◇SH2599◇公取委、「平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等」を公表(2019/06/12)

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公取委、「平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等」を公表

――指導件数は過去最多の7,710件――

 

 公正取引委員会は5月29日、「平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等」を公表した。以下、その概要を紹介する。

 

第1 下請法の運用状況

1 下請法違反行為に対する勧告等

(1) 勧告件数

 平成30年度の勧告件数は7件で、すべて製造委託等の勧告であった。勧告の対象となった違反行為類型は、下請代金の減額が6件、返品が1件、不当な経済上の利益の提供要請が1件となっている(1件の勧告事件において複数の違反行為類型について勧告を行っている場合があるので、違反行為類型の内訳の合計数と勧告件数とは一致しない)。

(2) 指導件数

 平成30年度の指導件数は、前年度(6,752件)から658件増で過去最多の7,710件であった。

 

2 下請事業者が被った不利益の原状回復の状況

 平成30年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者321名から、下請事業者10,172名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額6億7,068万円相当の原状回復が行われた。前年度と比べると、金額が前年度の33億6,716万円から大幅に減少した。

 

3 下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案

 平成30年度の親事業者からの違反行為の自発的な申出は73件であり、同年度に処理した自発的な申出は71件であった。また、親事業者からの違反行為の自発的な申出により、下請事業者804名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額1億843万円相当の原状回復が行われた(前記2記載の金額に含まれている)。

 なお、勧告に相当するような事案に対して上記のような取扱いを行った件数は、これまで24件である(平成20年度2件、平成24年度3件、平成25年度1件、平成26年度1件、平成27年度2件、平成28年度10件、平成29年度5件、平成30年度0件)。

 

第2 企業間取引の公正化への取組

1 下請取引適正化推進月間の実施

 公取委は、中小企業庁と共同して、毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め、次のように下請法の普及・啓発を図っている。

  1. •  下請取引適正化推進講習会
  2. •  キャンペーン標語の一般公募
  3. •  下請法遵守の要請文書の発出

 このうち、「要請文書」については、平成30年度においては、親事業者約210,000名及び関係事業者団体約1,000団体に対し、下請法の遵守の徹底等について、11月27日に要請を行った(後掲の別稿参照)。

 

 取引実態調査等

(1) 製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査

 製造業者30,000名を対象として、10月26日に調査票を発送し、製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査を開始した。

(2) 荷主と物流事業者との取引に関する書面調査

 公取委では、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、平成16年3月8日、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(以下、「物流特殊指定」)を指定し、荷主と物流事業者との取引の公正化を図っている。

 平成30年度においては、物流特殊指定の遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主30,000名及び物流事業者40,000名を対象とする書面調査を実施した。その結果、物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあると認められた571名の荷主に対して、物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送した(平成31年3月)。

 当該571名の荷主のうち、業種について回答のあった566名を業種別にみると、製造業(272名、48.1%)、卸売業(111名、19.6%)、建設業(53名、9.4%)が多い。また、問題となるおそれがある行為638件を類型別にみると、代金の支払遅延(222件、34.8%)、代金の減額(131件、20.5%)、発注内容の変更(126件、19.7%)が多くなっている。

(3) 警備業務の取引に関する実態調査

 「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」(議長:内閣官房副長官)での議論を踏まえ、警備業務に係る事業者間の取引状況を把握するため、警備業者1,000名を対象とする実態調査を実施した。

 調査結果によると、取引額上位3名との取引において優越的地位の濫用規制又は下請法上問題となり得る行為を受けたことがあると回答した警備業者は52名(11%)であった。行為類型別の状況をみると、「不当な給付内容の変更」(45名)がもっとも多く、次いで「不当な経済上の利益の提供要請」(23名)が多かった。また、問題となり得る行為をした取引先の業態別の状況をみると、約70%が建設業者であった。

 調査結果を踏まえ、違反行為の未然防止及び取引の公正化の観点から、建設業者の関係事業者団体に対して、本調査結果を示すとともに、業界における取引の公正化に向けた自主的な取組を要請した。

(4) 金型に係る取引の実態調査

 「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」での議論を踏まえ、金型に係る業界の取引慣行の実態を把握するため、中小企業庁と共同で、事業者約30,000名を対象として、12月26日に調査票を発送し、金型に係る取引の実態調査を開始した。

 

 

  1. 公取委、平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等(5月29日)
    https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/may/190529.html
  2. ○ 平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等(概要)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/190529gaiyou.pdf
  3. ○ 平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等(本文)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/190529honnbunn.pdf
  4.  
  5. 参考
    SH2233 経産省と公取委、下請取引の適正化について親事業者等に要請(2018/12/05)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=7722595

 

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