◇SH3408◇グラス・ルイス、2021年議決権行使助言方針を発表――経営トップの選任にかねて表明の「政策保有株式に関する方針」を織り込む改定 (2020/12/02)

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グラス・ルイス、2021年議決権行使助言方針を発表

――経営トップの選任にかねて表明の「政策保有株式に関する方針」を織り込む改定―

 

 議決権行使助言会社グラス・ルイス(Glass, Lewis & Co.)は11月24日、2021年議決権行使助言方針を発表した。2021年から適用される改定を織り込み、まず米国・カナダ・欧州・英国に加えて日本の企業に適用される助言方針を明らかにしたもので、日本については英語版と併せて日本語版を公表している(以下、本稿は日本語版に基づく)。

 改定の概要として掲げられるのは「EXCESSIVE STRATEGIC SHAREHOLDING」に関してであり、グラス・ルイスではすでに2020年議決権行使助言方針の発表時、2021年から適用する助言方針として、政策保有株式に関する方針(EXCESSIVE STRATEGIC SHAREHOLDING)を表明。保有水準に着目し、一定水準以上の場合には経営トップの選任に反対助言を行うとするものであるが、同時に、同社が問題視する理由として複数の指摘を行っていた。

 今般発表された2021年議決権行使助言方針においてもこれらの方針・理由はおおむね踏襲されたかたちとなっており、同社の問題意識として次の点を挙げている。(a)日本特有の市場慣行の1つである企業間の株式持ち合いは上場企業株式の経済的価値を議決権行使の観点から除外するものであり、経営陣を資本市場のプレッシャーから守る役割を果たしていることが多いこと、(b)株式の持合いや政策保有は経営側の説明責任の低下、不十分な危機管理能力、非効率的な自己資本管理政策等にもつながる可能性が高く、敵対的買収の回避にも寄与していると考えられていること、(c)多くの企業が持ち合い株や政策保有は経営戦略上、必要不可欠なものであると主張するが、明確な根拠が開示されていることは稀であり、投資家の間では政策保有株式に関して否定的な意見が多いこと、(d)コーポレートガバナンス・コードは原則として政策保有株式の縮減に関する方針、考え方などに関する方針の開示を求めていること、(e)2019年1月に公布された内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」は政策保有株式に関する方針などについて開示を求めるとともに個別開示対象となる銘柄を30銘柄から60銘柄に拡大したこと(編注・平成31年1月31日内閣府令第3号参照)。

 改定が確定された2021年助言方針において「政策保有株式に関する方針」は、A GOVERNANCE STRUCTURE THAT SERVES SHAREHOLDER INTEREST(株主の利益につながるガバナンス体制)の章のうち、ELECTION OF BOARD OF DIRECTORS AND STATUTORY AUDITORS(取締役及び監査役の選任)に関する項目中、筆頭項目となる BOARD INDEPENDENCE(取締役会の独立性)に係る方針と並び、また GENDER DIVERSITY ON BOARDS(ジェンダー・ダイバーシティ)の次の1項目として織り込まれた。

 具体的な助言方針は(1)2021年より、(2)原則として「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の「貸借対照表計上額の合計額」が連結純資産と比較して10%以上の場合に「会長(会長職が無い場合、社長等の経営トップ)に反対助言を行う」とするものである。なお、①国際会計基準を採用する場合、資本合計と比較するとの表明がなされているほか、②この方針に使用する情報は前年度の有価証券報告書の数値を使用し、③ただし、この方針に関連する直近の数値を開示している企業については当該最新の数値を使用して精査するものとしている。

 また、上記・原則に対する例外的な対応が併せて示されており、(3)基準値を超える政策保有株式を保有していると確認できる場合においても、①明確な削減計画を開示し、さらに政策保有株式が減少していると確認できる場合、②株式の政策保有が事業戦略上、必要である旨の明確な開示があり、同社が合理的だと判断できる場合には「反対助言を見送ることがある」とされている。

 

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