◇SH2395◇GPIF、国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」、「優れた統合報告書」等を公表(2019/03/12)

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GPIF、国内株式運用機関が選ぶ
「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」、「優れた統合報告書」等を公表

――GPIFの2018年スチュワードシップ活動報告――

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2月27日、GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」を公表した。

 これは、GPIFが国内株式の運用を委託している17機関(パッシブ7機関、アクティブ10機関。以下、「運用機関」)に対して、昨年6月1日のコーポレートガバナンス・コードの改訂を受けて上場企業が提出しているコーポレート・ガバナンス報告書について、記載内容が充実していると思われるものの選定を依頼したものである。今回は最大5社の選定を依頼したところ、のべ41社が選ばれている。

 今回の結果のうち、多くの運用機関から「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」として高い評価を得た企業は、以下のとおりであった(カッコ内は運用機関の主なコメント)。

 (なお、以下では、「コーポレートガバナンス・コード」を単に「コード」と略す場合がある)

 

【優れたコーポレート・ガバナンス報告書】

  1. ○ 花王(「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由」において、【原則3-2-2 外部会計監査人と社外取締役との十分な連携の確保】および【原則4-8-1 独立社外取締役のみの定期的な情報交換】に関して、コンプライしない理由ではなく、同社における実質的に当該内容を担保するような取組みが具体的に紹介されており、単に全項目をコンプライすることがコードの目的ではなく、エクスプレインによってガバナンスの実効性を示すことも重要であるということを示している)

    1. ◈ 花王のコーポレートガバナンス報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/governance_001.pdf
       
  2. ○ カゴメ(政策保有株式について、「直前事業年度末における各政策保有株式の金額を基準として、これに対する、発行会社が同事業年度において当社利益に寄与した金額の割合を算出し、その割合が当社の単体5年平均ROAの概ね2倍を下回る場合」など、透明性の高い定量的な基準を提示している)

    1. ◈ カゴメのコーポレートガバナンス報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/governance.pdf
       
  3. ○ 荏原製作所(資本コストを意識した経営に関し、WACCを踏まえて新規事業投資及び事業ポートフォリオの管理を行い、さらに、中期計画でROICをKPIと位置づけて会社全体をEVAに基づいた資本政策を確立している)

    1. ◈ 荏原製作所のコーポレートガバナンス報告書
      https://www.ebara.co.jp/about/ir/library/corporategovernance/__icsFiles/afieldfile/2018/11/28/corporategovernance20181127_1.pdf
       
  4. ○ みずほフィナンシャルグループ(全体的に、それぞれの個別項目について、読み手を意識した丁寧な説明が行われている。個別項目としては、特に、【補充原則4-1-3後継者計画(サクセッション・プランニング)】において、意思決定に関する基本的な考え方・プロセスや、グループCEOの人材要件が具体的にわかりやすく示されている)

    1. ◈ みずほフィナンシャルグループのコーポレートガバナンス報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/g_report.pdf
       
  5. ○ エーザイ(【原則1-4 政策保有株式】に関して、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを正味現在価値(NPV)等の概算により精査している)

    1. ◈ エーザイのコーポレートガバナンス報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/cgovernance20181101.pdf
       
  6. ○ コニカミノルタ(取締役選任基準、特に、社外取締役候補者に求めるダイバーシティの観点で「キャリア・スキルマトリックス表」の作成など、その選任基準が明確化されている)

    1. ◈ コニカミノルタのコーポレートガバナンス報告書
      https://www.konicaminolta.com/jp-ja/investors/ir_library/governance/pdf/governance_all.pdf
       
  7. ○ 資生堂(特に資本政策の基本方針やインセンティブ関係の説明が丁寧。インセンティブについては、資生堂が2018年度からの3ヵ年計画を「成長加速のための新戦略に取り組む期間」と位置付けているため、役員報酬も経営哲学や企業理念を反映した長期戦略の実現度合を評価の対象としている点等、同社の哲学とこれまでの経緯や今後の戦略を踏まえて説明されている)

    1. ◈ 資生堂のコーポレートガバナンス報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/gover.pdf

 

 次に、GPIFでは、「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」についても同様に、それぞれ最大10社選定を依頼し、 「優れた統合報告書」についてはのべ67社(前回70社) 、「改善度の高い統合報告書」についてはのべ87社(前回68社)が選ばれたことを、1月25日に公表している。

 そのうち、多くの運用機関から「優れた統合報告書」、「改善度の高い統合報告書」として高い評価を得た企業は、以下のとおりであった(カッコ内は運用機関の主なコメント)。

 

【優れた統合報告書】

  1. ○ 伊藤忠商事(トップメッセージでは、経営理念や戦略の説明にとどまらず、経営陣の経験や考え方にも触れている)

    1. ◈ 伊藤忠商事の統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/ar2018J.pdf
       
  2. ○ 丸井グループ(独創性が高く、社長メッセージを含め目指す方向がはっきりしている)

    1. ◈ 丸井グループの統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/i_report2018_a3.pdf
       
  3. ○ 大和ハウス工業(理念と社長メッセージと目指す方向性が一致していてわかりやすい。財務との関連をしっかり説明、中身のあるMD&Aの記載は手本となる)

    1. ◈ 大和ハウス工業の統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/daiwahouse_IR2018J_all.pdf
       
  4. ○ 味の素(「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)を通じた価値創造ストーリー」の標榜→詳細なKPIの設定→具体的なアクションに繋がることで価値創造の実現が期待できる)

    1. ◈ 味の素の統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/integrated_report.pdf
       
  5. ○ オムロン(将来目指す社会、そこからバックキャストしたビジネスモデル、中期経営計画、サステナビリティ目標、ROIC経営、人材戦略、報酬制度のすべての説明が高次元で繋がっている)

    1. ◈ オムロンの統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/ar2018j.pdf

 

【改善度の高い統合報告書】

  1. ○ J.フロント リテイリング(サステナビリティ方針策定に伴い内容を刷新。SDGsにリンクしたマテリアリティ特定と取組策を開示している)

    1. ◈ J.フロント リテイリングの統合報告書
      http://www.j-front-retailing.com/ir/library/annual/2018/J_FRONT_2018_J.pdf
       
  2. ○ ミネベアミツミ(今年度、アニュアルレポートから統合報告に移行し、説明内容が改善。コンパクトな分量で図表等を多く用いておりわかりやすい)

    1. ◈ ミネベアミツミの統合報告書
      https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/2018_integrated_report.pdf
       
  3. ○ 島津製作所(CSR(基盤的CSR)とCSV(戦略的CSR)を区別しており、理解の深さをうかがわせる。ESGとSDGsについての充実した記述とKPIの明示がなされ、事業ごとの社会課題の落とし込みができている)

    1. ◈ 島津製作所の統合報告書
      https://www.shimadzu.co.jp/ir/i7rr0a0000003d9q-att/n00kbc000000gz4c.pdf
       
  4. ○ 三菱UFJフィナンシャル・グループ(経営トップのメッセージで、日本語版と英語版で若干記載を変え、メッセージの伝え方にも考慮するなど同社における統合報告書の戦略的な意義が高まっていると認識している)

    1. ◈ 三菱フィナンシャル・グループの統合報告書
      https://www.mufg.jp/dam/ja/ir2018/pdf/all.pdf

 なお、GPIFでは、上記の内容も盛り込んだ、「2018年 スチュワードシップ活動報告」を2月28日に公表している。

 

 

  1.   GPIF、「GPIFの国内株式運用機関が選ぶ『優れたコーポレート・ガバナンス報告書』の公表について」を掲載しました(2月27日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/310227_corporate_governance_report.pdf
     
  2.   GPIF、「GPIFの国内株式運用機関が選ぶ『優れた統合報告書』と『改善度の高い統合報告書』について」を掲載しました(1月25日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/310125_integration_report.pdf
     
  3.   GPIF、「2018年 スチュワードシップ活動報告」を掲載しました(2月28日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/voting_2018.pdf
  4.  
  5. 参考
    SH1610 GPIF、国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」の公表 泉篤志(2018/01/30)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5343381

 

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