☆インド:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 山本 匡(2020/03/19)

2020年3月18日号
インド:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                                長島・大野・常松法律事務所

弁護士 山 本   匡

はじめに

 欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:3人、感染者数(累計):137人(3月17日現在)

 インドでは連日感染者の増加が公表され、感染が確認されたのが累計137人で、死者も確認された。感染者の中にはインド国外からの旅行者も含まれる。空港等での検疫を強化している。人口が多く、人口密集地も多いため、大規模な感染が懸念されている。

 

主な政府発表

  1. ・ 保険・家族・福祉省(Ministry of Health & Family Welfare)がDo’s and Don’tsを公表している[1]
  2. ・ Disaster Management Act, 2005及びEpidemic Disease Act, 1897が発動される。
  3. ・ 以下の措置等をとることがインド政府により要請されている。
     全ての教育施設、ジム、ミュージアム、文化・社会センター、スイミングプール、劇場の閉鎖
     不急の旅行の回避
     従業員の在宅勤務
     ビデオ会議を利用した会議、必要の限り大人数での会合を行わずリスケジュールすること

 

渡航情報

  1. ・ 全てのビザが2020年4月15日まで効力を停止した。やむを得ない理由によりインドに入国する必要がある場合は、インド大使館又は領事館にコンタクトしなければならない。
  2. ・日本人へのOn-arrival Visaの発給は停止されている。
  3. ・中国、韓国、イタリア、イラン、フランス、スペイン、ドイツ、UAE、カタール、オマーン、クエートに渡航歴のある者は、インドへの到着後最低14日間、隔離される。
  4. ・ EU、ヨーロッパ自由貿易連合、トルコ、英国、アフガニスタン、フィリピン、マレーシアからのインドへの渡航(乗継ぎを含む)が禁止された。
  5. ・ 中国、韓国、イラン、イタリア、フランス、スペイン及びドイツへの渡航中止の強い勧告、並びにコロナウイルスの感染があった国への不急の渡航中止の勧告がなされている。
  6. ・ 韓国及びイタリアからインドに渡航しようとする者は、医療機関が発行するコロナウイルスに感染していないことを証する証明書を有していることを要する。その他の国からの渡航者も、自己申告書を提出する必要がある。

 

その他

  1. ・ 雇用主は、一般的に職場における従業員の安全・健康を確保すべき義務を負っており、コロナウイルスに関しても、従業員への情報提供、職場における衛生環境の確保、感染者・感染の可能性のある者の出勤停止(病気休暇等)、在宅勤務等の措置を検討すべきである。出張(インド国内出張を含む)を制限する現地企業も出てきている。
  2. ・ Epidemic Disease Act, 1897の発動により、各州政府に、規則の制定を含め、コロナウイルス対策に関する広汎な権限が付与された。州により、当該州のEpidemic Diseases, COVID-19 Regulations, 2020を制定しており、コロナウイルスが確認された国等への渡航歴がある者の病院への報告義務、地方当局への感染地域の封鎖等を含む広汎な権限付与等が行われている。州によっては当局による立入検査も可能である。規則に違反した場合、罰則が適用され得る。
  3. ・ Disaster Management Act, 2005が発動され、マスク等の価格統制が行われている。
  4. ・ 現地報道によると、財務省(Ministry of Finance)が、太陽光発電デベロッパーに対し、コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱により、契約上の期限を遵守できなかったとしても、財務上の制裁を回避するため、不可抗力条項を発動することができると公表したとのことである。
  5. ・ 従業員に感染者が出た場合、当局に報告する以外、第三者に感染者に関する情報を開示することは、Information Technology Act, 2000の個人情報保護に関する規定に違反するので開示してはならない。

 

(やまもと・ただし)

2003年弁護士登録。2009年以降、インド現地法律事務所、日系証券会社・日系自動車メーカーのインド子会社へ出向。2014年から長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務を経て、現在は東京オフィス勤務。インド・ミャンマー等の新興国の案件を中心に携わる。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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