◇SH3032◇新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた在宅勤務の継続・オフィス出社時の感染予防対策 羽間弘善(2019/10/11)

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新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた
在宅勤務の継続・オフィス出社時の感染予防対策

岩田合同法律事務所

弁護士 羽 間 弘 善

 

 令和2年2月7日、GMO インターネットグループは、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、渋谷区・大阪市・福岡市のオフィスに勤務するパートナー(従業員)について、同年1月26日に2週間を目途として採用した在宅勤務体制を継続し、やむを得ず業務上出社が必要なパートナー(従業員)については身を守るための感染予防グッズ配布と以下の出社時・在社時の予防策徹底を行うことにより一部出社を認める体制とした旨を発表した。このほか、新型コロナウイルスを巡っては、上場企業を中心として、数多くの企業がテレワークを活用するなどして国内で勤務する従業員に対して在宅勤務を勧めるなどの感染防止に向けた取組みを行っているところである。

 

※GMOインターネットグループの公表資料[1]より抜粋

 

 また、同年2月21日には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、厚生労働省が、一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会及び全国中小企業団体中央会等の経済団体に対して、①労働者が発熱などの風邪の症状が見られる際に、休みやすい環境の整備、②労働者が安心して休むことができるよう収入に配慮した病気休暇制度の整備、③感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進などの取組みへの協力を求めている。

 本稿においては、現在の状況を踏まえて、新型コロナウイルス感染流行の長期化に備えた在宅勤務の継続・オフィス出社時の感染予防対策の拡充など、各企業が講ずるべき対策を解説する。

 

 労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定めており、使用者が労働者に対して安全配慮義務を負っている旨を規定している。

 したがって、各企業は、当該安全配慮義務を遵守する観点から、新型コロナウイルスが職場において感染しないよう必要十分な感染防止策を講じる必要があり、仮に、各企業が適切な感染防止策を講じることなく従業員が新型コロナウイルスにり患した場合には、不法行為又は安全配慮義務違反を理由とする損害賠償義務が認められる可能性がある。

 各企業が、安全配慮義務を遵守する観点から具体的にどのような新型コロナウイルスの感染防止策を講じる必要があるのかを検討するにあたっては、新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議が作成した平成21年2月17日付「新型インフルエンザ対策ガイドライン」[2]の中の、「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)が参考になる。本ガイドラインは、新型インフルエンザを対象としたものであるが、事業者が実施すべき感染防止策等について詳細に記載されている。

 本ガイドラインに記載されている感染防止策のうち、新型コロナウイルスの感染防止策としても考えられるものとしては以下のものが挙げられることから、新型コロナウイルスの感染防止策を現在検討されている企業においては参考とされたい。

 

目的 区分 対策例
従業員の感染リスクの低減 業務の絞り込み
  1. ・ 不要不急の業務の一時停止
  2. ・ 感染リスクが高い業務の一時停止
全般
  1. ・ 在宅勤務等の実施
    (在宅勤務実施のための就業規則等の見直し、通信機器等の整備を行う)
通勤(都市部での満員電車・バス)
  1. ・ ラッシュ時の公共交通機関の利用を防ぐための時差出勤、自家用車・自転車・徒歩等による出勤の推進
外出先等
  1. ・ 出張や会議の中止
    (対面による会議を避け、電話会議やビデオ会議を利用する)
その他施設
  1. ・ 社員寮、宿直施設での接触距離を保つ
    (寮の二人部屋を見直す、食堂や風呂の利用を時間制にするなど)
職場内での感染防止 患者(発熱者)の入場防止のための検温
  1. ・ 従業員や訪問者が職場に入る前の問診や検温を実施する
  2. ・ 発熱している従業員や訪問客は出勤や入場を拒否する
一般的な対人距離を保つ
  1. ・ 職場や訪問客の訪問スペースの入り口や立ち入れる場所、訪問人数を制限する
  2. ・ 従業員や訪問者同士が接近しないように通路を一方通行にする
  3. ・ 職場や食堂等の配置替え、食堂等の時差利用により接触距離を保つ
  4. ・ 職場内に同時にいる従業員を減らす
    (フレックスタイム制の導入など)
飛沫感染、接触感染を物理的に防ぐ
  1. ・ マスク着用、手洗い、職場の清掃・消毒
  2. ・ 窓口などでは、ガラス等の仕切りを設置して飛沫に接しないようにする
手洗い
  1. ・ 職場や訪問スペースに出入りする人は必ず手洗いを行う。そのために訪問スペースに入る前に手洗い場所(手指消毒場所)を設置する。手洗い場所の設置が難しい場合、速乾性消毒用アルコール製剤を設置する
訪問者の氏名、住所の把握
  1. ・ 感染者の追跡調査等の目的のため訪問者の氏名、所属、住所等を記入してもらう
  2. ・ 海外からの訪問者については、本国での住所、直前の滞在国、旅券番号なども記入してもらう

 

 

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