◇SH2918◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第81回) 齋藤憲道(2019/12/05)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

第2部 経営に貢献する管理・監視・監査のあり方
「高い生産性」と「高い自己浄化能力」の実現に寄与する管理・監視・監査

 第2部では、第1部で検討したことを踏まえて「高い生産性」と「高い自己浄化能力」を備える優れた「経営管理システム」を構築するために必要な次の3つの要件について考察する。

 第1は、高い生産性を実現する「経営管理システム」を作ること(付加価値を最大にするシンプルな管理システムの要件)、第2は、「見守り役」の6者が連携して監査の効率と品質を高めること(監査の効率化と品質向上を実現する方法)、そして第3は、監査能力を有する者に監査を委ねること(監査の担い手が備えるべき資質)、である。

 

1. 要件1 高い生産性を実現する「経営管理システム」を作る

 企業経営を統制する「経営管理システム」には、事業から得る付加価値を最大にする「高い生産性」と、企業の信用・信頼を増大する「高い自己浄化能力」の2つが備わっていることが必要である。

 本項では、「経営管理システム」が「高い生産性」を実現するために備えるべき要件について考察する。

 なお、欠陥商品や不祥事が発生すると企業価値が大きく毀損するので、これらを業務プロセスの中で除去する仕組み(管理システム)についても必要な範囲で言及する。

(1) 管理サイクルの短期化と全員参加型経営を実践する

① 管理サイクルの短期化(高速回転経営)と全員参加

 「高い生産性」を実現した経営管理システムとして、松下電器[1]の事業部制(事業部にP/LとB/Sの責任、内部資本金、月次決算、事業計画と実績対比、経理社員制度)、トヨタ自動車のトヨタ生産方式(ジャスト・イン・タイム[2]、自働化、カイゼン)、京セラのアメーバ経営(時間当たり採算、日々採算、事前管理)等が知られている。

 これらの管理システムでは、社内で設定した部門(事業部・部・工場・課・係等の組織、又は、管理用に設けた単位)毎にそれぞれの業務の計画・目標を策定し、頻繁にその実績を集計して、その部門の社員が、計画・目標との差異分析、評価、対策(改善)検討等を行う。もし、その部門に異常(規範逸脱)や計画からの乖離があれば、その部門の全員の眼で、直ちに発見して対策を講じる。

 管理サイクルの短期化による管理面の高速回転経営と、全員参加型経営の実践によって、「高い生産性」が実現されている。 

② 内部通報制度を全員参加型経営のツールとして活用

 「内部通報制度」は、企業内で隠蔽される不祥事の芽を、現場の多人数の眼で見過ごすことなく発見し、直ちに摘み取ってしまう有用なツールである。

  1. (注) どの企業でも、内部通報の大半は「××をすることに問題はないか」という相談案件だが、まれに、企業規範に抵触する案件が通報される。企業は、内部通報に適切に対応して、できるだけ早期に不祥事の芽を発見し、排除したい。

 全従業員が利用できる「内部通報制度」は、「従業員提案制度」と並んで、全員参加型経営を支える効果的な管理手法であるといえる。

 (内部通報制度の詳細は、第4章 第1部 2. (1)を参照)



[1] 現、パナソニック(株)グループ

[2] ジャスト・イン・タイムを実現するために、平準化生産するための工夫や、カンバン方式の導入が行われた。

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