中国:外商投資法(草案)の公布(後編)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 川 合 正 倫
本稿では、前稿に引き続き、2018年12月26日に公布された外商投資法(草案)に関する重要なポイントを紹介する。
外資促進及び外資保護の各種規定
外商投資法(草案)においては、外商投資企業に対しても内資企業と同様の待遇を保証する内国民待遇に関する規定が散見される。
- 第九条
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法律、行政法規に別途の定めがある場合を除き、国家が企業の発展を支持することに関する各政策は外商投資企業に同様に適用される。
- 第十六条
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国家は外商投資企業が政府調達活動に公平に参入することを保障する。政府調達において法に従い外商投資企業が中国国内で製造する商品を平等に取り扱う。
- 第三十二条
- 法律に別段の定めがある場合を除き、関係主管部門は内外資一致の原則に基づいて外商投資企業に対して監督検査を実施しなければならない。
また、投資保護に関しては、諸外国から批判の大きい外貨管理、知的財産の保護、撤退に関して法律に従った処理を行う旨の規定がなされている。また、行政機関が外国企業に対し技術移転を強制することを明示的に禁止している。
- 第二十一条
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外国投資者の中国国内における出資、利潤、資本収益、知的財産権使用料、法に従い取得した補償又は賠償等について法に従い人民元又は外貨にて自由に転出することができる。
- 第二十二条
- 国家は法に従い外国投資者及び外商投資企業の知的財産権を保護し、知的財産権者及び関係権利者の適法な権益を保護し、自由意思の原則及び商業規則に基づいて技術提携の展開を激励する。
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外商投資の過程における技術提携の条件は各投資者の合意により確定されるものとし、行政機関及びその職員は行政手段を利用して技術を強制的に譲渡させてはならない。
- 第二十三条
- 各級人民政府及びその関係部門の制定する外商投資に関わる規範性文書は法律法規の規定に合致しなければならず、違法に外商投資企業の適法な権益を損害し、又はその義務を増加してはならず、違法に市場参入及び退出条件を設置してはならず、違法に外商投資企業の正常な経営活動を妨げてはならず、又は影響を与えてはならない。
外国による差別的な取扱いの牽制(第三十七条)
外商投資法の附則において外国が中国に対して差別的な取扱いを行うことを牽制する規定がなされている。この規定も近時の国際情勢を反映したものと考えられる。
- 第三十七条
- 如何なる国家又は地区が投資分野において中華人民共和国に対して差別的な禁止、制限又はその他これらに類する措置を講じる場合、中華人民共和国は実際の状況に従って当該国家又は地区に対して相応の措置を講じることができる。
施行時期及び外資三法の廃止(第三十九条)
外商投資法の施行時期は未定であるものの、本法の内容が大幅に簡素化された背景等に鑑み今後立法作業が加速することが想定される。また、外商投資法の施行と同時に外資三法は廃止される予定であるが、同法施行前に設立された外商投資企業は、外商投資法施行後5年間は元の組織形態を継続することができるとされている。実務的には、外商投資法施行後に「中外合弁企業法」を前提とする定款規定(具体的には、董事会の構成や董事会全会一致事項に関する規定)の変更が重要なテーマとなるものと考えられる。
- 第三十九条
- 本法は、 年 月 日より実施する。「中華人民共和国中外合資経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」及び「中華人民共和国中外合作経営企業法」は同時に廃止する。
- 本法の実施前に「中華人民共和国中外合資経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」及び「中華人民共和国中外合作経営企業法」に基づいて設立された外商投資企業は、本法の実施後5年以内に原企業組織形態を継続して保持することができる。