◇SH0041◇経団連、女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画の公表 泉 篤志(2014/07/24)

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経団連、女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画の公表

 

岩田合同法律事務所

弁護士 泉   篤 志

 平成26年7月14日、経団連が、「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」をウェブサイト上に掲載した。かかるウェブサイトでは、経団連の会員で掲載を希望した企業47社の女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画を公表している。経団連は、女性の役員・管理職登用を推進するため、全会員企業(約1300社)に同様の自主行動計画を策定するよう要請し、年内にウェブサイトで公表する予定である。

 政府は、平成11年に制定された男女共同参画社会基本法を受けて、平成15年6月20日付男女共同参画推進本部決定において、「社会のあらゆる分野において、2020年(平成32年)までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を掲げ、その後平成17年12月27日に閣議決定された男女共同参画基本計画(第2次)において、当該目標が明記された。さらに、平成22年12月17日に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画においては、当該目標達成に向けた中期目標として、平成27年までに民間企業の課長相当職以上に占める女性の割合を10%程度とするという成果目標が盛り込まれた。また、政府は、企業における女性の活躍を推進するためには、各企業の現状を、投資家、消費者、就活中の学生等から「見える」ようにし、自主的な取組が他の企業に波及していくような仕組みが必要であるとし、内閣府男女共同参画局のウェブサイト上で、公表に同意した上場企業について、役員・管理職への女性の登用、仕事と生活の両立推進等に関する情報を、業種別に整理して公表している[1]

 また、平成25年4月には、各証券取引所がコーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領を改訂し、上場企業に対して、役員等の男女別構成比や役員への女性登用に関する現状等といった女性の活躍状況の積極的な開示を要請した。

 これらを受け、経団連においても、女性の活躍促進は、企業の競争力向上を通じた企業価値の向上及び日本経済の持続的発展の実現に向けて重要であるとの観点から、平成26年4月15日に、以下の5項目から成る「女性活躍アクション・プラン」を策定した。

 

経団連が進める5つのアクション・プラン

1.   会員企業により開示された女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画を、経団連ウェブサイト上に公開。

2.   女性管理職候補が社外で研鑽を積み、人的ネットワークを構築する機会を提供するために、会員企業と内容を検討したうえで、女性管理職養成講座を開講。

3.   会員企業の管理職を対象に、女性活躍の必要性を再認識し、女性を含め誰もが能力を発揮できるマネジメントのあり方について考える「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を定期的に開催。

4.   就業前のキャリア教育の充実のため、企業人を学校へ派遣するなどして貢献。

5.   産官学が連携のもと、企業で活躍する理工系女性社員の紹介パンフレットの作成や複数企業をつないでの大規模なイベントを実施。

 

 今回の「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」の公表は、企業における女性の活躍を「見える化」すべく、上記アクション・プラン1に基づいてなされたものである。公表された自主行動計画の内容は各社様々であるが、キャリアプランニング・スキル向上のための各種研修、育児支援としての在宅勤務制度、託児所の設置・費用補助、育児休職者の復職セミナー、役員・管理職比率の具体的な目標数値等を掲げている企業が多く見受けられる。

 女性活躍推進に積極的に取り組み、成果を上げている企業は、「多様な人材を活かすマネジメント能力(ダイバーシティ・アンド・インクリュージョン)」や「環境変化に適応するための自己変革力(様々な市場への適応力、リスク耐性)」があると考えられており、これらは企業の成長に必要な新たな価値を創造することにつながるものである。そのため、近時の株主総会においては、女性役員の選任、女性が活躍できる職場環境等に関する意見・質問が比較的多くなされる傾向がある。したがって、かかる女性活躍推進の取組及びその実現は、企業価値を高め株主及び投資家にとって魅力ある企業となるためにも、各企業にとって引き続き重要な課題であるといえよう。

以上

 

[1] 女性の活躍「見える化」サイト(http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/mierukasite.html

(いずみ・あつし)

岩田合同法律事務所パートナー。2004年東京大学法学部卒業。2005年弁護士登録。2013年University of Southern California卒業 (LL.M.)。「旬刊商事法務・新商事判例便覧」(連載・共著、2010年7月~2012年5月)、「改正金融機能強化法の意義の再確認~公的資金を活用した一層の金融円滑化の試み~」(共著、ファイナンシャルコンプライアンス2010年5月号)ほか多数。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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