SH2398 企業法務フロンティア「パワーハラスメント防止措置の法制化と企業の人事労務実務への影響(上)」 小川尚史(2019/03/13)

そのほか労働法

企業法務フロンティア
パワーハラスメント防止措置の法制化と企業の人事労務実務への影響(上)

日比谷パーク法律事務所

弁護士 小 川 尚 史

 

第1 はじめに

 本年2月、厚生労働省は企業へのパワーハラスメントの防止義務を盛り込んだ「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」等の改正案要綱を示し、労働政策審議会により了承された。これにより、パワーハラスメント防止措置の法制化に向けた動きが加速することとなり、早ければ本年中にも改正法が成立する見込みである。

 本稿では、①パワーハラスメントに関する法規制等の現状を踏まえ(第2)、②想定される改正法案における防止措置やガイドラインの内容を紹介するとともに(第3)、③法制化が実現した場合に企業に求められる対応やその他の人事労務実務への影響(第4)について述べる。

 

第2 パワーハラスメント及び法規制等の状況

1 社会問題となっているパワーハラスメント

 企業における各種ハラスメント行為(パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメント等)は社会問題となっている。とりわけパワーハラスメントはあらゆる企業や組織で問題となることが多く、労働局への労働相談(個別労働紛争解決制度)は、パワーハラスメントを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談が17年度で約7万2000件という状況である。

 

2 セクシュアルハラスメント等の防止措置に関する法規制

 各種のハラスメント行為の中でも、セクシュアルハラスメントについては男女雇用機会均等法において、マタニティーハラスメントについては育児・介護休業法などで企業に防止措置が課せられており、相談窓口の設置などが求められている。たとえばセクシュアルハラスメントの防止措置に関しては、男女雇用機会均等法11条に以下のとおり定められている。

 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 これに対して、パワーハラスメントに関して企業に防止措置を求める法規制は存在しない。

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