伊藤忠商事、上場子会社のガバナンスに関する方針を策定
――親子上場への関心の高まりと政府方針を踏まえ、明確化して新たに示す――
伊藤忠商事(本社:東京都港区、東証第一部上場)は10月10日、同日開催した取締役会で「当社が親会社である上場子会社のガバナンスに関する当社方針」を決議したと発表した。
同社では「昨今の親子上場に対する株主・機関投資家等の関心の高まり及び日本政府の方針を踏まえ」た対応としており、(ア)アスクルの定時株主総会におけるヤフーの議決権行使(SH2698ヤフー、連結子会社の社長・独立取締役ら4取締役の再任に反対する議決権行使――対するアスクルは法律意見書・独立役員会意見等を公表、株式売渡請求権行使の意向を示す (2019/07/30)、SH2710アスクル、株主総会による4取締役の再任否決で独立取締役および指名・報酬委員の選任・選定が不可能に――ヤフーの議決権行使を巡っては諸団体から意見表明も (2019/08/06)およびSH2791アスクルが「(暫定)指名・報酬委員会」を設置、運営方針を発表 ――ヤフー・プラスの独立取締役再任反対を受け、外部弁護士ら起用し臨時総会まで対応 (2019/09/25)既報)などとともに、(イ)令和元年6月21日閣議決定「成長戦略実行計画」「成長戦略フォローアップ」においても上場子会社のガバナンスのあり方が課題とされ、「親会社は、グループとしての企業価値の最大化の観点から上場子会社として維持することの合理的理由を示す」ことなどが求められている状況を念頭に置いているものとみられる。
上記方針は、同日付で更新された「コーポレート・ガバナンス報告書」の「Ⅰ」の「5. その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情」にも反映されている。7月1日付による前回提出の記載では、(a)上場子会社として伊藤忠テクノソリューションズ、伊藤忠エネクス、伊藤忠食品、コネクシオ、タキロンシーアイおよびユニー・ファミリーマートホールディングスを有していること、(b)伊藤忠商事はこれらの上場子会社の独立性を尊重し、かつ株主平等の原則から反するような行為を禁止していること、(c)一方でグループ全体の企業価値の向上のため、伊藤忠商事は親会社・大株主として上場子会社の法令遵守体制・状況につき、常に十分な注意を払い、必要に応じてコンプライアンスに関わる一定の事項や、内部統制システムの構築等について助言・支援を適宜行っていること――を掲げていた。
「新たな策定」と位置付けられる新方針によれば、次の事項を表明するものとなっている。上記(b)については下記(B)第1文のように表現ぶりを若干変更したうえで、上場子会社の一般株主と伊藤忠商事との間に利益相反リスクがあることを明記する第2文を置き、各上場子会社に対しては「独立社外取締役を有効に活用した実効的なガバナンス体制の構築を促す」とした。加えて、下記(D)の記述を新たに添え「上場子会社として維持することの合理的理由」についても説明責任を果たしていくとしている。
(A)上場子会社として伊藤忠テクノソリューションズ、伊藤忠エネクス、伊藤忠食品、コネクシオ、タキロンシーアイおよびファミリーマートを有していること、(B)伊藤忠商事はこれらの上場子会社の独立性を尊重し、かつ株主平等の原則から反するような行為は行わないこと。特に、同社と当該上場子会社の一般株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえ、当該上場子会社としての独立した意思決定を担保するために、当該上場子会社に対して、独立社外取締役を有効に活用した実効的なガバナンス体制の構築を促すものとすること、(C)なお、グループ全体の企業価値の向上のため、伊藤忠商事は親会社・大株主として当該上場子会社の法令遵守体制・状況につき、常に十分な注意を払い、必要に応じてコンプライアンスに関わる一定の事項や、内部統制システムの構築等について助言・支援を適宜行っていくこと、(D)伊藤忠商事は、同社グループにおける上場子会社につき、上場子会社として維持することの合理的理由および当該上場子会社のガバナンス体制の実効性につき説明責任を果たしていくこと。