特別養子縁組の対象年齢を拡大する改正民法が成立・公布
――公布から1年以内に施行、審判の手続も見直して利用促進へ――
特別養子制度の利用を促進するための「民法等の一部を改正する法律案」(第198回国会提出、閣法第51号)が6月7日、参議院本会議で可決され、成立した。改正法は「民法等の一部を改正する法律」(令和元年法律第34号)として6月14日、公布されている。
(1)養子となる者の年齢の上限を原則「6歳未満」から「15歳未満」へと引き上げ、(2)特別養子適格の確認の審判を新設するなどして審判の手続を見直すとともに、(3)児童相談所長が当該審判の手続に参加することができる制度を新設する観点から、民法・家事事件手続法・児童福祉法を改める改正案が3月15日に閣議決定され、同日、国会(衆議院)に提出されていた(改正の背景・概要について、SH2439 特別養子制度の利用促進で民法等改正案が国会に提出される (2019/03/29)既報)。
衆議院では5月14日、法務委員会に付託された後、翌15日の委員会において法相から提案理由の説明を聴取。17日には法相・法務大臣政務官・政府参考人、最高裁判所への質疑がなされ、22日には①法制審議会特別養子制度部会で部会長として要綱案を取りまとめた大村敦志学習院大学大学院教授を始め、②児童相談所関係者、③NPO関係者、④サヘル・ローズさんら5人の参考人の意見聴取とともに参考人への質疑が行われた。
5月24日の審議において法相・文部科学大臣政務官・政府参考人、最高裁判所への質疑を行った後、質疑は終局。続いて、子どもの意思確認などを論点として日本維新の会から反対討論がなされた。採決では賛成多数により原案どおり可決。28日には参議院本会議において賛成多数により可決され、同日、参議院に送付された。
参議院では5月29日に法務委員会に付託。翌30日に法相から趣旨説明を聴取、6月4日に政府参考人や最高裁判所への質疑に加え、参考人として①棚村政行早稲田大学教授(法制審議会特別養子制度部会委員)、②林浩康日本女子大学教授、③児童養護施設関係者の意見聴取・質疑。6日には質疑後採決に至り、賛成多数により原案どおり可決した。翌7日の参議院本会議においても賛成多数により可決、成立したものである。
改正法は、公布日から1年内の政令指定日に施行される。施行の際に現に係属している特別養子縁組の成立の審判に関する養子となる者の年齢要件および当該審判事件の手続については、なお従前の例によるものとされている。
6月7日、参議院本会議の開催を控えた閣議後記者会見で法相は「成立することになりましたら、特別養子制度の利用が促進され、家庭的な環境の下で養育をすることが適切な子どもがその必要に応じて制度を利用することができるようになることを期待している」と改正の意義を述べた。