◇SH2340◇文化審・著作権分科会法制・基本問題小委、違法ダウンロードの対象は「著作物全般に拡大」が有力な選択肢 (2019/02/15)

未分類

文化審・著作権分科会法制・基本問題小委、
違法ダウンロードの対象は「著作物全般に拡大」が有力な選択肢

――改正の方向性を取りまとめ、主観要件も明確化へ――

 

 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(主査・茶園成樹大阪大学大学院教授)は2月5日、(1)リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応、(2)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しなど、著作権法改正の方向性について審議した結果を「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書」として取りまとめ、公表した。2月13日開催の文化審議会著作権分科会における審議を経て、開会中の第198回通常国会に著作権法改正案が提出される見通しとなっている。

 他に著作権法の整備・見直しが適当とされたのは、(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化、(4)著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化、(5)著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入、(6)行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)。いずれの項目についても、同委員会による「中間まとめ」が平成30年12月10日〜今年1月6日、任意の意見募集に付されており、寄せられた団体95件・個人623件にのぼる計718件の意見を踏まえ、また1月25日に開かれた(第18期)第8回会議における報告書案に対する各委員からの意見をも踏まえ、複数回の修正と調整を経て、最終的には主査の責任において小委員会としての報告書が取りまとめられたものである。

 上記(1)は2016年からの継続検討課題であり、「自身のウェブサイトにはコンテンツを掲載せず、他のウェブサイトに蔵置された著作権侵害コンテンツへのリンク情報等を提供して利用者を侵害コンテンツへ誘導するためのウェブサイト」をいわゆるリーチサイトとして、著作権侵害を助長するとの観点から、また漫画を中心とするインターネット上の海賊版サイトへの対策の一環として規定の整備を図る。

 たとえば、対象となる著作物に関する考え方として、リーチサイトおよび同様の機能を有するリーチアプリにつき、①オリジナルの著作物の相当部分をそのまま利用しているようなケースについては差止めの対象とするべきという考え方を基本としつつ、②具体的な制度設計に当たっては「差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応」という今般の制度整備の考え方、③対象範囲を限定することによる潜脱のおそれ、④対象範囲の限定の仕方が明確でない場合には萎縮効果を生じるおそれがあること、⑤立法技術上の対応可能性などを踏まえ、「どのような形で対象を規定するのが妥当かについて検討が行われることが適当であると考えられる」と指摘し、きわめて多岐にわたる要素を勘案する必要性を述べている。

 リンク情報の提供行為やリーチサイト運営・リーチアプリ提供に係る刑事罰についても「現行著作権法における罰則の法定刑の考え方との整合性に留意しつつ、今般創設する各罰則の法益侵害の度合いに照らして適切な法定刑が検討されることが適当である」とし、今後の検討に委ねた。

 (1)とともに法改正の2大項目となる(2)では、具体的な対象範囲を「著作物全般に拡大(対象行為を複製全般に拡大)していくことが有力な選択肢となる」と指摘。まずは無料提供されている漫画・コミックなどを念頭に置きながら「静止画・テキスト等」を保護の対象としつつ、①単なる視聴・閲覧が違法とならないこと、②主観要件に関しては条文上「事実の認識」と「違法性の認識」の双方につき「確定的な認識を要求することを明確化することについて、適切に検討・対応を行う必要がある」こと、③あくまで私的使用目的の権利制限規定(著作権法30条1項柱書)の適用を除外するという観点からは、他の各種権利制限規定に該当する場合には当該ダウンロード行為が適法となることなども検討結果として示している。

 刑事罰としての法定刑の水準については、録音・録画の場合と同様に「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はその併科」とすること、また、親告罪のまま維持することが適当であるとした。

 なお、(3)は「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成28年法律第108号。平成30年12月30日から施行)により、著作権法において①「技術的利用制限手段」(アクセスコントロール)の回避行為をみなし侵害として民事措置の対象とするとともに、②その回避装置・プログラムの公衆への譲渡等および回避サービスの提供を刑事罰の対象とすることとされ、すでに不正競争防止法においてライセンス認証システムにおけるアクティベーション方式が含まれるよう改正済みであることなどから、著作権法においても定義規定の明確化、対象行為の追加などを図るもの。

 また(4)では、「文書提出命令の申立ての対象書類等が侵害立証・損害額計算のために必要な書類であるか否かを判断する場合」にインカメラ手続を用いることができるような見直しを適当とするほか、(5)では対抗制度の導入が必要としたうえで、①利用許諾に係る権利の安定性を確保するという趣旨、②民法法理との整合性、③制度の導入が契約実務に与えうる影響、④他の知的財産権法との整合性を踏まえ、基本的には「対抗要件を要することなく当然に対抗できることとする制度(当然対抗制度)を導入することが妥当」とする考え方を示している。

 

タイトルとURLをコピーしました