」の初会合を開催
――略称を「SX研究会」としてサステナビリティ・トランスフォーメーションの取組みを具体化、
秋ころまでに価値協創ガイダンスを改訂へ――
経済産業省は5月31日、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」(座長・伊藤邦雄一橋大学CFO教育研究センター長)の初会合を開催した。
新規の設置が5月28日に発表されていた。中長期の企業価値向上に向けて企業と投資家との対話のいっそうの実質化を図るとして公表された2020年8月28日付「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~」において提唱した「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」の取組みを具体化させる(実質化検討会の初会合開催について、SH2916 経産省、「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の初会合を開催――企業・投資家間の対話の質を底上げ、来春を目途に取りまとめ (2019/12/04)既報)。なお、経産省の定義によるSXとは「企業の稼ぐ力の持続的向上に向けた『長期の時間軸』を前提にした経営、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの時間軸を同期化し、社会課題を企業経営に時間軸を踏まえて取り込んでいく取組み、不確実性に備えるため企業と投資家と継続的な対話によるレジリエンスの強化等」を意味する。
今般のSX研究会の委員としては、学識経験者である座長および企業経営者・投資家の立場にある計12名が実質化検討会の委員と同一となっており、新任10名を加えた計22名が就任した。金融庁・東京証券取引所・企業年金連合会・日本証券アナリスト協会・日本IR協議会が実質化検討会と同様にオブザーバー参加するほか、日本経済団体連合会・日本公認会計士協会も加わる。事務局は経産省経済産業政策局産業資金課・企業会計室。
SX研究会では「長期の時間軸の中で社会のサステナビリティを取り込む企業の長期の経営、サステナビリティ要素を取り込み中長期の企業価値向上に向けた企業と投資家との対話や非財務情報の開示に関する課題や在り方を明確に」したうえで「価値協創ガイダンス」に反映する(同ガイダンスについて、SH1212 経産省、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」(価値協創ガイダンス)を策定(2017/06/06)既報)。5月31日の第1回会合後は「月1回程度開催し、本年夏頃を目途に中間整理を行い、秋頃までに中間整理を踏まえて価値協創ガイダンスを改訂する予定」としているほか、サステナビリティを踏まえた中長期の企業価値向上に資するための対話の課題や考え方を「伊藤レポート3.0」として取りまとめる予定である。
初会合当日の事務局説明資料によれば、全体的な予定日程として、8月下旬には中間整理が、9月下旬には価値協創ガイダンスの改訂案、報告書案の取りまとめが見込まれる。また「実質化検討会で抽出された課題」を(ア)「企業と投資家の中で対話の内容について、特に認識のギャップが存在したもの」として、①多角化経営・事業ポートフォリオマネジメント、②新規事業創出やイノベーションに対する「種植え」および③社会的価値と経済的価値の両立・アラインメントの確保としたうえ、(イ)「対話の中身における課題に加え、以下の2点の課題についても整理」するとして、①対話の手法や対話そのものに対する認識に関する企業間の差異の広がり、②対話を取り巻く環境に関する課題を挙げた。
論点案においてはこれらを踏まえ(1)グローバルなマルチステークホルダー議論を踏まえた、企業が創造すべき「価値」の考え方、(2)「SX」を踏まえた中長期の時間軸の中での経営や対話についての課題、(3)資本市場・投資家の課題、(4)価値協創ガイダンスの課題と整理。上記(2)に関してはより仔細に、①企業のあるべき方向性、存在意義(パーパス)の特定・明確化、②重要性(マテリアリティ)の考え方、③長期の時間軸を前提にした長期ビジョン・長期経営計画等経営戦略の構築の在り方、④長期ビジョン等を達成するための具体的な戦略、取組み(多角化・事業ポートフォリオ戦略、無形資産投資、イノベーションの種植え等)の考え方、⑤長期の時間軸のガバナンスについて――を論点としている。
なお、SX研究会の設置と併せて「非財務情報及びその指針に関する世界的な動向に関する情報の共有を行いながら、質の高い非財務情報の開示を実現する指針のあるべき方向性を検討する」とし、「非財務情報の開示指針研究会」の設置が発表されているところである(6月10日に初会合開催)。