◇SH0114◇KPMGジャパン、日本企業の不正に関する実態調査(2014年)」の結果について 武藤雄木(2014/10/23)

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KPMGジャパン、「日本企業の不正に関する実態調査(2014年)」の結果について

岩田合同法律事務所

弁護士 武 藤 雄 木

 株式会社KPMG FAS(以下「KPMG」という。)は、上場企業における不正の実態を把握する目的で、2011年1月1日から2013年12月31日までの期間において、上場企業が開示した不正行為に関する適時開示情報を分析した結果を公表した。なお、KPMGによる上場企業の不正発生状況の調査は、2006年、2008年、2010年にも実施されており、本調査は4回目の実施となる。

 本調査によると、年度別の不正行為に関する適時開示の件数は、全体として微増傾向にあり、調査対象期間に適時開示した企業数は全上場企業の約4%に相当する138社となった。

 また、過去3回の調査では内部通報制度が不正行為の発覚の契機となった事例が最も多かったが、本調査では、内部統制を構成する業務処理統制を契機として発覚した事例が最多となった。この理由については、2008年4月より導入された内部統制報告制度が定着し、内部管理体制が強化されたことによるものであって、同制度の導入による不正防止態勢の強化という一定の成果が出つつあると分析されている。

 企業会計審議会は、平成25年3月、不正行為によるリスクにフォーカスした「監査における不正リスク対応基準」を設定したが、これは、金融商品取引法上のディスクロージャーをめぐり、不正行為による財務諸表の虚偽記載等の不適切な事例が相次いだことを受けてのものであり、企業の不正行為の発見・是正に対する投資家の期待は一層高まってきている。

 株式会社の代表取締役において、従業員による不正行為を防止するために如何なるリスク管理体制(内部統制)を構築すべきかに関し、最判平成21・7・9(判時2055号147頁)は、従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上を計上していた事案につき、代表取締役が通常想定される不正行為を防止できる管理体制を構築していたことを理由の一つとして、当該代表取締役の法的責任を否定している。近時、上場企業による不正行為の適時開示は増加傾向にあり、また、平成26年改正会社法により企業集団の内部統制の考え方が明確に示されるようなったことなどを受けて、財務諸表の信頼性が担保されることへの投資家の期待も高まってきている昨今の状況を踏まえると、代表取締役は、時々刻々と変化する企業を取り巻くリスク状況を把握した上で、その時点において「通常想定される不正行為を防止できる管理体制」(内部統制)とは如何なるものか、弁護士、会計士、不正検査士などの専門家の協力を適宜得ながら十分に検討し、適時・的確に内部統制を更新していくことが求められているといえる。

以上

(むとう・ゆうき)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2003年慶應義塾大学経済学部卒業。2008年3月 東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。2003年から2006年まで中央青山監査法人勤務。「特集 徹底検証 金融ADR事例から学ぶ実務対応」(共著、銀行実務2012年10月号)、「震災対応と実務対策」(共著、銀行実務2011年7月号)等著作多数。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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