2020年3月26日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
はじめに
3月25日、小池都知事が新型コロナウイルス感染の現状を「感染爆発の重大局面」と評し、在宅勤務の推奨や週末の外出自粛を呼びかけるなど、国内における新型コロナウイルスの感染加速への緊迫感が増しています。また、渡航制限の拡大等に伴い、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年3月25日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:0人、感染者数:134人(3月24日現在) ベトナムでは、当初から警戒を強め初期の抑え込みには成功していたが、近時感染者が増加している。そのほとんどは欧米からの帰国者であるが、帰国者との濃厚接触者の感染も少しずつ増えている。ベトナム政府は感染者との接触者約5万人を隔離するなど抑え込みに全力を注いでおり、23日からは全ての外国人の入国を原則禁止した。 |
主な政府発表
- ・ 政府は信用供与及び減税に関する280兆ベトナムドンの救済パッケージを可決した[1]。これに基づき、国家銀行はCOVID-19の影響を受けた個人・企業向けのローンの返済期限の延長、金利の削減・免除に関するガイドライン(第01/2020/TT-NHNN号)を発行した。税務総局は、COVID-19による損害を被った企業向けの納税期限の延期及び延滞利息の免除に関するガイドライン(第37/TCT-QLN号)を発行している。
渡航情報
- ・ 2020年3月22日以降、全ての外国人の入国を原則停止(政府官房通知第118/TB-VPCP号)。
- ・ 海外から帰国するベトナム人についても全員が国の施設で14日間の隔離措置を受けることになっているところ、ホーチミン市内の隔離施設が既に満員のため、航空各社に対し、ホーチミン市タンソンニャット国際空港への輸送を3月25日から一週間停止するよう命じた[2]。
- ・ ベトナム航空は3月25日までに全ての国際線の運航を停止。日系航空会社も日越間の航空便を運休又は減便している。
その他
- ・感染者については病院での隔離、感染者との直接の濃厚接触者(F1)については病院での隔離又は集中隔離、F1との濃厚接触者(F2)及びF2との濃厚接触者(F3)については自宅での隔離が強制される。濃厚接触には、同じ飛行機に搭乗していた場合も含まれる。マンションの住民に感染者が出た場合には、当該マンション全体が封鎖対象となる。このような措置は、感染病防止法に法的根拠がある。ベトナム政府の徹底した水際対策のため、接触者として隔離されるリスクに警戒が必要である。
- ・ベトナム現地法人の従業員に感染者が出た場合、政府から職場の一時閉鎖が命じられる可能性が高い。ベトナム労働法では、このような「危険な疫病」による閉鎖期間中の従業員に対する給与については、地域別最低賃金を下回らない範囲で労働者と合意した水準の賃金(通常の賃金の75%等と労働協約で合意されている例もある)を支払う必要があるとされている(労働法第98条第3項)。
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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