◇SH2880◇民事司法改革シンポジウム 民事司法改革の新たな潮流 ~実務をどう変えるべきか~⑦・完(2019/11/12)

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民事司法改革シンポジウム
民事司法改革の新たな潮流~実務をどう変えるべきか~⑦・完

◇開催日 2019年3月23日(土)午後1時~午後4時

◇会 場 弁護士会館2階講堂クレオ

 

窪田 それでは、私のほうから損害賠償について、少しお話をさせていただきたいと思います。かなりお疲れになっていると思いますので、できるだけコンパクトにとは思っております。
 先ほど損害賠償の役割、不法行為法の役割ということについてお話をして、やや唐突な印象を与えたかもしれませんが、普通は大学時代に習うのは、損害賠償法というのは損害の回復であって、制裁ではない、制裁は刑法の役割だということで、民刑分離ということが言われるわけですが、ただ、実は損害賠償というのは、それが制裁であるということを認めたとしても、刑法とどういうふうにすみ分けをするのかということがあります。
 その点はあるのですが、おそらく損害賠償法の最も重要な役割というのは、その主体が自らイニシアティブを握って損害の回復を実現する、そして、それが同時に制裁であるとか、不法行為の抑止につながるという部分なのだろうと思います。
 これは、古くから言われてきている「私人による法の実現」ということになるわけですが、そうした側面は、別にそうしたことが強調されてきたアメリカ法に限るものではなくて、我が国においても、今後より重視されていっていいのではないかというのが、私自身の基本的な考え方です。
 その上で、現在の損害賠償法に関してどういう問題があるのかといいますと、特定の意味での差額説というのが、非常に強い拘束力をもって我が国の不法行為法を拘束してしまっているのではないかということです。差額説は通説だというのは一般的な説明ではあるのですが、ただ実は30年ほど前の教科書を見ますと、不法行為の成立要件として権利侵害と損害、因果関係とか、故意、また過失があるわけですが、権利侵害と損害との違いの説明として、こんな例を挙げている教科書があるんですね。
 つまり、他人の使っていない空き地に車をとめていた。したがって所有権侵害はある。しかし、その土地の所有者は、それを別に積極的に利用しようとは思っていなかった。そうすると、これは差額説から言うと損害がない。したがって、不法行為は成立しない、といった説明です。
 多分、これを今授業で説明したり、判決で書いたりすると唖然とされるのではないかと思います。おそらく、現在では、これは所有権侵害という権利侵害もあって、賃料相当額の損害賠償が認められるというのが、一般的な考え方なのではないかと思います。
 これは、じゃあ差額説が否定されたのかというと、おそらく不法行為がなかったとしても所有者は何にもしなかったでしょうという適法な状態と、不法行為がなくて、ちゃんと適法に契約をしていたら、賃料相当額を払ったはずでしょうという形で、多分差額説の使い方が違うだけなのだろうと思います。
 ただ、あたかも前者のような差額説というのが、何か唯一それしか計算方法がないような形で、非常に強く我々を拘束してきたという側面があるのだろうと思います。
 今の駐車場の例は、特許権侵害の問題にもつながります。つまり、賃料相当額というのは、おそらくライセンス料相当額の損害賠償という話とパラレルになるのだろうと思います。そして、ライセンス料相当額の損害賠償という話になりますと、先ほどの特許権侵害の場合ともつながってくるわけです。ただ、ライセンス料相当額の損害賠償というのは、先ほどの損害がないよりは、ずっとましなのだろうと思うのですが、実は二つの問題あるいは課題があるのだろうと思います。
 一つは、ライセンス料の相当額を認めるとしても、これは損害の抑止にとっては、実は機能はあまり持っていないということです。つまり、ばれてもライセンス料、ばれなければただということは、ばれない確率を含めて期待値計算をすれば、かなり小さく、つまり適正な契約をする場合のコストよりは安くなるわけですから、不法行為の抑止にはつながらないという点です。
 それともう一つは、これをライセンス料相当額の損害賠償を認めるというのは、おそらく契約の締結強制という側面を持つのだろうという点です。それが当然に認められるのかどうか、締結を強制されたということはどう評価されるのかという問題が残るのだろうと思います。
 今回の特許法改正に関して言いますと、ライセンス料相当額の損害賠償を導入するというのは、従来の考え方から言っても、別に不思議ではないということで、これは、比較的スムーズに取り入れられるし、一般的な不法行為法との関係も説明しやすいと思います。
 ただ、おそらくもう一つの問題が、権利侵害があったということを前提としてライセンス料を評価する、算定することができる。これは、大変に意味のある部分ですし、私が先ほど言ったただのライセンス料相当額では、不法行為の抑止はできないといったことに対する一つの解決なのだろうと思います。この部分をどういうふうに説明するのかというのは、非常に古典的というか伝統的な堅い形での差額説からアプローチする人たちからは、ひょっとしたら批判が出るかもしれません。ただ、逆に言うと、まさしくこういうものが特許権侵害において認められるのだとすれば、そしてそこでの問題は、別に特許権に固有の問題ではないですから、この部分に関して言えば、損害賠償法一般にとって重要な意味を持っているのかなと思っています。
 私自身の問題提起というのは、非常に狭い意味での差額説、特に逸失利益の算定とかが想定されますが、そうした非常に限定的な意味での差額説を前提として、そして逸失利益の場合には、特に控えめな算定方式をとるという形で、さらに手足を縛って、その結果、大変不自由な不法行為法、損害賠償法を自らつくってきてしまったのではないかなというのが、一つの問題提起だということになります。
 あと1点だけ補足させてください。先ほど、別に懲罰的損害賠償がある英米以外でも、フランスでもドイツでもと申し上げましたが、民法と刑法の役割は違うという点については、これらの国々においても共有されています。損害賠償が制裁ではないということは、アメリカ法の教科書を見ていても書いてあります。どの国の教科書にも書いてあるのですが、そうは言いつつ、そんなにきれいに分けられるわけではないでしょうという形で、損害賠償が組み立てられているのだろうと思います。
 それに対して我が国の損害賠償は、おそらく19世紀の末、ドイツでもっともそういう峻別の考え方が強かった時期のものが導入され、そしてずっとそれが生き残ってきた、実は、ガラパゴス状態になっているのかなという感じがいたします。
 そういう意味でも、何かいろいろな視点から損害の算定ということについて、見直しをするということが課題になるのではないかというのが、私からの問題提起です。以上です。

コーディネーター・出井 非常に深遠な問題提起を簡潔にまとめていただいて、ありがとうございました。それでは、この課題についても利用者サイドから、安岡さん、長谷川さんにコメントをいただいた後、実務家サイドから小林さんにコメントをいただきたいと思います。それでは、安岡さん。

安岡 マスコミに勤めていた者として、仲間内の批判をするようで申し訳ないのですけれども、仲間から見ても、名誉毀損でよく訴えられることで有名なマスコミがありますけれども、これはどうも名誉毀損で賠償が認められても、100万円はいかないだろうと、そんな金額ならば派手な見出しを付けて、売上増になった分で十分ペイするという気持ちでやっているのではないかなというのが、正直見受けられるんですよね。
 だから、不法行為の抑止、それからマスコミに求められている悪意のない公正な真実と信じるに足りる根拠をもとに書くと、論評にしても公平な観点から書くと、そういうマスコミ報道に求められる緊張感を確保するためにも、今の名誉毀損に対する損害賠償、慰謝料の額は低すぎると私は思っておりました。
 ただ、懲罰的に損害賠償、特に名誉毀損に対して巨額なものを科す場合には、アメリカなどでやっている現実的悪意の法理を導入するとか、公人についての報道を委縮させない格別の配慮が必要だと、そういう留保をもっての上での意見ですけれども、やはり特に名誉毀損に対する損害賠償、慰謝料は随分低いなというのが、私のマスコミで仕事をしてきた実感です。

長谷川 すみません、損害賠償制度について申し上げる前に、一般論でもあるんですけれども、先ほど三木先生が最後におっしゃった、「立場上」に関して申し上げたいと思います。私は文書提出命令が検討された際に、直接民事訴訟法改正を担当していなかったんですが、一般論として、我々経済界は、国に対して納税義務、然るべき収益を上げて納税義務を果たしたいと考えておりますし、債権者に対してきちんと融資されたものを返したいと思っておりますし、株主に対して配当もちゃんと支払いたいと思っておりますし、何よりも従業員に対して雇用を守り賃金をきちんと払っていきたいというふうに思っております。そういう「立場」の中で、公正を前提としつつもできるだけ効率的なシステムの中で事業活動したいと考えております。そういう「立場」で制度設計の議論に関わっているわけでございます。
 そのことを大前提にした上で、例えば文書提出命令のときでありますと、例外規定をどういったものを置くかということを役所の方とも政権とも丁寧に議論をして、制度設計について意見を申し上げています。
 今回の証拠収集に関しても、おそらく具体的な提案があれば、そういった丁寧な議論をお願いするということになるんだと思っております。
 先ほど先生のほうから御紹介のありました損害賠償につきましても、まさにそういうことでございまして、具体的な提案を検討する中で、そもそも損害填補という考え方を変えていくべきなのかどうか、あるいは今の考え方の中で柔軟に考えていくべきなのか、先ほどの特許法は後者なのかもしれませんけれども、どちらの考え方をまず採るかというところで、随分反応が違うのかなと思っているところでございます。
 その上で、今の損害賠償制度について、私どもの立場で、これも証拠収集のところと同じなんですけれども、今の制度で大きな不備があるということは、実はあまり聞いたことがないというのが実情でございまして、その中で、今の制度がよろしくないということであれば、今後の検討の中で具体的な議論を行わせていただきたいと考えているところでございます。

コーディネーター・出井 それでは、小林さん。

小林 この損害賠償の問題は、安岡さんはじめ皆さんが言われているように、あまりにも今の日本の損害賠償、実損填補という視点からするとやはり低すぎます。国賠にしても慰謝料にしても低すぎるという実感を持っている方は多いのだろうと思います。
 アメリカの懲罰賠償制度につきましては、平成9年の最高裁判決が我が国はそういう制度はとらないんだということは明言しているわけですけれども、立法的にどのような制度を取るかということについては、それは立法政策の問題であり、それは別の考え方もあり得るんだと委ねているわけです。
 そこで、今回知財の損害賠償で、製造能力を超えてライセンス侵害があった場合には、その部分についても賠償を認めていくと。これは侵害をし得にしない、侵害者のやり得を許さないという、そういった抑止的な意味合いも持たせる必要があるのではないか。それは公平という見地からすると侵害した者が侵害された者よりも多くの利益を得ておって、やり得になってしまっていると。これは公平の見地から見てもやはり許されるべきではないし、やはり最低でも得た利益というものを吐き出して被害者を保護していく。こういった考え方は、今回知財改革ではそうなっていて、そのような考え方が一般にも敷衍していくということは、流れとしてはあり得るのではないかなと思うわけであります。そういう視点から、今後この損害賠償の問題というのは、さらに考えていかなければいけない課題だろうと思います。

コーディネーター・出井 ありがとうございます。それでは、このセクションの締めくくりとして、窪田さんのほうからコメントをお願いいたします。

窪田 それでは、2点だけ補足をさせてください。最後にお話があった利益の吐き出しという問題なのですが、従来の逸失利益についての控えめな算定というときに、必ず言われるのは、不法行為によって被害者が儲かってはいけないということです。これについては、非常に神経質に、ちょっとでも儲かってはいけない、だから控えめ算定するということなのだろうと思うのですが、それに対して加害者のほうに利益が残るということについては、あまりにも無神経で、平然として無視してきたように思います。その点は、十分に見直しがあるのだろうと思います。
 それから、もう一つ、安岡さんから御指摘をいただきました名誉毀損の関連なのですが、実はドイツ法が90年代に大きく変更することになったのが、やはりマスコミによる報道が問題となったケースでした。これは、ある雑誌がカロリーナ・モナコ王女というドイツで大変人気のあるモナコ王女、このインタビューを載せたというものです。このインタビューは、インタビュー自体がでっち上げ、内容も端から端まででっち上げというものでした。中身はというと、このモナコ王女がどれほどいい人なのか、どれほどボランティア活動に参加していい人なのかということが描かれたインタビューでした。このケースについて古典的なアプローチは難しい状況がありました。つまり、名誉毀損にはどうもなかなか当たらない、社会的評価は上がっただけだということになる。他方で、売上は間違いなく上がっている。
 これに対して、人格権侵害という形で損害賠償を求めたのですが、連邦通常司法裁判所は、このような人格権侵害を将来にわたって抑止するために十分な金額でなければならないという言い方をして損害額を算定し、ほぼ1,000万円ぐらいの損害賠償を認めたというものです。
 そういう意味でも、ドイツ法は比較的硬い損害論をとってきた国なのだろうと思いますが、十分にいろいろなことを考える材料はあるのだろうと思います。以上です。

コーディネーター・出井 ありがとうございます。この短時間の中に、三つの重要な課題を無理やり詰め込んで議論いただきました。詰め込みすぎたために消化不良、あるいはもっと掘り下げて議論をしたいということもあったかと思います。しかし、今日で議論は終わりではございませんので、引き続き様々な場で議論を継続していきたいと思っております。
 それでは、最後に一言ずつ御挨拶をいただきたいと思います。では、有田さんから順にお願いします。

有田 このシンポジウムに参加する前は、資料でもそうですが、ほとんど20年前と変わっていないというような認識でした。もちろん、変わっていない部分もあると思いますが、専門家の方々の間では、かなり進んだ議論が行われていたということを認識しまして、スピード感あふれた改革がされていることが実感できました。しかし、消費者・市民を忘れない、置き去りにしないような形で、改革を進めていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。以上です。

長谷川 ありがとうございます。では、2点、先ほど申し上げましたけれども、2000年代に行われた司法制度改革が、菅原先生の御報告によれば一定の成果が上がっているということを伺って、非常に安心したものであります。
 その上で、自然人という表現でしたか、満足度が比較的上がっていないという、むしろ下がっているということについて、どういった要因があるのか、引き続き研究者の方々で、原因を追及していただければ、分析していただければ非常にありがたいなと思っているところでございます。
 その上で、望ましい司法制度の在り方、これはパンフレットのところでも私が申し上げましたけれども、これも不断に国民全体として追及していく必要がある課題だと思っております。このシンポジウムを踏まえてさらに議論が深まることを祈っております。今日はどうもありがとうございました。

窪田 自分の扱った損賠賠償以外の話をむしろ面白いなと思って伺っておりました。大変勉強になりましたし、いい機会を与えていただきありがとうございます。どうもありがとうございました。

三木 窪田先生から、ドイツのモナコ王女の裁判の話があったので、私も一つ、アメリカの裁判の話をしたいと思います。アメリカのサーキットコートという裁判所に係属した事件です。サーキットコートは連邦高裁と訳されますけれども、日本の高等裁判所と比べるともうちょっと格上で、最高裁判所に近いようなレベルの裁判所です。その第7サーキットの事件で、裁判官は、ポズナーという人です。知っている人は御存じでしょうけれども、有名な経済学者から裁判官になった人で、そのポズナーの法廷にかかった事件です。アメリカ企業同士の裁判なんですけれども、実質は日本企業絡みの事件です。
 そこで、当事者の片方は、これは実質的には日本の事件で有力な証人とかは日本にいるのだから、アメリカでは訴えを却下して、日本で裁判をやってもらえばいいじゃないかという主張をしました。要するに、いわゆる国際裁判管轄といいますか、アメリカでは、フォーラムノンコンビニエンスという問題が争われた事件です。
 これに対して、アメリカで裁判を起こした側が、相手方の主張に反論しました。事件がアメリカで却下されて、日本で裁判がされるようになったら、たまったものではない。なぜならば、日本の裁判というのは、誰でも知っているけれども、証拠収集制度が全く整っていなくて、事実に基づいた裁判などしていないのだから、自分たちの権利は守られなくなる。このように言って、そこが争点になった事件です。
 我が国の証拠や情報の収集制度は、海外では、しばしばそのように見られています。少なくとも、そういうふうに見る人はたくさんいるということ、これを付け加えておきたいと思います。

コーディネーター・出井 今おっしゃったのは、そういう主張が実際の裁判でなされたということですよね。

三木 それが最大の争点になった事件です。連邦地裁レベルではどうだったかわかりませんが、連邦高裁での最大の争点はそこだったということです。

コーディネーター・出井 ありがとうございます。それでは、安岡さん、お願いします。

安岡 政府の骨太方針に盛り込まれたことを、民事司法制度改革がいよいよ現実の問題になってきた表れと捉えています。そういうときに、必ず財務省筋が言うのがコスト、所要予算の問題と、費用対効果の観点から政策のベネフィットは何があるんだということですけれども、これから述べるようなことを是非日弁連から主張して、民事司法制度を使いやすくて、頼りがいのあるものにするような改革を実現してもらいたいと思います。それは、民事司法制度改革によって法治を実効化できる、実効性のあるものにすることができるという主張です。
 国民と、それから日本の国内の事情を知らないまま、労働力として大量にやって来る外国人の間に、日本国の統治機構への信頼感というものが、民事司法制度を実効性のあるものにする、つまり法治を実効化することによって生まれると思います。
 国民も、外国から来てくれる労働者の方たちもいろいろな面での困りごとを司法サービスを利用することによって容易に解消できるならば、精神的な負担というのも軽減できるだろう。それから、それぞれの皆さんの持っている財産を適正に管理できる、政策ベネフィットとして定量化できないことですけれども、そういう統治機構への信頼感というものをつくるのに、市民に身近な民事司法制度を実効性のある頼りがいのあるものにするのに、たかだか100億円単位のコストしかかからない、ということで、その辺を強調して、是非司法制度改革の実を上げていただきたいと思います。

コーディネーター・出井 それでは、最後に小林本部長代行、お願いいたします。

小林 今日は証拠と損害賠償、こういった重要な課題を議論していただきました。司法アクセスで言いますと、やはりまだ提訴手数料の問題とか、こういった課題も変えなければいけないだろうと思います。
 それと裁判をやるということになりますと、やはり裁判所の人的な部分、物的な部分の基盤、こういったこともやはり視野に入れて改革・改善を図っていくことも大事と思います。そういう意味では、支部が充実するとか、非常駐支部に至ってはまだ48か所ぐらいまだ、裁判官も常駐していないという支部も多いわけです。そういったところを踏まえて拡充をしていくということが望まれるだろうと思います。
 それから、もう一つ、やはりそれを担っていく我々法曹、裁判官、検事、それから弁護士もそうですけれども、今デジタル化とグローバル化というのは、ものすごい勢いで進んでいるわけで、あえて申し上げるまでもないことでありますけれども、その中にあって、国内の法制度というのは、国際的な部分と密接に絡み合ってグローバル化していると。こういう中にあって日本の法制度を国際標準的に見直しをしていくという時代の要請、これは無視できない状況だろうと思います。
 そういうものを担う法律家が、やはり国際的に外国語能力も含めまして、法曹養成のどこかの過程でこういうものに対応する能力をつけるような制度、養成制度というものも考えていかなければいけない。そういうものが一体となった制度改革、民事司法改革というものを目指していく必要があるのではないかと考える次第です。
 今日は、どうもありがとうございました。

コーディネーター・出井 お配りしておりますパンフレットのシンポジウムの趣旨のところの最後に書きましたけれども、私どもは民事司法の実務がどう変わるか、という受け身ではなく、どう変えるべきかという能動態で臨みたいと思っております。本日は、パネリストの皆様、本当にありがとうございました。

司会・成瀬 ありがとうございました。皆様パネリストの皆様に、今一度盛大な拍手をお願いいたします。
 最後に、本シンポジウム実行委員会委員長の豊崎寿昌より閉会の御挨拶を申し上げます。

豊崎・民事司法改革シンポジウム実行委員会委員長 本シンポジウムの実行委員長を務めました東京弁護士会の豊崎でございます。
 本日は、講師のお二方、またパネリストの方々御多忙な中、貴重なお話をありがとうございました。第1部の基調報告におきましては、菅原様から日本の民事司法の実状に関し、利用者に対する継続的な調査に基づき、利用者の視点にたった改革の必要性について、立証的な分析をいただきました。
 また、宗像様からは特別報告として、特許侵害訴訟等における証拠収集分野及び損害賠償分野両面での従来の制度を一歩踏み出す改革についての御説明をいただきました。
 第2部のパネルディスカッションにおきましては、6名のパネリストの皆さんに、それぞれの分野の知見に基づき闊達な意見交換をいただきました。安岡様には、法テラス理事の御経験を踏まえ、利用者の立場から民事司法制度を使いやすくすることの必要性を伺いました。有田様には、市民及び消費者の目線から、民事司法へのアクセスについて、いまだに課題が残っていることを御指摘いただきました。長谷川様には、経済界の立場から改革に向けての問題意識について、御指摘をいただきました。三木様には、我が国の証拠情報収集制度の弱さが、民事司法の早期解決機能を損なっていることを御指摘いただき、具体的な改革案を御提示いただきました。窪田様には、我が国の損害賠償法につき、抑止機能を含めた賠償額の算定を図るという民事司法の役割について、踏み込んだ御提言をいただきました。そして小林さんには、これら各会のパネリストの御意見を踏まえた実務家としての問題意識を語っていただきました。
 現在、政府においても民事司法改革に向けて、具体的な体制づくりが進められる情勢の中、私たち弁護士会は法律実務家として本日得られた知見を基に、法曹三者共同しながら市民が使いやすく、迅速に紛争の解決が図れるより良い民事司法制度の構築のため、今後も取り組んでいく所存です。
 最後になりましたが、本日コーディネーターを務められた出井さん、短い時間の中で、的確な進行をどうもありがとうございました。
 そして、寒い中、休日に会場にお運びいただきました参加者の皆様、速報値で160名を超えるそうでございます。最後まで御清聴をいただきまして、誠にありがとうございました。これにて、本シンポジウムを閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

司会・成瀬 皆様、長時間御清聴いただきまして大変ありがとうございました。以上をもちまして、民事司法改革シンポジウムを終了いたします。(了)

 

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